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ショータイムの修道士は計る

↓↓↓↓↓↓


「アサミ!!マイガッ!これはミラージュなの?Why??」


 隣にいるケイトウの狼狽えが半端ないセリフとなって、スモークの向こうからアサミの耳に聞こえる。


「騒ぐなケイトウ。スモークだ。」


 そのまた 向こうにいるダレンの顔さえ、わからなくなりつつある程、今アサミ達は霧の様なスモークに囲まれている。


「ダレン!NO! エマージェンシーレベルですわ!?」


 そんな3人の様子を物陰から聞きながら、ケイは細笑む。


(ハハ、確かにチャシツに入るなり、突然mallageだからな。)


 霧と化したスモークに己の姿を隠しつつ、ケイはアサミへの 『ご褒美マジック』をスタートさせる合図を、護衛のジハンに送った。



******************************



『アサミ姫は、 件の イリュージョニストと、一体どういう 関係なのだ。』


  ケイを連れて、社へツアコンをした次の午前中。

 社内PCで資料作成をするアサミの元にかかってきたのは、不機嫌なさ声を顕にするダレンからの電話だった。


 まるでアサミとケイが昨日出掛けたのも知ってるのかと思うような雰囲気さえ出してくるダレンに、アサミは一瞬身じろいだ。


『別に、、ただ、 何処か観光。見れる所、 紹介、頼まれて。』


 いつもに輪をかけ、おずおずとして口調で答えながら、アサミの頭は疑問が浮かぶ。ケイトウならまだしもダレンから わざわざ電話をしてくるのは珍しい。けれども疑問は、次にダレンが発した言葉で直ぐに解消した。


『イリュージョニストから、アサミ姫に伝言だ。約束のランチタイムマジックを披露してくれるそうだが?どうやら、我々にも 礼がてら同席の許可が出ている。』


 案外、ダレンは押しの強いタイプなのだと感じながら、連絡先の知らないケイが、ギャラリー経由で伝言をよこしたのだと腑に落ちた。


 もともとはギャラリーオーナーのハジメを窓口に、レセプションショーをケイに依頼をした事をアサミは思い出す。


『わたった、、とりあえず、ランチタイムで。』


 早々に切り上げの言葉をダレンに投げるアサミに、


『場所は、庭園茶室だ。』


 ダレンが端的に仕舞の台詞を投げ返えしてきて、、、

今 コンセプトモールの屋上に緑化併設された日本庭園内の茶室に至る。



 昼の日本庭園。


前後不覚、視界不明瞭

濃霧の空間に、

いつくもの人影。


 本当に、昼の日本庭園なのかと思う程、アサミの目には隣のケイトウ達が

スモークで見えなくなった。おのずと心拍数が上がるのが分かる中、


ユラリと 濃霧の空間に、

いつくもの人影が伸びれば、

3人を

人影のマッピングが取り囲んで

アサミ達はギョッとする。


視界が奪われ鼻を くすぐる

深い薫りが強くなる。

視界が奪われると

鼻腔を くすぐる深い薫りが

より強くなる。


「白檀の薫りじゃないか?」


 ダルンが 低く呟くと、


横笛の高く細い音色が

霧の中に 聞こえてきた。


其れは、この旅でケイを警護するジハンが奏でる

スリンー竹笛ーの高く細い音色。


パタタ


風が 扇がれて

空気に、道の流れが出来る。


フア~サ~ッ~

霧が 左右に別れ、空いた空間。


庭園に 『和笛』を吹きながら

すくッとたつ

黒のローブ姿のイリュージョニスト・ケイが

シルエットから 現れた。


しかも、その

傍らには ギロチン台がある

黒のローブ姿は修道士。


「Uwu!?」


 アサミの隣で、ケイトウが体を強張らせて、おののいた。


(意味深さに驚くだろう?)


ケイが横笛を、バトンのよう回しながら、ギロチンを一周すれば

まるで空中から取り出したかに、 スッと一輪の『桔梗花』がケイの手に出現する。


(Everlasting love。変わらない愛を意味する花だ。)


しかし、

銀光りする、ギロチンの歯に当てれば

『桔梗花』頭が、ポトリと落ちてしまう。


(なぜか わかるか?アサミ。)


霧の世界に

落ちた『桔梗花』の 青紫が目に残る。


辺りにまた、霧が上り始め

ケイは自分の首に

赤い布を巻き付け静かに、

屈んで

ギロチンの首置きに 自分の顔を

置くと、横笛を奏でる。


間髪入れずに、 ギロチンの歯が

『ダン!!!』「ひっ」

と、落ちた。

そこに頭すでになく。

首の辺りに

巻かれた 赤い布より、

上には 空間がある。


ケイの頭が

首置きに乗ったまま 頭と胴体が

切られ離れて見えるのだ。


首なしのローブ体に、

グリーンのレーザー光線が

首なし体から

発光されて、さざめいた。


(オレは、きっと出逢った時から心のままに動いて、間違いを起こした。)



再び首なしの体に、切られた

ケイの頭を近づけると

グリーンの光が放たれ


また濃い霧に覆われての 笛の音。


『ブアッ!』


茶室に 爆風が吹き込ませ

スモークとギロチンを

吐けさせる。


『桔梗花』を胸にあて、

礼のポーズをする

ケイの姿で フィニッシュ。


茶室に、足を踏み入れたとたん

修道士に扮したケイがつくる


霧の断罪

イリュージョンだった、、。


↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑


 アサミ達3人は 唖然としつつ、庭方向にパ、ラ、パ、ラと拍手を贈るしかない。幻を見ているような束の間のイリュージョンに声を失った。


 とはいえ、立ち込めていた霧は茶室からは綺麗サッパリと無くなっている。

 そこへ、 静寂を破って茶室の戸が開いた。


 茶室を借りるオプションとして依頼をしていた懐石弁当が、コンシェルジュから運ばれたのだ。


 未だ呆然とする 3人の前に、膳に 全て整えられた昼食が、四角く4つ並べられて、急須の日本茶も セットされる。

 同時に何もなかったように、修道士姿のままケイが3人と一緒に座った。


 徐にケイがダレンに向かって言葉を投げる。


「アサミさん には、パーソナルコンダクターをお願いしたのです。ダレンさんに話すべきでしか?」


 それは午前中の電話口で聞かれた問いへの答え。


「貴方は、どうも好きにやり過ぎるようだ。皆、日常の仕事があるのだから、普通に 然るべき会社にでも、頼まれるが良いのではないだろうか?」


 突然投げられたケイの言葉に、さっきまで驚くしかなかったダレンの反応は意外に冷静で、硬い拒絶の返事だった。


「I see however 、初めて 会ったアサミさんに助けられました。信用する人のリードを 希望するのは、ダメでしたか。」


 そんなダレンから手厳しくされながらも、ケイが笑みを湛えて応戦する。


(そう何度も心に任せて動く間違いはもうしない。つもりだ。)


「なるほど。其処まで仰有るなら、ほんの8日9日程の滞在。すぐ自国に戻るのだろうなら口出しは止めましょう。」


 ケイの台詞を理解したダレンの『そんな事があったのか?』と、言わんばかりなアサミへの視線が鋭い。尚且つダレンが返した台詞で不穏な空気が茶室に流れた。

 慌ててケイトウが口を開く。


「Wau!、正統派、 お弁当、niceです!ほらアサミ、モミジ、でしょ?」


 綺麗に仕切られた枡の弁当に、あしらいの 紅葉が添えられてるのを

ケイトウが指さすと、


「ほんと、、あの、いただきましょう?」


 アサミもケイトウに相槌をして、ダレンとケイに食事を促した。

 以降は問題なく、終始さっきのイリュージョンや日本庭園の見所を口々に話しランチタイムが終わる。


はずだった。


(ダレンの 言うことはな、正しいのだろう。9日もすれば、オレは 国に帰る。)


 ケイはケイトウと ダレンが 茶室を出た瞬間、後に続いて 部屋を出ようとするアサミの手を引いた。


「アサミが迷惑なら『ケイヤク』無しにしても、いい。」


(今、NOと言われれば、、アキラメル?のか)


 驚いて振り返るアサミの目に映るのは、縋るようにアサミを見つめるケイの顔。

(言いたい事は I know it だ。)


「、、『ケイヤク』した、から、やります。イリュージョニスト・ケイ。」


 アサミの答えを黙って待つケイにアサミはケイと 手を繋いだままで、諦めた様に返した。途端にケイが破顔して、アサミにとんでもない要望をリクエストする。


「アリガトウ。次は『オンセン』に、行きたい。ヨロシク。」


 よく聞けば、いろいろ考えたであろうアサミの顔が、眼鏡の奥で赤くなる。


 アサミはケイから繋がれた手を慌てて放し、ケイトウ達の元に小走りで逃げて行った。


(さ、時間をくれ。神よ。アキラメルなら Don't look for years!

10年も拗らせないだろうが!)


 一種の掛けに出たケイは、アサミから『契約続行』の言質を取れたことに、空を仰いで不敵に笑いながらも、祈りのポーズを見せる。


 


 



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