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017話 君は扉を開ける

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

昼になると自然と屋上へ向かう。

弁当は昨日と同様持って来ていない。

購買部で買った惣菜パンと自販機で買った炭酸が標準装備となりつつある。

味気ない気もするが、弁当を作るとなると朝早く起きなければいけない。

それはそれで面倒だし、多少の妥協は必要なのかもな。


「あのー……来ちゃいました」


弁当箱を2つ持った黒鳥先輩が現れた。

昨日の昼休みに来ないと言った手前、気まずいらしく、どこかぎこちない笑顔を浮かべている。


「こっち空いてるんで座ってください」


声を掛けないとずっと同じ場所に立っていそうなので、ひとまず隣へと招く。

するとパッと明るい表情に変わり、小動物を彷彿とさせる可愛らしい小走りで近寄って来る。


「堂命くんと一緒に昼食を食べようと思ったんですけど、……えへへっ……やっぱり断られちゃいました。あっ、だから代わりにって訳じゃないですよ!堂命くんに断られた時、……私にも分からないんですけど、賢崎さんの顔が頭に浮かんで、……それで」


彼女は一生懸命に話す。

だから、俺も黙って真剣に聞く。

まとまってなくて良い、長くても良い。

声に出すと言う事に意味があるのだから。


「迷惑でしたよね?」

「迷惑なんかじゃないですよ。元々、俺が何かあったら来て欲しいって言いましたし。それにクラスに友達とかいないので、ここで1人で食べてるんですけど、寂しいって思う時もあるので」

「え!?賢崎さん、クラスにお友達いないんですか?こんなに優しいのに!話だってとても面白いですよ!」


卑屈になったつもりは無かったが、気を遣わせてしまったようだ。

顔をグッと近付けて、褒めてくれるのは嬉しい。

だけど……ちょっと近過ぎる。

恥ずかしくて視線が定まらない。

定まらないからと言って、あちこち視線を動かすと胸を見てしまいそうで怖い。


「ありがとうございます。なんか面と向かって言われると照れ臭いですね」


見る見ると黒鳥先輩の顔が真っ赤になっていく。

照れ臭いという言葉を聞いて、変に意識をしてしまったようだ。


コーヒーが飲みたくなるくらい甘い空気が、見えなくとも確実に流れていた。

俺には天峰ちゃんという推しがいるのにクラッと来てしまうなんて。

……俺の阿呆(あほう)が。


「また今日もパンなんですね」

「弁当を作る予定もないから、この先もずっとパンなんですよ」

「……賢崎さん、弁当ないんだ。……わ、私の作ったお弁当食べてくれませんか!」

「昨日も貰ったのに、今日も貰うなんて悪いよ」

「このお弁当、実は賢崎さんの為に作ったんです。堂命くんに一緒に昼食を食べるのを断られたのは、昨日帰って連絡した段階だったので。だから、……食べて欲しいです!」


2つあった弁当の内の1つが俺の為?

女の子の手作りの弁当、それも自分の為に作られたものを食べられるのは嬉しい。

滅多に出来る経験じゃないからな。

でも、裏に隠れた意図を勘繰ってしまう自分がいた。


「お言葉に甘えていただきますね」


俺は弱い男だ。

目の前で目をうるうると湿らせた黒鳥先輩を見ていると断ろうにも断れないのだから。


「本当ですか!?ありがとうございます!」

「なんで先輩が感謝するんですか。作ってもらったんだからお礼言うのは俺の方ですよ」

「そんな事ないですよ!昨日もそうでしたけど、私なんかが作ったお弁当を食べていただからだけでも感謝です!」

「私なんかって……そんな自分を卑下しなくても良いじゃないですか。あんなに美味しい弁当作れるんですから、先輩は十分凄い人ですよ」


料理というのは経験が必要だ。

1度やったから上手くなるなんて簡単な話ではない。

昨日の弁当の味から考えるに何年も料理をしているのだろう。

これを高校生がやってのけるのだから驚く。


「……ずるいですよ、賢崎さんは」


確実に聞こえた黒鳥先輩の小声。

狡い……か。

強ち間違いでもない。

だからこそ、聞こえないフリをした。


「そ、そうだ!今日のお弁当はですね」


定番中の定番茶色の王様、唐揚げ

あざとさの甘み、卵焼き

ケチャップの調和(ハーモニー)、ナポリタン

…etc.


これ作るとしたら相当な時間が必要になるだろう。

そうなると自然と起きる時間も早くなるはずだ。


「いただきます。じゃあ、まずは唐揚げからっと」


一目見た時から、最初に手を付けるのは唐揚げと決めていた。

弁当箱の中から選んでくれと俺に語り掛けていたからな。

油にコーティングされた艶がたまらなく食欲を誘う。

それだけじゃない。

肉本来の旨みというのが匂いを嗅いだだけで伝わる。


満を辞して、いざ口の中へ。

一回噛んだだけで広がる濃厚な肉汁。

味付けもシンプルなはずなのに奥が深い。


「ふふっ、気に入ってもらえたならよかったです」

「まさか、また顔に出てましたか?」

「えぇ、美味しいって顔に書いてありました!本当に良かったです、喜んでもらえて。また必ず作って来ますね」

「いやいや、先輩に悪いですよ。こんなに手の込んだ弁当作ってもらうのは。それに先輩は……」

「いえ、大丈夫です。……大丈夫なんです。だから、絶対絶対絶対に作りますから」


依存先が変わってしまった。

推測などではない。

冷静に考えた上での確信だ。

彼氏という存在でなくても、依存状態には陥る。

銭湯の時にも気付いていたはずなのに、無視した結果がこれか。


果たして、俺の進む道は合っているのか。

ざわつく胸に問いただした。

ご覧いただきありがとうございました。

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