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ルッキズム

 美人には色々な種類がある。

 色白で華奢な人、目がぱっちり大きい人、笑顔が印象的な人、どこか儚い空気を纏う人、小動物系——

 世間は勝手に順位をつける。


 私はブサイクな女の子を人生で一度も見たことがない。嘘ではなく本音でそう思う。みんなそれぞれに可愛らしさが存在している。

 なのにルッキズムに苦しめられるこの世の中。

私もその一人だ。


 林田美月。就活中のニート二十二歳。東京の安いアパートで一人暮らしをしながらコンビニバイトで食い繋いでいる。


 最近の趣味といえばYouTubeで思想の強い動画を見ること。Xで見ず知らずの人がバトルしているのを見て笑い、思想の強い配信者を見る毎日。どんどん彼氏ができないルートに突入している気がする。顔は平均よりは少し下くらいで目立たない。

 街を歩けば、誰かの視線が背中に刺さるようで、鏡をのぞけば自分の顔に点数がついてないことを思い知らされる。


「こんにちは!」

 今日は新人バイトで二つ下の松井さらちゃんと同じシフトだ。

 まだバイトをし始めたばかりで人見知りなところもあり緊張が取れていないようだがニコニコ一生懸命接客している。小動物系の可愛い女の子。


 昼のピークを過ぎ少し落ち着いた時間。男性客が会計終わりにそっとさらにアドレスを書いたメモを渡した。

「えっ……」

さらは困惑した表情で私をチラリと見る。

その男性客はいつも昼時に弁当を買いにくる常連客だ。おそらく会社員だが年齢は二十代くらいだろう。メモを渡したら足早にコンビニを出ていった。


「美月さん、これどうしたらいいんでしょう?」

 さらは不安そうな顔でメモをこちらに見せてきた。


「あー……。貸して、私が処分しとくよ」


 少し緊張した面持ちでメモを渡していたため冷やかしでもなく勇気を振り絞ってきたのだろうが、さらの手が震えて怖がっている様子が伝わってきたため美月が代わりに捨てることにした。


 どんなに純愛だったとしても気持ち悪いのに変わりはない。たまに恋愛ドラマとかアニメでこういう一目惚れから始まるシチュエーションを見るが現実では一歩間違えると犯罪者だ。フィクションの世界だからこそキュンキュンするだけでこれが現実だと考えるとなかなかな設定のものは結構ある。


 美男美女、綺麗な世界のように映すカメラ、音楽などで麻痺してしまっている。


 こんな恋愛してみたいな♡とは思うけれど現実的に考えて壁ドンとかを好きな人からされたりしたら引くかもしれない。遠回りだからこそ恋愛ドラマとかは感情移入できるしロマンティックだけど現実ならど直球が1番いいしかっこいい。

 ドラマみたいに他の人の裏事情が現実ではわからないのもあるのだろうけど自分本位じゃなくて相手の気持ちも考えることも重要だ。


 現実は難しい。


 今回の件だってさらちゃんは怯えてしまっている。明らかに嬉しくなさそうだ。好きな人を怖がらせてまですることなのか?自分の中で抑えておけばいいものを。それとも気持ちさえ伝えればいいやみたいな感じで一か八かのギャンブルに出たのか……。好きな人の気持ちを考えれないのならそれは本当に好きなわけじゃないと思う。


 相手の気持ちを考えて行動するのも優しさであり愛だ。一歩譲ってメモを渡すのはいいとしても無言で渡して帰るなと思う。自分の気持ちをちゃんと伝えて急に渡して申し訳ない、でもずっと可愛いと思ってたという気持ちも笑顔で言ったりしてれば気持ち悪いのに変わりはないが捉え方は結構変わるし、まだそこから始まる恋愛はあり得る。


 さらちゃんと例の男性が話してるとこは見たことがないしお互い性格もわからない。正に顔だけでタイプだから渡したメモ。


 私の捨てたメモはただの紙切れ。淡い若い男女の恋心でしかないが、この紙切れにもルッキズムが詰まっているように感じた。


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