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第五話:血の代償

森は生きていた。

木々の枝は蛇のようにうねり、根は足を絡め取る。

秀治と香奈枝は息を切らせながら、闇の中を走り続けた。背後からは、雛子の笑い声と、樺山の重い足音が追いかけてくる。

秀治は香奈枝の手を離さず、叫ぶ。

「トンネルだ! トンネルまで行けば脱出できる!」


だが、森は二人を拒む。道は消え、木々は壁のように立ちはだかる。

香奈枝が泣きそうな声で言う。

「秀治、私…もう走れない…。」

秀治は彼女を抱き寄せ、励ます。

「諦めるな! 絶対に生きて帰るぞ!」


その時、目の前にトンネルが現れた。

だがその入り口は血のような赤い蔦に覆われている。

秀治は一瞬躊躇するが、背後の足音が近づく。

「行くしかない!」

二人はトンネルに飛び込んだ。中は真っ暗で、壁からは粘液のような液体が滴る。香奈枝が悲鳴を上げた。

「秀治、これ…血!?」


トンネルの奥から、低い声が響く。

「石崎様、逃げても無駄です。森はあなたを離しません。」

樺山の声だ。秀治は香奈枝を支え、叫ぶ。

「黙れ! 俺はこんな呪いに縛られない!」

だが、トンネルの出口は見えない。代わりに、目の前に雛子が現れた。彼女のメイド服は血で染まり、ナイフが赤く光る。

「あなたは選ばれた血。森の糧となるべき存在。」

雛子の笑顔は、初めて狂気じみていた。

秀治は香奈枝を庇い、レンチを振り上げる。

「近づくな!」

だが、雛子は一瞬で動き、ナイフが秀治の腕をかすめる。血が滴り、地面に吸い込まれる。すると、トンネルが震え、木々の唸り声が大きくなった。


香奈枝が叫ぶ。

「秀治、走って!」

二人は再び走るが、トンネルは無限に続くようだ。

秀治の頭に、祖父の言葉がよみがえる。


「朽岩には行くな。血が呼ぶ。」

あの警告を無視した代償が、これなのか。


突然、トンネルの先に光が見えた。出口だ。秀治は香奈枝を引っ張り、全力で走る。だが、背後から雛子の声が響いた。

「あなたは逃げられない。森は永遠にあなたを追う。」


光に飛び込んだ瞬間、二人は地面に倒れ込んだ。


見上げると、そこは朽岩の谷だった。だが、洋館は消え、集落の跡もなかった。まるで何もなかったかのように、ただの荒野が広がっていた。

秀治は香奈枝を抱きしめ、息をつく。

「生き延びた…。」

だが、香奈枝の目が恐怖に凍りつく。

「秀治…あなたの腕…。」

秀治が見下ろすと、ナイフの傷から血が流れ続け、地面に吸い込まれている。

そして、遠くの森から、低い唸り声が聞こえてくる。

雛子の笑い声が、風に乗って響く。

「森は待っていますよ、石崎様。」


突然、暗闇が二人を包み、小さな悲鳴が消えた。


  終



うーん・・・考えオチだったのは憶えてるけど、こんな終わりかただったっけ???

記憶にないので、リアルで気分がホラーです(汗)

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