歓声と潮騒の中始まるマジックカウント
アイスコーヒー1200円。
因果因縁
輪廻転生
諸行無常
ショッピングモールのメインエントランスに位置する有名コーヒーカフェのコンセプトサロンにアサミとケイ。
(coffeeの燻が芸術祭で訪れた、 島の篝火カブキを思い出させるな。)
ケイは入り口から見える巨大なコッパーメイドのキャスクを見上げながら思う。
「え、樽熟成豆のアイスカフ、が 1200円、ですか、、」
かたやアサミは1杯の金額に戸惑っていた。
アサミにとってオフィスタワーの区間にあるブランドモールは、もっぱらウインドウショッピングだけで訪れる場所。
入社以来、何度と足を踏み入れてきたが、未だ入った事がなかった此のセレブなコーヒーサロンは、自分でケイを誘っておきながら酷く落ち着かない。
(まるで蜃気楼、夢想、無双だな。)
そんなアサミの様子をケイは察さながらも、無言でアサミの向かいに座る。
店内を回遊してサービスするコメッサが、腰に下げたデバイスで、アサミとケイのオーダーにやって来た。
すかさずケイが、おすすめを教えもらいキャッシュレス決済をした。その金額がアサミに見え、またもアサミの顔が青くなる。
『シュッ―、ジャー。パチパチ』
カフェに、スチーム音が鳴り響いた。
途端にゲスト達が音の演出に拍手をする。アサミはそんな店内がどこか異世界に思え、ケイの耳には拍手さえ潮騒に思え、自国の海が浮かぶ。
「じゃあアサミ、改めてLet's make a ケイヤクだ。」
目を細めてキャスクを見ていた視線を外し、アサミの顔を見つめたケイは、フェイクで掛けた眼鏡を直しながら、入口で告げた言葉を再びアサミに投げた。
「契約って、わたしとですか。」
「そー、ケイヤクだ。君と。」
(ああ、確かあの島でみたカブキもそんなstoryだったな。生まれかわった オヒメサマと、ソウリョが、promiseを交わしてもう1度 出会うstoryだ。)
「・・・・」
再びのケイの問いかけにアサミは、ケイから目線を外して、応えない。暫し、2人の間に沈黙が流れる。
『シーュッー!!パチパチパチパチ!!』
そんな2人の沈黙を割って、スチーム音と拍手が歓声と掛あって、ケイとアサミの周りにビッグウェーブを作った。
「えと、意味が分かりません。」
カフェフロアや、ティーフロア、カクテルフロアのサイロに、スチームバンクの工場さながら張り巡らされたシンフォニー管を豆が移動していく。
「そもそも、わたし、分かってると思いますけど、れっきとした 、、バンケットスタッフで仕事しいますから、、、その、、ムリです。」
アサミは途切れ途切れに言葉を発しつつも、ケイにはキッパリと断りの意志伝えた。
(なかなか オカタイな。)
コーヒー豆の名前がランプされる。
『シュッ』という音がし豆が降り、スタッフが盛大に拍手し、ゲストも歓声を上げた。
そんな舞台の客席のサザメキが、またケイの耳に届く。
(ふんOK。ヒキョーなtrickをいくか。)
「!!!!」
ケイが巧妙な手業を仕込む。
向かいに座るアサミの視線がケイのTシャツの首もとに止まった。
ケイが、ティカに顔を 出させたのだーーー。
(ハハ、そういえば、カブキでもmagicの様に、生まれたオヒメサマの手から Destiny partnerのソウリョnameが出て来て、2人が 互いのpeaceをピッタリ合わせてたな。)
不意に現れた可愛いティカの顔。
明らかにアサミの気持ちが、ティカにもって行かれているのを感じて、ケイがニンマリとした。
もうカフェの派手な演出さえ、アサミは気にならなくなっている。
(ウソだろ、、!効いてる!?ティカがnegotiationに有効ならば使うまで。まずはケイヤクというヤクソクだ。)
カフェに焙煎の香りが、立ち込めて、ローストされた豆が排出された。
今度は照明が ダウンし、ローストされたマメにスポットライトが当てられる。
それはまるで舞台のように無音に空気が変わり、陰る世界がケイのシルエットを浮き上がらせた。
(!!!)
そして反対にケイから見るアサミの姿さえ、シルエットに切り取ら、その形を見つけたケイが強張った。
(見覚えのあるshoulder 。そうか、、body lineは 記憶しているもの、だな。)
「あの、、。」
「そんな固いモノではないからノー problemだ。仕事終わりにプライベートコンダクターをして欲しいのが、ケイヤク。」
何かを察したケイが、魔術師との契約の如くアサミを追い詰め始めた。
「う、、、」
合わせて首もとの、『ティカ』のスノーフェイスが暗い中に 真っ白く浮かび、愛らしい目が光かった。アサミを見つめる、ケイとティカ。
(記憶の底に面影さえ mallageなオレには、手掛かりはnameという peaceしかない。と、思ったが、、)
因果因縁
輪廻転生
諸行無常
ケイがパチンと合図すればティカは Tシャツの中に潜ってアサミの視界から消えた。
「ええと、ツアーコンダクターを個人で、、やったら、いいと、、?」
目の前の世界に溺れそな感覚をアサミは覚えて、ついケイに答えてしまう。アサミの声と同時に店内の照明が現実を照らす様に戻った。
ここで、ゆっくりとケイが不敵に微笑む。
「Yes。」
「ケイなら、ちゃんとしたガイド雇えると、思います、けど。」
(、、Lady、まだ言うのか?)
アサミの反撃に、ケイはティカを自分の髪にピョコッと出してやる。目が覚めたようにアサミが、ケイの頭のティカに視線を合わせた。
「あの、、ペットは、 今、、ダメでは、、」
アサミがカフェスタッフを気にしてはじめると、
「あ、」
(ならばソデからティカだ!!)
アサミが話に集中できない様に、ケイが畳け仕掛ける。そんなティカをも巻き込んだ、ケイヤクとあう名の攻防を展開するアサミとケイに、オーダーが仕上がったと通知音が響いた。
「Sorry、アサミ。先にカウンター取りに行ってくるから。Stay。」
ケイが さっさとカウンターへ長い足を 運んで行く。
アサミはため息をついて、気持ちを落ち着かせる様に周りを眺めた。
科学の実験をするかに、いくつもの本格メーカーで抽出するバリスタが見える。
バーテンダーが樽を並べたカウンターで、コーヒーカクテルのシェイカーを振る 『シャカシャカ』という音も小気味いい。
どのスタッフもワークスタイルもあってアサミには格好良く見えるが、
「お待たせ。アサミは、カプチーノcocoaと、coffee タルトレットだ。どうぞ。」
目の前にトレーを持って立つケイは、一見不審人物とはいえ、スタイルは誰にも負けていない。
「いつもは、『キャンプEARTH』 でボランティアしてる。たから、出来るだけイージーに tripしたい。それも出来るなら この国のGood pointを 見たいな。」
そんな風にケイを眺めていたアサミに、ケイが伝える『キャンプアース』は、国境を越えて国際協力をするボランティア団だ。
アサミには謎でしかないケイ自身が、ワールドボランティアに積極的な人物なのだと知って少し好感がもてた。アサミにも覚えがある。
「ケイは、、国は、どこ?」
「アジア、 南シナのSea Island だ。アサミは わかるか?」
「なんとなく、、」
アサミは答えて、ケイに出された シックなデコレーションスイーツに手を付けた。
「でも、わたし、プロのコンダクターじゃないから、お金とか、、もらえません。」
気持ちを切り替えたアサミは、もう一度ケイに契約の辞退を試みる。
「、、So、対価は『 Magic』。オモシロイ だろ?アサミはAfter workに、コンダクターをする。対価に、Lunch time magicをショーする。滞在は10day。それと、」
とどめを刺すかにケイが、首元に『ティカ』を出したまま、ゆっくりと樽熟成豆のアイスカフェを口に含んだ。
(『ティカ』Go!!ラストだ。)
ケイの手元からくゆる、コーヒーというより樽のモルトっぽい薫りが、アサミの鼻腔にうったえる。
「それと?」
アサミがケイの言葉尻をとらえると、
「コンダクターとしてMission エンドすれば、『ティカ』を差し上げよう。どうだ?」
鳥を飼いたいと願うアサミに、ケイがダメ押しの言葉を放った。
「っ!本当に?」
(last cardだ。クラクラしているぞ。ヨシ。!)
「I promise!神に誓う。」
あざとく肩に『ティカ』乗せて、ケイは 無駄に長い足を組む。
(もう正常な判断ではないだろう。アサミ?)
「っっつう、、ケイ、やりますっ、、。」
急に前のめりで契約に応えるアサミ。そんなアサミに、勝利の笑みを顔に浮かべるケイは、
「ヨロシク、baby。」
手を差し出して握手を促す。アサミは 一瞬躊躇いつつもケイの手を、掴んで、すぐに放した。
愛の証は
断崖絶壁
死に遅れ 生き残り
只只絶壁
秒読みか
在業消滅
「何かあれば、ここに『魔術師ケイとコンタクトしたい』と言えばいい。スタートはtomorrow!!Are you ready?」
ケイがカフェテーブルに出したのは、大手企業の名刺。
「OK、クライアント様。」
アサミもなんとか笑顔作ってケイに言い返す。
「それはイヤミってやつか?」
珈琲豆が行き交う中。
ケイとアサミは、どちらともなく噴き出した。
(AA,カブキじゃ本当にシュールとしか言いようがないstoryだった。性別が変わり、生まれかわって、離れていても必ず2人は 出会うというlast stageだ。)
ここにマジックアワーが幕開け、ケイはレジデンス棟に。
アサミは下町にある部屋へと続く駅に向かった。
雲偏に愛く 波幕
黄昏時に 吹く風揺らぐ
蝋燭の 行灯