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エスコートに憂う彼女は階段を下がる

 レセプションの次の日、アサミが職場のバンケットオフィスに

出社すると、朝のミーティングでミズキが昨日の労いを述べた。


「昨日は、皆さんお疲れ様。ご存知でしょうが、急遽対応になったレセプション会見、依頼企業からも大変評価を頂きました。加えて、夕方のメディアは全局ニュースに あの会見が数分とわいえアップされました。スタートの状況から考えても快挙です。全員の健闘、課長も本部よりお褒めをもらえました。」


 ミズキが最高の美女スマイルを輝かせる。何十年に一回ある秘仏開帳

並みの表情に、アサミをはじめ全員が心中で拝んだ。今日一日はミズキもご機嫌のはずだと。


「本日は、より気を引き締めてヨロシクお願いします。昨日のメディアリリースからボトルシップの取材と、大使補佐クラスで行われるミーティングが予定以外にスケジューリングされましたので、、、」


 ミズキが連日報道される国際式典について、追加の説明をしていく。

実際このヒルズヴィレッジにあるブランドホテルにも国賓補佐官クラスが滞在している。


「都内の宿泊先は滞在のみならず、今回の様な国家間で企業提携されたりなどの友好外交の場にもなります、、」


 もともとレジデンス棟にもセレブリティな住人も多い為、セキュリティは厳重ではあるが、現在の状況からテロの可能性も出てくると、ミズキは締めくくり、安全対策の確認で朝のミーティングは終了した。


「そういえば、ケイって、、レジデンスにいるのかな。」


 アサミはミズキの話を聞き、ふと昨日別れたケイが、ヒルズヴィレッジのレジデンスへGパンのポケットに手を突っ込んで 歩いて行った姿を思い出す。


 タワーを所有する財閥企業のペントハウス扱いの部屋がレジデンスにもあると、アサミも同僚達が話していたのを聞いた。レセプション救世主のマジシャンとして、ケイの宿泊も企業が用意したのだろうと、アサミは頭を振って仕事モードに自分を切り替え切り替えた。


 「田村さん、今日リスケ、よろしくね。」


 ミズキに渡されたシートをタブレットと合わせてアサミは確認していく。


 官邸や大使館以外での協力国での会議や、初見の国同士が 補佐官クラスでファーストコンタクトミーティングをしたりが、アサミたちが運営する都内バンケットホールで開催される。急遽、スケージュール変更となったホールのタイムスケジュールをPC上で細かく確認をしていくのだ。


「やっぱり。ここに来て昨日のレセプションの影響か。」


 どうも元の外交官同志で計画された会議のみならず、賓客と民間経済界との会合が追加になっている。もとの予定を越えて、急遽リスケジュールされたさ

項目がある。


「これ、課長バタバタだろうな。」


 バンケットホールで持つ 幾つかのサロンは、一斉に外交ミーティング予定で 埋められ 始め満室に成りつつあったのだ。


 とわいえこんな変更もアサミ達にはルーティンの範疇だ。昨日みたいな事でなければ、セッティングのみが、バンケットスタッフの仕事なのだから。


「いやはや、あれはたまったもんじゃないわよね。」


 オフィスに流れるネットニュースを一瞥して、ミズキが呆れた顔をする。見れば、元首の買い物や、視察風景がコメンテーターの言葉と一緒に流されていた。アサミも目にした光景に苦笑する。


「ああいったコーディネートのスケジュールも官僚の管轄なんでしょか?」

「急に家族のお土産を買いに行きたいとか言い出す王族だって、いるでしょうよ。」


 同僚達は、早速ホールの確認に出て行く。よって、ミーティング後の隙間時間を資料打ち込みに充てるミズキに、コーヒーを入れるのがアサミの担当。


「フフフ」


「田村さん?」


「あ、いえ。」


 『お土産』と言われた言葉に、ついアサミが思い出し笑いをしてしまった。 


「そういえば、、『達磨』を買うなんて、海外観光客らしいなって、、」


「達磨?ああ、浅草とかじゃあるものね。」


「モールのコーヒーサロンでも、、昨日みたんで、つい。」


「ま、ハイエンドのJapanブランドがコンセプトだからね、そこのモールは。へー、でも達磨ねー。」


 PC画面から視線を動かさずにタップ音を鳴らすミズキの、流すような言葉を受けつつ、アサミはデスクの端にカップを乗せた。

 

 ミズキが口にしたモールとは、ケイといったコンセプトモールで、日本の良質ブランドや、老舗店を集めている珍しいモールだ。


 「フフ♪」


 別れ際のケイは、モールコンセプトなのか、カフェで売っていた『達磨」を小脇に挟み、ポケットに手を突っ込んで帰るという出で立ちになっていたのだ。再び、アサミの口から笑いが漏れ、向かいのミズキ先が変な顔する。


「あ、、ミズキ先輩、コーヒーです。」


 誤魔化すようにミズキにコーヒーを勧めるアサミ。


「?、ありがと。」


「じゃあ、、、下に確認と、あいさつに行ってきます、、」


 コーヒー担当を終えて、アサミは今日から本格的に要人ミーティングが

動き出す為、予定していたホールセッティング人員の準備をする。


 タワーオフィスの49~55階が親企業になるブランドホテルが

入り、会員制VIPラウンジや、かなり高級系レストランフロアがある。

 そして、7~48階がアサミたちがお世話になった『武々1B』や、シェアカンパニーダイニングが入っている、オフィスゾーン。

 多彩なフロアが展開されているのが、タワーヒルズの極み。


 そして6階にあるアサミ達のバンケット部のあるホールフロア。


 この6階の作りだけが、異質なのはサロンホールという使用目的だけがが理由ではない。

 なにせヒルズヴィレッジを所有してる旧財閥総裁の肝いり。オーナーの趣味がかなり反映されてる装飾になっている。そのため、ハイクラスのパーティや番組収録もされる。

そんな6階以降下のフロアにはカルチャースタジアムや、ライフアシスタントするテナントとかが入ってる。

 アサミがこれから行くのが、チューターやコーチャーはじめシッターやヘルパーの主に人材派遣業をしている ディスパッチセンターだ。


「タムラさん、今から下に行く?悪いけれど、ヤマモリさんに、このタイムスケジュールを、渡してくれるかしら。マル秘ね。」


 アサミはミズキから、黒ファイルを渡された。メールで送れない、人物の予定が入っているのだろう。

 ホールセッティングの人員だけでなく下のデスパッチセンターは、優秀な通訳や、ボディガード、ショートステイ執事やメイドなども派遣できるSSランクの派遣センターだ。


「だから、わたしじゃなくて、下なら ツアコン、いるのに、」


「何?何か言った?タムラさん」


「いえ、何も。わかりました、、、下、行きます。」


 ミズキに渡されたファイルを手に、オフィスを出る。


『出来るだけイージーに tripしたい。それも出来るなら 、この国のGood pointを 見たい。』


 昨日のケイとの契約を思い出す、アサミ。そのままエレベーターには向かわず階段を下りる。1階から6階までならアサミは平気で階段登り降りをしている。常日頃からアサミは、朝のランニングをも併せて体を鍛えているのだ。


「Japanブランドのモール、、」


 いつものようにトレーニング兼ねての階段は、アサミ以外使う者はいない。

きっと祭典がある10日間は、この階段を何往復も走り廻るだろう。


「言うなら、もってこいのフロアもあるし、店頭体験できるショップもあるはず?」


 階段を降りながら、アサミは思いついた。


 なによりモールの売りになっているのルーフトップガーデンは、新進気鋭の庭師が作庭した本格的日本庭園だ。


「このコンセプトモールって、お手軽『イージーtrip』だよね。あ、なら下で相談できるかも。うん、ケイトウとダレンにも昨日のお礼にモールで和菓子でも 買って持っていこう!」


 昨日の契約からの悩みも解消できそうだと、心も晴れたアサミは、ディスパッチセンターの入口を抜けた。

 

まさか、、昼休憩に和菓子を買いに行ったモールで、へんな光景を

見てしまうとは知らずに。



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