013話 お兄ちゃんは大キモい
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次の朝は気味の悪いくらいスッキリとした目覚めだった。
ベッドの感触に慣れないまま眠りに就いたのに、余程疲れていただろう。
起きて最初にしたのは、携帯に表示された時間の確認。
体を起こすよりも先に、腕だけを枕元の携帯に伸ばした。
もしも、また4月20日を繰り返しているとしたら。
想像しただけで全身に鳥肌が立つ。
「4月……21日。なんとか……1日目を乗り越えたみたいだな」
次の日を迎えられた事に安堵した。
彼女の言葉を信じて帰らせたが、よくよく考えると嘘を付いて堂命と会っていた可能性だってある。
そうなれば最悪の事態も考えられたが、どうやら心配し過ぎていたようだ。
7時12分。
学校へ行くまでに時間の余裕がある。
昨日は慌てて飛び出してしまった結果、授業中は空腹と戦うことになったので、今日は余した時間を有意義に使おう。
下の階へ降りてリビングを開けると味噌汁の良い香りが鼻腔をくすぐる。
どうやらフウカが朝食を食べていたようだ。
「おはよー、お兄ちゃん!今日は普通に起きて来たんだね。昨日は心配したんだよ?様子は変だし、家を飛び出して学校に行くし、帰って来たら帰って来たで新しい服に着てるし、……うーん、やっぱり変だったし!」
「うん、お兄ちゃんのことをナチュラルに2回変って言うのはやめようか。一応、人間やってるから心が傷付くよ」
「え?お兄ちゃんって人間なの!?お兄ちゃんはお兄ちゃんって生き物なのかと思ってた!」
「人権を無視した発言なのか、オツムがちょっと弱い子なのかによって話が変わってくる発言だな」
「まぁ、どっちでも良いから。ほら、席座って。朝食用意してあげるから」
朝食を食べる手を止めて、キッチンの方へと向かうフウカ。
運動だけが得意なタイプなのかと思っていたが、案外慣れた手つきで料理を進めていく。
品目自体はなんら変哲もない普通の朝食。
それでも自然と様になっている妹の調理している姿を眺めたくなる。
きっと結婚とかしたら良いお嫁さんになるんだろうなと、ありきたりな感想が頭に浮かぶ。
「ジロジロ見られたら料理に集中出来ないよ、お兄ちゃん。料理する所くらい毎日見てるんだから珍しくもないでしょ?」
「毎日?お母さんは料理しないの?」
「何言ってるのお兄ちゃん。………お母さんはもう……」
口籠る妹を見て触れてはいけない話題だったかと不安になる。
意外と俺も複雑な家庭環境の家に転移したのかも知れない。
気を落としているフウカに近付き慰めようとすると、彼女はようやく言葉を続けた。
「お父さんと新婚旅行へ行っちゃったんだから!しかも、3年間もいなくなるだよ!3年間!子供置いて新婚旅行なんて何考えてるんだか!しかも、新婚って結婚したの2年前だよ!どのタイミングでやってるのって話!」
リスみたいに頬を膨らませて怒る妹。
効果音を付けるとしたらプンプンが正解だろう。
まぁ、妹の言い分が200%正しい。
3年間という長い期間子供を放っておくのは正常な判断とは思えないからな。
「あれ?結婚したのって2年前だったっけ?」
「そうだよ!バツ1同士で結婚して、お母さんの連れ子がフウカで、お父さんの連れ子がお兄ちゃん。まさか、忘れちゃったの?」
何ともエロゲらしい世界観だ。
血の繋がっていない美形の妹がいるなんて。
手を出すなんてことは絶対にないが、目の保養にするくらいは許されるだろう。
「ねぇ、やっぱりお兄ちゃん。……いや、何でもないや!ご飯出来たから運ぶの手伝って!」
近くで見て来たはずの妹が、違和感に気付かない訳がない。
俺にこの世界の記憶が無いことは察しているだろう。
これ以上踏み込んだ話をしないのは少しばかりの抵抗。
否定すれば、"目の前の俺"は"4月20日以前の俺"と違うと言っているようなものだ。
じゃあ、今までの俺はどこへ消えた。
目の前の俺は何者だ。
そんな事を考えて頭を悩ませるより、肯定してしまう方がずっと楽なのだろう。
「じゃーん!目玉焼きとウィンナー、それに卵焼き!」
「卵料理が2品目あるのに朝食として成立するから不思議なもんだよな」
「何?文句あるの?せーっかく、フウカが愛しきバカ変態お兄ちゃんの為に作ってあげたのに?食べるの?食べないの?はっきりしてよお兄ちゃん!」
「いや!食べるから!てか、食べさせてください!」
「最初から素直にそう言えば良いのに」
あ、危ねぇー、朝食抜きになる所だったぞ。
そもそも嫌味じゃなくて普通に不思議だよねって話だったんだけど、あまりにもタイミングが悪かった。
兄として依然の問題。
デリカシーなさすぎオブザイヤー2025があるのだとしたら、間違いなく受賞するな。
「うまっ!?え?なんで?焼き方が違うのか?それとも味付け?」
「チッチッチッ!分かってないなー、お兄ちゃんはー。隠し味が入ってる決まってるじゃーん!」
「隠し味?なんだよ、それ。入れただけでこんなに上手くなるの?」
「それは"あ・い・じょ・う"だよ!」
あぁ、なるほど。
俺の妹は所謂残念系らしい。
言葉1つで少しずつ暖かくなり始めた春先の室温を一気に下げたのだから。
簡単に出来る芸当じゃない。
「なんか言ってよ!恥ずかしいじゃんか!バカバカバカァーー!!!」
味噌汁を啜ってから一言。
「可愛い」
「お兄ちゃんなんて大ッキ、キ、キ、キモい!大キモい!」
大嫌いと言いそうになったのは留まったのは偉いけど、大キモいってなんだ妹よ。
造語を生み出してまで罵倒したかったのか。
俺が悪いのは確定しているけど、キモいも傷付くからやめていただきたい。
「はぁー、本当にお兄ちゃんは」
「帰りに何かデザート買ってくるからそれで許してくれない?」
「えっ!良いの!?プリンね!コンビニのとかじゃなくて、駅前のケーキ屋さんにあるちょっと高いの!」
ゲームの選択肢にもあったあのプリンのことか。
女の子にあげると大体は好感度が上がるから人気なんだろうなとは思っていたけど、まさかここまでとは。
忘れないように携帯のメモに書き残して、朝食の続きを堪能するのだった。
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