はなの色2
今あたしの名前言った…?
歌子は怖すぎてもう何がなんだか分からなくなってきた。
いや、きっと気のせいだ、消えろ消えろと心の中で叫び続けていると、人影は歌子からやっと離れていった。
歌子は少し安堵したが、まだ安心はできない。
うっすらと目を開けると、人影は歌子の部屋の中を徘徊しているではないか。
人影は恐ろしく髪の長い女性のようだ。
着物を着ている。しかも普通の着物ではなく、歴史の教科書で見たきらびやかな十二単を着ているではないか。
もう消えるのかと期待したが、女は大きな本棚の方に向かっている。そしてじっと隅から隅までマンガや本を見ている。
なんか…めっちゃ本見てない?
女は気になったのか一冊マンガを引き抜いて、
ジュータンの上に寝転んで読み始めた。
歌子が使っているお気に入りのやわらかしっとりビーズクッションを見つけ、手繰り寄せ、頭にひいた。
なんか…思ってたんとちがう…?
リラックス…してない?
歌子はさっきとはまた別の意味で訳が分からなくなってきた。
しばらくすると女は立ち上がり、今度は歌子の机に向かっているではないか。
あああああーーーそこは見ないでくださあああい!!
歌子は今が一番声が出てほしかった。
女は歌子が恐れていた机の上の日記帳を開き見始めた。
そこには、歌子の書いた誰にも見せられない詩が…。
あああああお客様困りますぅぅぅ!!
歌子はキャパオーバーして突然気を失ったように眠った。
気絶したのかもしれない。
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朝。
明るくなった部屋を呆然と眺めながら、歌子は昨日のリアルすぎる夢を反芻していた。
良かった。夢だった…
かなりしんどかった…
ところがそれを打ち消す声が頭の後ろから聞こえた。
「ずいぶん遅いお目覚めだねぇ」
振り返ると見目麗しい十二単を着た女がいた。
ちょっと向こうが透けている。
歌子はそのまま布団に倒れた。
今度は完全に気絶だった。