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小町の道しるべ  作者: 銀胡
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はなの色1

箱にあったのはこの小野小町の札のみで、他の札は全くなかった。

「他の札はどこにいったんだろね?」

母に聞くと

「さっぱり分からないね。」と肩をすくめる。

「おばあちゃんに聞いてみたいけど、今はもう難しいだろうな。」

祖母は今はもう満足に会話ができない。

寝る以外は天井を見つめるばかりで、ぼんやりしている。話しかけてもこちらの言うことがなかなか理解できず、私たちの顔をぽかんとしたままじっと見つめるばかりだ。

だから、今回祖母が必死に探し物があると弱々しくも訴え続けたことは私たち親戚中を驚かせた。

意識が混濁しても、それだけは相当に気がかりだったらしい。


「こんな物がうちの家にあったなんてあたしも兄も全然知らなかったよ。父さん、あんたのおじいさんが亡くなって10年経つけど、おじいさんの持ち物だったのかねぇ。

かなり年代物だし、価値がある物だったりして。まぁまさかね、うちにそんな物あるわけないわ。」

晩御飯の準備のため、母はこたつからよいしょっと立ち上がった。

「まあ明日カルタを見せた時の反応をまた教えてよ。今日までずっと休んだからさすがに明日もとは言えなくてさ。悪いね。」

わかったと歌子はうなずいた。父も、歌子とかなり年の離れた看護師の姉も仕事で、歌子だけで祖母のいる老人ホームへ行くことになっている。

まあ、姉とはあまり仲が良くないのでその方がかえって良かった。

「あそこは景色も良いし、あんたもちょっと気分変えておいで。」

うん、とぎこちなく微笑み返し歌子はカルタをジップロックに入れ、カバンにしまうため自分の部屋に向かった。


その日の深夜。

歌子は浅い眠りでまどろんでいた時、それは起こった。

金縛りだ。

体が全然動かない。

押さえつけられているような重みを感じる。

心臓がぎゅっとなる。

こわいこわい早く解けろ早く解けろ、と心の中でつぶやき続けながら暗い部屋の中で目をキョロキョロさせていると足元に人影があるではないか。

声を張り上げたいが全く出ない。

人影はどんどん歌子の顔に近付いてくる。

絶対見たくないと目をつぶるが、人影の気配をすぐ近くに感じる。

消えろ消えろ南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏と呟き続けていると、人影はしゃべった。

「そなたが歌子かい」

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