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第三話:廃墟の真実

トンネルは、まるで昨日とは別物のように朽ち果てていた。コンクリートはひび割れ、蔦が絡みつき、入り口は半ば崩れている。

秀治はハンドルを握りながら、香奈枝に確認する。

「昨日、この道って通ったよな?」

香奈枝は不安げに頷く。

「うん…でも、なんか違う。」


トンネルを抜けると、朽岩の谷が広がった。だが、集落は跡形もなかった。

家々は土砂に埋もれ、木々は枯れ、荒涼とした風景が広がる。

洋館は斜面に辛うじて立っているが、外壁は剥がれ、窓は割れている。


秀治は車を止め、香奈枝の顔を見つめ、また建物に視線を戻す。

「こんな…廃墟みたいな建物だったっけ?」

鍵は昨日と同じくポケットにあった。

錆びた玄関扉を押し開け、二人で館内へ踏み込む。

埃とカビの匂いが鼻をつく。昨日見た甲冑は倒れ、アンティークは色褪せている。

美奈が興奮した肖像画は、顔の部分が剥がれ落ちていた。


秀治の背筋に冷たいものが走る。

「おかしい…全部、昨日と違う。」

香奈枝が小さな声で言う。

「秀治、なんか怖いよ。ここ、ほんとにみんなが来た場所?」

秀治は強がって答える。

「大丈夫だ。パーティの部屋に行ってみよう。美奈たちがいるはずだ。」


広間への扉を開けた瞬間、二人は息を呑んだ。

テーブルにはキノコのスープや川魚の皿がそのまま残っているが、すべて腐り、カビに覆われている。そして、椅子に座る4つの人影。亮、拓也、彩花、そして美奈。

だが、彼らは人間ではなかった。

皮膚は干涸らび、目は落ちくぼみ、ミイラのように硬直している。

まるで何年も前に死んだかのようだ。


香奈枝が悲鳴を上げ、秀治の腕を掴む。

「秀治、これ…何!?」

秀治は震える声で呟く。

「こんな…こんなはずない…。」

彼は美奈に近づき、そっと肩に触れる。だが、触れた瞬間、彼女の体は崩れ、埃となって床に落ちた。

秀治は後ずさり、頭が真っ白になる。


その時、背後で足音が響いた。振り返ると、雛子が立っていた。

昨日と同じメイド服、変わらない笑顔。だが、その目は冷たく、まるで魂がないようだ。

「石崎様、お帰りになりましたね。」

彼女の声は穏やかだが、どこか嘲るような響きがあった。

「これはいったい、どういうことだ!?」

秀治が叫ぶ。雛子はクスッと笑い、答えた。

「血をすべて抜き取られると、人間はそうなるんですよ。」

彼女の言葉に、秀治は凍りつく。香奈枝が震えながら問う。

「あなた…何者なの?」

雛子は首を傾げ、笑顔のまま答えた。

「ただのメイドですよ。この館を守る、ただのメイド。」


その背後に、樺山が現れた。昨日と同じ黒いスーツだが、彼の顔は不気味に歪んでいる。口元が裂けるような笑み。

秀治は一歩後ずさり、香奈枝を庇う。

「お前たち…何をしたんだ!?」

樺山は低く笑い、答えた。

「我々はただ、館のルールに従ったまで。血は、この森の糧となる。」

雛子が続ける。

「だから、昨日お伝えしましたよね。そのままお帰りになった方がいいと。」

彼女の笑顔は明るいままだったが、背景の空気は凍てつくようだった。

秀治は香奈枝の手を握り、叫ぶ。

「逃げるぞ!」


二人は広間を飛び出し、廊下を走る。だが、甲冑がガシャンと倒れ、肖像画の目が動く。館そのものが生きているかのようだ。

こ、こんな話だったったけ?  …とにかく、もうちょっと読んでみます。

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