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気が付けば 何度目かの街



「イリュージョニスト・ケイ様。 この度は当ホテルをご利用 有り難うございます。こちらがホテルバトラーになります。」


「Nice to meet you。長くない滞在だが、世話になる。」


 Maikelがケイに指定してきたのは、この国で3年に1度行われる国際芸術祭=トリエンナーレへの参加。

 本来はこの時期、海外からの入国は国内式典で入国規制が厳しいが、ケイは難なくパスをした。


(西の瀬戸内海で長年開催してきたアートフェスティバルの親善アーティストなら、エコボトルシップとして来日もしやすかったというわけだ。)


「、、しかし、、このホテルも何度目だ?笑える。冗談じゃない。」


 支配人がバトラーを連れて出て行くのを見届けてから、あえてケイは独りごとを口にする。


(こんなはずじゃないだろ?どこまでunlucky loopなんだ?)


 これまでにケイは 国際芸術祭の招聘アーティストを隠れ蓑に、何度も来日をしている。たった一つの『理由』の為に。


 先にバスルームに足を運ぶと、夜の神戸を彩る景色の中、ラグジュアリーな浴槽には、薔薇の花弁が浮かんでいた。


 徐にケイは、首元に片手を持っていくと、無造作にタイを外し、全裸になってシャワーを浴びる。濡れて 黒髪に短いウェーブが

かかる。


「、、、fireworksか。」


 褐色の肌をジャグジーに浸け、ケイが眼下の港 景色を 見ていると、埠頭から急に青い花火が上がったのだ。ちょうど前日、国王の生誕祭で

花火を打ち上げたケイには、、、


「Blue fireworks、祈りだな、、」


 呟きながら、御祓をするかのように、普段からのmilitary trainingでついた、ほどよい筋肉の身体に再び水を浴びて、ケイは祈りのポーズをする。

 港に上がる 噴水のような青い花。 サプライズ花火なるものが咲く神戸港。


(港は、モノと ヒトと、エネルギーの 集まる場所だ。ここは日本の貿易の 出入り口だったな。)


 山側の窓 からは 100万ドルの夜景が広がり、ジャグジーは海側の窓。船で、海外間の物流がなされるが当たり前の24時間稼働する港都市。


「もうボトルシップも到着か。」


 ケイは、シャワーで濡れた髪を用意されていたタオルを手に取り、緩やかなウエーブの髪を乾かす。ふと昔の古傷が疼く気がして、ケイはもう一度、冷えた水をかけて

足を見つめた。すでに愛おしい違和感はなくなる。


「Last oneだ。」


 そう独り言をいいつつバスから、部屋に設えられたバーカウンターに裸で出ると、ケイは、セラーを開けた。

タワーの形をしたペットボトル。KOBEウォーターを見つけキャップをひねる。


「この、ポールアートクリスタルボトルを見るのもlastかもな。」


 そうしてケイはペットボトルに 口を着けると、改めて KOBEウォーターのボトルを 見つめた。


 窓の外には観覧車の鮮やかなイルミネーション。

 かつて神戸港は世界トップクラスのコンテナ港湾だったにもかかわらず阪神・淡路大震災に見舞われる。復興までの時間、またたく 間に韓国・釜山港が トランシップ港に代わってしまった経緯がある。


「お陰でMaikelの港から、問題なくコンテナ船でシップは海運できた。ここからも、この国なら、すぐに島へ出れるだろ。」


 まだ、世界には完全AIを使って 港湾のターミナル運営を している国は存在しない。


『AIターミナル』


 エコ化の流れでRORO船舶という、自走コンテナによる国内輸送の活用も、積極的に取り組まれている。


(この港からなら、国内への船舶動線は多い。)


『ブーッブーッブーッ』


 ケイの電話が到着を告げた。

 ラウンジでMaikelと落ち合う予定が表示されるのを ケイはチラリと確認し、カジュアルなスーツを素早く纏って部屋のドアを出た。



「あ、武久で~す。悪いけど、荷物まとめてくれるぅ?残りは~船に運んでぇ。3分でフロント降りたいなあ。ごめんね~。」


 廊下にでると、そう多くないスイートドアが並ぶ1つが開け放たれて、慌ただしい声が響く。


「Hotel handmaidenか?」


 ドアから 覗くと部屋には、着替えや資料、主が滞在した日数分だろう、荷物が散乱していた。


「遅刻は不味いよねぇ~。」


 と、鼻歌まじりの主の言葉がクローゼットから聞こえて、ケイは


(I'm sorry 。とんだguestだ。)


苦笑しつつドアから離れ、ラウンジに向かった。


「Art festivalの間は もう一度この西を探す。last chanceだ。」


 神戸港。

 港を通って モノやエネルギーは運ばれる。


 港を人は通過する。

 日常物資もとてつもなく 多い。


 砂の中から、『華の跡』を探す旅を続けて10年。その為に国際ボランティアにケイは席を置いて、文化交流にと世界中を回った。

 国に責務がある自分が動くには、名分がいる。


 『イリュージョニスト・ケイ』は、運命の鳥を連れて最後の航海へ出る。


 サヤ ナク ジュンパ カム。


異世界ファンタジーで別に書いてます、『めざせ転移門〜』のヒロイン・マイケルの男友人のお話です。マイケルが大師により異世界に飛ばされる前の時間軸。『めざせ』よりも先に完結します。


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