表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/13

クラリスの「バカでも分かるスローライフ講座」

 仕事依存性のキミアキのために、私――クラリスが一肌脱いでやるとしよう。


 スローライフとは何か、その実践方法について分かりやすく説明しよう。


 題して「バカでも分かるスローライフ講座」。心して聞くように。




1 時間を気にするな


 「スローライフ」とは、時間や効率に捉われない生き方のことだ。


 キミアキがいた世界だと、おそらく皆が時計を気にして、短時間でどれだけ成果を上げるかを競い合っているんだろう? 


 そんな愚かな生き方をしてたら、当然、心も身体もすぐに壊れてしまう。

 

 スローライフの第一歩は、時間を気にしないこと。

 キミアキがさっきからチラチラと気にしてる平べったい機械も、どうせ時刻を表示するものなんだろ。そいつは真っ先に捨てておけ。


 スローライフには、時計も必要ない。太陽が昇る時間に活動を始め、太陽が沈む頃に活動を終えれば良いんだ。天気が悪くて太陽が見えない日はどうするかって? 家でじっとしてれば良い。



 時間の鎖から解き放たれた時、生き物は生き物らしい生活を取り戻せるんだ。




2 煩わしい付き合いを避けろ


 スローライフは、ストレスを徹底的に回避する生き方だ。


 そして、ストレスの大半は、他者との付き合いから生じているんだ。


 ゆえに、スローライフでは、他者との煩わしい付き合いを避けることを推奨する。



 キミアキ、何を名残惜しそうに平べったい機械を見てるんだ? それは他者ともコミュニケーションが取れるものなのか? だとしたらなおさらさっさと処分だ。



 他者との付き合いを避けるためには、田舎暮らしが有効だ。


 まさに私たち家族がしているようにね。


 この家の周辺には他の民家は一つも存在しない。ここは社会から隔絶された「楽園」なんだよ。




3 自給自足せよ


 スローライフは、生きることそれ自体を楽しむ生き方なんだ。


 それを一番実感できる生き方こそ、必要なものは自分自身で生産すること――自給自足だ。


 食べ物ができるまでの全ての過程に関わることで、食べることの真の喜びに気付くことができる。


 種を蒔き、水をあげ、収穫すること。

 家畜を育てて、ミルクを取り、最後に肉をいただくこと。


 それこそが食べること、そして、生きることの真の喜びなんだ。



 私たちの家の敷地には、野菜を育てる畑、小さいけれど穀物を育てる田んぼもある。


 それに、牛、豚、鶏といった家畜も飼育してる。


 キミアキも後で案内するよ。


 自給自足をすることで、生きることで得られる充実感を最大まで高めることができる。


 それに、貨幣社会から切り離されることで、余計な他者との関わりも断つことができるしね。




4 生命の恵みに感謝せよ


 スローライフをする中で、否が応でも、どんなバカでも気付くのは、生命のありがたさだよ。


 生き物は、基本的には他の生き物の生命をいただくことでしか生きていけないんだ。

 

 自給自足で、自ら育てた野菜、それから家畜の生命をありがたくいただく。


 そして、奪った生命に失礼のないように、自分自身もしっかりと生き抜く。


 それこそがスローライフの本質であり、生きることの本質だと私は思う。




5 お風呂にゆっくり浸かろう


 どうだい? ここまでの説明は分かりやすかっただろう? バカなキミアキにもよく分かっただらう?


……あれ? 腑に落ちない表情だね。


 でも、大丈夫。スローライフを、そんなに難しく考える必要はないんだ。



 とりあえず、まずは時間を気にせず、ゆっくりとお風呂に浸かろう。


 何も考えず、無の時間を過ごすんだ。



 実はもう、お風呂を沸かしてあるんだ。



 さあ、キミアキ、私たちと一緒にお風呂に入ろう!



……あれ? どうした? そんなに顔を赤らめて。何か余計なことを考えてないか? これは無の時間を過ごす練習なんだよ。



 え? そんな状況じゃ無にはなれないって?


 まあ、キミアキはまだスローライフの「ス」の字も分かってないからな。



 とりあえず、一人でお風呂に入ってきな。みんなで一緒にお風呂に入るのは追々で大丈夫。




 私が今話したことを実践していく中で、きっとキミアキの病気も治ると思う。

 もちろん、すぐに効果は出ないだろう。何週間、いや、場合によっては何ヶ月もかかると思う。


 その日が来るまで、私たち姉妹がサポートするから安心して。



……え? それまでの間、私たちの家に泊まって良いのかって?


 

 もちろんさ!


 キミアキ、これからよろしくな!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ