鱗雲の朝に響く乱闘
「 Oh my gosh!!マジか!」
(Shit!!Crow!Crow!Crow!!海猫に、鳶は気にしてたのが、クロウだと!Cityに近づいたら これだ!)
ケイはペットボトルシップの上で暴れ回ってカラスを払うが、すでにテーブルの食糧は全滅している。
「It's 、、empty、、」
散乱した床へ、そのまま仰向けに倒れ込むと、ケイは額に片手を当てて、全身で凹んだ。
ケイが乗り込むリサイクルボトルで作られたボトルシップはエコをアピールする為、基本ソーラーパネルを搭載しつつも、風力タービンや、人力自転車で動くヨット。芸術祭でのパフォーマンスを会期中に終えて、再び Maikelの無茶ぶりに応える為に、北上してきたのだ。
「Crowめ!!hair setもボロボロだ!!ハゲるだろうが!!」
ボトルシップには簡易の屋根がしっかりついていて、1人分のテントやアウトドアキッチンも出来る。が、今の騒動で食料が尽きた。
鱗空に嘲笑うかのカラス群。
「・・・・・」
ボトルシップでの航海最終日。
甲板のピクニックテーブルに、残りの食事を出していたのが裏目に出た。甲板は、川風が吹いていて、ひんやり爽やか。空を飛ぶティカの声が、澄んで響くのがわかる。
とわいえ、ケイの掛ける薄色のサングラスが光ったのか、カラスを刺激したらしくボトルシップの上で大乱闘になったのだ。
「・・・・・クソ!!」
神戸や 大阪の国内長距離船路は多く7路線あるのに、東京からの国内長距離は2路線。
九州~徳島~東京区間で、ボトルシップを連れてケイは、一旦徳島からフェリーにシップを運送させて有明港に着いた。そこから、シップを湾岸の運送港へ運んで 陸路で目的地に運ぶ予定だったが、有明から運送港までに直ぐには運ぶ事がターミナル事情でならず、自らシップを海で漕いで運送基地に進んでいた。
「・・・Impossible、、」
そうして早朝。湾から川を 逆流して登るオートモーターモードで、都心めがけてラストスパートを掛けていた。
「Maikel、、覚えてろ。」
(お前がよけいなschedulingするからだぞ。)
ケイは、仰向けのまま不機嫌極まりなく目を閉じた。船が水漕ぐ音だけがする。
~~~タプン~~~~~~タプン、、
恨めしげに睨む空に浮かぶは、 画面通話の向こうで聞こえた、Maikelの言葉だ。
『Kei!このままbottle shipでTokyo まで行ってみない?ほら、そんな Pitiful faceしないの。Destiny partner?まだ見付からないの? もうgive upなさいな。』
(ジプヨハダ~って言われたぞ。ストーカーって事か?)
『企業PRにbottle shipがコールされたから、driverね。OK?』
(クソ!PrinceをDriver だと?!crazyもいいところだ オマエ)
「・・・」
寝転がったままケイが 鳥かごに手を伸ばすと、白いオカメインコが 寄って来た。ケイが自国から連れて来た『ティカ』だ。
「『ティカ』。お前も ジプヨハダ ~ってオレに鳴くの か? 」
(粘着男だと笑うか? 結局、1ヶ月かけてgatheringして 見つからなかった。 又、彼女は海外に出てしまったか?もうTime limit、なのか、、)
ここ何日かは船上で 捜索依頼のgatheringに目を通すも、目新しい情報はなく、今はカラスの襲撃で ケイの心身ボロボロ。
思わずケイは、長い睫毛を湛える瞳を閉じた。
(Homelessだな、これじゃ。もしくは、Drifter ー漂流者ー。)
「いや、『ガンカケ』もした。 ceremonyが終わるまではいける。」
静かに目を開きながら、自分に希望を言い聞かせる。ふと ケイは 周りの景色に気が付いた。
(ん? これは何処まで登ってる?しまった!上流にきすぎたか?)
慌ててケイは、ペットボトルシップから鋼の様に鍛えた上体を起こす。
「これは、行き過ぎだろう。」
(オートモードをcut!モーターをstopだ!!)
即座にGPS確認をしようとモニターを除くと、
(切れてるだと!) 「No chargeか!クソ。」
充電するには ボトルシップにつけられたサイクルを自力で漕いで、発電させないといけない。
目的の物流倉庫港をさらに登って、河口を来ているのはケイにも見当がついた。普段やらない 己の失態にケイは へなへなと 今度はうつ伏せに 寝転がる。
「これは、、Arakawa River 侵犯だな、、」
『キューイ キューイ』
広い土手を 朝靄の中人影が ランニングしている。
とうとう動力が底をついて、川際にshipが引っかかる気配がしても、ケイは動く気力を失くしていた。
(一気に萎えたぞ。Shit!!Crow!Crow!Crow!!オレのmorningを 返しやがれ!!)
うつ伏せの無動の割に心中は罵詈雑言をカラスに投げつけているケイ。
『キューーーーイ、キューーーーーイ』
怒り心頭にも、途方に暮れるケイの頭に、ティカの独特の鳴き声がした気が、、して、、
グルッ!!っとケイは体を上に向けた。
途端、驚きの声がしたのを聞いた。
「ぎゃっ!!」
!!!!
(なんだ!へんな声がしたぞ!あん?、そんな事はいい!ありったけの気力を使え!オレ!恥を捨ててSOSだ。)
間違いなく遭難したケイを、川岸をランニングする日本人が見つけたのだと容易に想像できたのだ。
「sorry、、something、 to eat 、、 フード、、ください、、」
ケイ自身、信じられない程、惨めで弱々しい 声が 出た。
そうすると相手の、『 そのLady voice』は、ケイに思いがけずとういう感じで聞いてきた。
「Are you hungry?」
けれどもケイは応答しない。いや、尽きた気力を 、振り絞って
「・・・・」
と思っていたケイの耳に、
「コレ あげるからさ!It's food!食べて!」
ケイに向かって叫ばれたセリフと共に、
(何かが放り込まれた?!だと?!)
「食べなよ!」
遠く カーブを描いて『ガゴッ』!!と上ー手く ケイを避け、彼女が投げたウエストポーチが船内に 落ちた。
(、、ナイスだな。どんな剛肩してるんだ?Lady?)
ケイは上体を お越し、モゾモゾと投げられたポーチに手を掛けた。
(Water bottleに soup、これは、オニギリじゃないか?、ほうれん草とコーンのミソsoupにSesame oilとmayonnaiseのオニギリだぞ!)
ボサボサで、カラスのの乱闘跡残る黒髪のままに、無力感から空腹に負けてケイは 無心で 投げられた食料を食べる。
そんな ケイに さながら『恵みのオニギリ女神』は
「じゃ、バーイ!!」
手を振って、なんなくジョギングの続きを再開して走り去ろうとした。
「sorry!!」
慌ててケイは相手に声をかける。彼女は明らかに不振そうにする。普段ならば見目に自信があるケイでも、今はボロボロの髪に、のびた髭にサングラスで顔の半分隠れている人間。だからだろう、
「No worries! いいからさ、」
彼女はこれ以上関りたくないと思っても不思議ではない。現に手を振って そのまま「食べて行ってよっ」と逃げそうにされたが、
(それは困るんだ!!Because、)
「シー、ポリス。Tell me、教えて、、、ください。」
さらにケイは、彼女に縋った。ケイは遭難したに等しいのだ。
(情けない。)
少し間があいて 何か調べてから彼女は、
「へ?ああ、ーーー!!I will call。わたし電話します」
耳に電話あてて、自分を指差すジェスチャーをすると、ケイがいる ペットボトルの船に向かって叫んだ。
途端に、ティカが、
『 キューーーイキュィーーーーー 』
あの鳴き声を あげた。
早朝の川上は、空気が澄んで思いの外 ティカの声が響く。
(間違いない。運命の声 だ。)
ケイは思わず肩を揺らしてしまう。
(彼女に鳴いたのか?ティカが?いや、この近くにいる人間にかもしれない。だが、どちらでもかまわない。彼女は、探し人ではない。そう彼女に 探し人の面影は、、)
言い聞かせるようにしてケイは今、大事にな事態に気が付いた。探し人の顔に霞がかかった様になる。
(10年すると 記憶は曖昧になるんだな。)
その事実の方にケイは打ちのめされて、目の前で助けを呼んでくれる人物に気持ちが寄せられない。喘ぐように俯きながら出た言葉は、
「ありがとう、God bless you。」
だけだった。
重なるようで重ならない。これが『田村 あさみ』という彼女と、ケイのファーストコンタクトだったにも関わらず。