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011話 少し甘い味がした

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

冷え切った体を芯まで温める温泉の湯。

ただの水だと侮るなかれ。

目には見えなくとも確実に水道水とは違う効能を実感できる。

これをプラシーボ効果だと言い張る人間もいるかも知れない。


プラシーボ効果上等!

人間の脳みそって都合良いように出来るんだよ!

そうじゃないとやっていけないから!


体だけでなく、心まで熱くなってしまった。

興奮してのぼせてしまっては折角の500円が勿体無い。

落ちついて温泉を堪能しよう。


「……あっちもゆっくり出来てると良いんだけどな」


黒鳥先輩は今どんな気持ちなのだろうか。

あのまま放っておく選択肢は無かったが、多少強引だったのも認める。

だけど、今後も似たような場面に出会したら迷わず手を差し伸べるはずだ。


だからこそ、考えてしまう。

救いとして差し伸べた手が彼女を少しずつ蝕む可能性を。

他者からの救いは依存へ繋がる。

黒鳥先輩の様な自己肯定感の低い人間なら尚更。

存在意義のない自分に善意を振り撒いてくれる人を希少な存在だと思い込むから。


線引きが難しい。

彼女が自殺しない為には自立が必要で、自立する為には手助けが必要だ。

そして、手助けは依存に繋がり………、


「あぁー!もうッ!訳分からなくなって来た!」

「どうしたんだ?いきなり叫んで」


80歳のお爺さんがいる事を忘れて、思わず大声を出してしまった。


「あっ……、すみません。つい」

「良いよ、良いよ。若いうちは沢山悩むのが仕事だからね。人生まだまだ長いんだから、ゆっくり答えを導けば良いさ」


どうやらお爺さんに気を遣わせてしまったらしい。

何と返せば良いのか分からず、気まずい時間が流れる。

やがて耐えきれなくなった俺は、逃げるようにして湯船から立ち去った。


火照りの残る湯上がり。

新品の服に早速着替えて、待合室へと向かう。

綺麗さっぱりとした今、体が求めているのは冷たい飲み物。

頭にイメージするのは瓶に入った牛乳を腰に手を当て一気に飲み干し映像。

まだ買ってすらいないのにぷはぁーと言ってしまいそうだ。


期待を胸に商品の並べられた冷蔵庫へと近づく。

上の段から順にコーヒー牛乳、フルーツオレ、サイダー、………、


「ない……か。売り切れだ」


牛乳の値札だけがキンキンに冷えていた。

ラインナップの中でも消費期限が早い物なので仕入れを抑えているだろう。


仕方ないと言えば仕方ないがショックだ。

牛乳を毎日飲むほど好きではない。

寧ろ、最後に飲んだ記憶もあやふや。

だけど、この雰囲気の中で飲みたかった。


文句を言っても空から牛乳が降ってくる訳ではないので、コーヒー牛乳をチョイス。

お婆さんに100円を渡してから、待合室のソファーに腰掛けた。


今は全く見掛けないレトロな銀色扇風機の風に当たりながら、グビッとひと口。


「普通にうまっ!えっ、これで100円ってコスパ最強かよ」


口の中をシャッキっとさせるほろ苦い味と添加物とかでは作り出せない自然な甘さが最高だな。

そりゃ、誰も聞いていない案件並みの食レポも勝手に頭の中で思い浮かぶ。

近くのコンビニとかでも売り出して欲しいレベルだ。

銭湯という特別な空間だから美味しく感じるとかではなく、どこで売っても通用すると思う。


「もうひと口いただきますっと」


あの美味しさは勘違いなのかも知れない。

再度、味を確かめる為にまた口を付ける。


「美味いんだよなー、やっぱり」


何度飲んでも初見みたいなリアクションで美味しく飲めるな、これは。

蓋に書かれた表記を確認してどこの会社が作っているのか調べる。

知らない会社名だったので、携帯を開いて検索を掛けよとしたタイミングで、


「お待たせしました。今、髪まで乾かして来ました」


パッと顔を上げると先程とは少し違った黒鳥先輩が立っていた。

上がりたて特有の艶やかな髪と、一時的に取り戻された血色によって絶妙に火照った頬からは、決して口には出せないけど色気を感じる。

しかも、奇跡的に色合いの似たシャツと短パンが気恥ずかしい。


今までこの人のルート選ぶ奴いるのかとか思っていた俺が馬鹿だった。

やはり、彼女もヒロインの1人なのだと改めて感じる。


「あ、えっと、あの……どうかしましたか?」

「えっ、あぁ、これ美味しいので良かった飲んでみてください」

「良いんですか……?じゃ、じゃあ、いただきます」


目の前に出してコーヒー牛乳が美味しかったと伝えると、彼女は戸惑いながら受け取ってひと口味見をした。

そこで買えるから黒鳥先輩も買って飲んでみたらどうですかという意味だったのだが、これは流石に俺の伝え方が悪い。


まぁ、その、なんだ……間接キスを本人が気にしないなら問題ないんだけどね。


「本当だ!美味しい!あれ?どうしたんで……あっ」


自分で気付いたな。


「自分で買って飲めばって話ですよね!ごめんなさい!勝手に勘違いして……あっ、えーと、どうしよ。あっ、買って返します!ごめんなさい、ごめんなさい!」

「大丈夫ですよ、大丈夫!それは俺からの奢りってことで!だから、落ち着いてください。深呼吸をして、はい、リラーックス」

「……怒らないんですか?」


潤んだ瞳で見つめてくる。

だけど、怒る要素は見当たらない。

それどころか感謝するべきイベントの1つだ。


「えっ?怒る要素ないですよ。まぁ、そのーーねっ?ちょっと恥ずかしさはありますけど、お互い様という事で」

「ありがとうございます……」


聞こえるか聞こえないかのギリギリの声で感謝する黒鳥先輩。

たった100円で感謝されるのはコスパが良いな。


もう1本、フルーツオレの味も気になったので買ってみることに。

2人で並んで座り、小型のテレビで見ながらゆっくりと過ごす。

フルーツオレの味も勿論の美味しくて、黒鳥先輩にも飲ませたのは言うまでもない。

ご覧いただきありがとうございました。

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