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黒の帝国  作者: 木島別弥
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4、戦う戦士

 ターコイズブルーを連れて、光り輝く星を探しに宇宙へ旅立とうとするトマトレッドだった。

 しかし、ことはそう簡単には運ばない。黒の兵隊たちは二人を追いかけてきて、旅もできないようにぶちのめそうとするからだ。黒の帝国にあって、黒の兵隊に隠れて何かをすることは非常に困難を極めた。黒の兵隊に黙って、宇宙に旅立つことはできそうもなかった。

 街に出た途端に、黒の兵隊たちに囲まれるターコイズブルーとトマトレッドの二人だった。とても、安全に旅に出れる状態じゃない。

 しかし、いつまでも、負けてばかりのトマトレッドではなかった。

「召喚。宇宙の大秘宝、反エントロピーの絵筆」

 トマトレッドは、光のものの極秘回線を使って、黒の帝都に隠された光のものの最大の秘宝を呼び出した。トマトレッドは本気だ。本気で黒の兵隊に勝つつもりでいる。

 トマトレッドの目の前に姿を現したのは、肩で担ぐぐらいに大きな一本の絵筆だった。この絵筆は、光のものたちの秘宝中の秘宝で、黒色に塗りつぶされた絵の具をもとの三原色に戻す効果があった。

「それ」

 と、トマトレッドが黒の兵士を絵筆で一撫ですると、黒色だった黒の兵士が、赤、青、緑の三原色に戻っていくのだった。黒の兵士が、突然、光のものに変わる。

 トマトレッドに次々と絵筆で撫でられ、赤、青、緑の三原色に戻っていく黒の兵士たち。

 誰が誰をやっつければいいのかわからなくなって、混乱する黒の兵士たち。

 その隙を突いて、トマトレッドとターコイズブルーの二人は走って逃げていった。

「凄い。黒の兵士に勝てるなんて」

 ターコイズブルーが素直に驚く。

「へへっ、この絵筆があれば、たいていの黒の兵士はやっつけれるさ」

 トマトレッドは自信を持って答えた。

 宇宙船乗り場に辿りつくまで、何回、黒の兵隊に襲われたかわからなかった。黒の兵隊は、光のものと見るや否や、すぐに二人を痛めつけようと襲いかかってくるのだった。その度に、トマトレッドが反エントロピーの絵筆で黒の兵隊を絵の具の三原色に戻していったのだった。

 黒の兵隊は大混乱になった。この黒の帝国にあって、許される色は黒色だけだ。赤や青や緑をした兵士などは、即刻叩きのめさなければならない。反エントロピーの絵筆で塗りつけられた三原色の兵士たちは、まわりの黒の兵士たちに袋叩きにされて、ボロボロになって倒れていった。

「それ、それ」

 面白がって、トマトレッドは、次々と黒の兵士を絵の具の三原色に戻していった。黒の兵士同士の空しい同士討ちがつづくなかで、トマトレッドは久しぶりに晴れがましい気分でいた。

 自分の力で、ターコイズブルーを守っている。その自信が、トマトレッドをさらに躍動させた。今までの鬱憤を晴らすかのように、トマトレッドは手当たり次第に反エントロピーの絵筆を使った。

「何たる失態。何たる体たらく。これが黒の帝国の誇る黒の兵団だとは、嘆かわしいわ」

 そういって、絵の具の三原色になった兵士を切り伏せて進んでくるのは、漆黒の闇、光なき者として生まれ落ちた純粋なる闇、黒の眷族だった。純粋なる闇である黒の眷族には、反エントロピーの絵筆は効かない。

 絵の具の三原色となる絵の具自体がないのだ。光なき純粋な闇であるがため、絵の具の三原色に分解したりはしないのだ。

 向かってくる黒の眷族に、トマトレッドは光の剣を右手に持ち、反エントロピーの絵筆を左手に持って、待ちかまえた。

 物体としての実体を持たない、宇宙の深遠である闇としての存在、黒の眷族を傷つけるには、光の剣で斬りつけるしかない。

 迫ってくる黒の眷族に、光の剣で鋭い初太刀を入れたトマトレッドだが、その切り口が浅いのを手ごたえで感じた。

「うおおお」

 黒の眷族は吼えて、手に持つ黒の大剣を振り下ろしてきた。トマトレッドは、さっと身を引いてかわした。

 当たれば、その純粋なる闇の刃で、光の体をえぐりとられかねない。

 まずい。このままでは、黒の眷族に殺されるかもしれない。トマトレッドは焦りを感じる。

 すぐ後ろにいるターコイズブルーも、いろいろな思惑が乱れとんで、混乱する。ここでトマトレッドが死んだら、あたしはどうなるのだ。ターコイズブルーの考えの浅い打算が心の中を走る。

 しかし、事態を変えたのは、その場に突然、現われたまったく新しい登場人物だった。

 その場に、突然現われた人物は、閃光弾を放って、黒の眷族を後退させた。

 光なき存在である黒の眷族は、閃光弾のような光り輝くものに非常に弱い。ばちばちばちと鳴る閃光弾に、黒の眷族は後退して様子を見る。

「こっちへ来な。光の反乱児」

 そう、現われた男はトマトレッドを呼んだ。

「助けてくれるのか。助かる。急いで逃げよう。おれたちは星を目指しているんだ」

 トマトレッドがターコイズブルーを引っ張って、新しく現われた男のもとに避難した。

「おれの名はカーキー。いざこざなら任せな」

 新しく現われた男は、簡単に自己紹介をする。

 トマトレッドとターコイズブルーは、カーキーに守られながら、光り輝く星を目指して、黒の帝国の中心街を抜け出していったのだった。


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