記憶鮮明に風が吹く
黄昏時は、ぐっと 気温が下がっていた。
その証拠に、ケイは 白の長袖トレーナーに濃紺Gパンで、左手中指に嵌めているのは、願掛けのリング 。
一時的に開放されたエントランスホールで、展示されるペットボトルシップを囲んで、どこかの大学生達がゼミだろうか、レポートを書いたり写真撮ったりなどしていた。
ふとケイも 電話を鏡変わりに、映る自分の姿を確認する。そこにはお約束のスタイル→ぼさぼさに伸びた髪に眼鏡をかけ、冴えない感が満載の自分がいる。
「OK。Looks normal だな。」
エントランスで騒ぐ 学生に 混じって待っていたいたケイは、丁度仕事を終えて出てきたアサミを見つけた。
「アサミ!お仕事お疲れ。今日から、コンダクター
ヨロシクお願いする。楽しみだ。」
学生達をかき分け、 ケイが笑顔で手を振りながら近づけば、アサミがケイを見て、目を見開いている。
「???」
そんなアサミの様子を不思議にしつつも、ケイがアサミに手を差し出すと、荷物を持つと合図する。
「、、、じゃあ、クライアント様。依頼の、最初は、Japan trip。 秋の催しに、ご案内します。」
アサミは 硬めの 会釈をして、ケイの好意を遠慮すると、ヒルズヴィレッジから遠くない場所を電話に表示す。そしてオフィスの階下でアドバイスをもらった先に、不審者スタイルのケイを リードした。
『ヒャアアアアーーーーーン
ヒャアァアアアーーーーン フヨーォォォォォォオオオ』
秋の夜空に、
笙の音が響くと、満月が
一際冴えて見える。
「この国の Central government近くに こんな Sanctuaryが、、」
そうしてアサミがケイを連れて来たのは高台にある社。もともと琵琶湖畔の霊山守護する山神信仰の神社だ。
明治天皇が東の都に 居住する際、
『王の城、皇居を中心とす首都』を守護する社とされた場所で、企業の信仰集める神社、男坂や、千本鳥居。天井絵が有名だ。
彩飾鮮やかな社がライトアップで淡く灯されるのを見ながら、アサミは此処にして正解だと、ケイと並んだ席で思った。
『雅楽』は日本とアジアの音楽が融合した、最古の音楽で、交流的な ツアコンならもってこいの儀の日だと、ヤマモリが 教えてくれたのだ。
奇しくもここは、『山王』信仰。アサミの真の名前。2つ名をどこか思うのま選んだ理由。
仲秋の名月の下。
いかにも 日本的な太鼓や、管弦 菊の花や刀を使った巫女舞が 厳か行われている。
『ヒャアアアアーーーーーン
ヒャアァアアアーーーーン フヨーォォォォォォオオオ』
巫女の舞方が、動から静へ。
刀がぴたっと 重なり合う瞬間。時間が止まれば、
野外舞台の 幕間に 森の音。
「Jungleの音がしそうで、Nostalgicさえ感じるな。」
雅楽の音色も、ケイには自国の音楽に近く感じてくる。
そんな合間にもケイは、 途切れ途切れ 何かしらの端々に、アサミの横顔を盗み見た。
(どちらにしても ティカが懐いた人間でもある。が、眼鏡に地味な『彼女』に、見える。)
明らかに 瞳の大きさを変えるコンタクトは、怪しいと昨日悟ったケイ。けれども確証がない。
(もっと違う表情が見れれば。)
さっき 買った、み垂らし月団子の先端をケイはアサミに、悪戯とばかりに口に入れて食べさせた。
ケイの国では 婚前はプラトニックが前提で、一線を越えるどころかキスも しないのが良しとされる。その為かSay ahhnの行為は誰もがお手のものだ。
「!!!」
アサミの驚いた顔にケイは、成功したと音なく笑って、『シーッ』と指をたてるポーズをとる。
上の一個を串ごとアサミ口に入れたら、残りを
ケイが横にな切るみたいに自分の、口に、齧り入れてて 満足げに笑うは屈託がない。その実、捕食しようとする獣な心を隠し持つ。独占欲の強さは国柄だ。
(だから、相手へのappealはdon't mindだ。)
「・・・・・」
ドギマギしつつ口に入れられたモノを咀嚼して、
アサミ が 再び野立舞台に視線を戻すのを、改めて ケイは笑顔で見つめる。
舞台は次第に盛り上がる 『冬明楽』。
4人舞の鳥兜が 2対2、完全に動きが リンクする。
まさに 神聖な山場を迎え、
観客全員が舞台に心を奪われた、次の 瞬間、、
『ザーーーーーーーー』
五十鈴を鳴らして、、
神風が境内を 秋吹いてぇぇ
アサミと
観客の髪をぉぉ 乱す、、。
アサミの髪飾りが!! 弾けると
長い髪が 煽られて ブアーーーーーーーーー
広がってしまう。
慌てて自分の髪を 押さえるアサミ。
『『?!!』』
そんなアサミの耳から首が真横で見え、ケイは 髪を押さえるフリをしてアサミの 頭なぞる。
フワリと、リングをつけた手で撫でた頭のラインと顕になる耳首の形に、ケイは自分の身体の中から
籠る熱が動くのを感じた。
10年前の『彼女』のラインと重なった。
( no doubt!間違いない。)
ケイは触る手から記憶の感触を 咀嚼する。出来れば あの日と同じ様に触れさえすればとも頭に浮かんだ。
(すぐにでも、ソコから齧りつきたくなる衝動だ。)
ケイは 神風に 煽られるアサミの髪が 揺れる
横顔に固唾を飲んで、アサミの横顔に惹き込まれている。
ケイが確信を得た。