アルハンブリラな午後
アルハンブリラな午後
”━ Dear Maikel
招待を受ける。是非、同行したい。
もちろん、illusion artistとして参加も可能だ。
USAで、school『プライベート・アイ』のコーチングを
受けていたまでは足取りを追えたが、
それ以後は At all lostだ!
母親が帰国しているのは掴んだ。
Maikel側に父親がいる可能性は高いが、
彼女は 母親と帰国したと考えられる。
Maikelの招待は、来日のexcuseになるだろう?
そろそろ No time なんだ。6th princeといってもな。
10年かかって見付からないと、もう待ってくれそうにない。
ラストチャンスだ。
楽しみにしている。All the best!
from Kaiser ━”
友人マイケルの招待に簡単に打診して ケイは 側近に告げる。
「イリュージョニスト・ケイの用意を。Maikelから招聘だ。」
庭園が見える執務室。世界でも有数の広さを誇る白亜の宮殿の一室にケイは居る。
宮殿は、王族の住まいに続くだけでなく、国の内閣執務室も内在する。ケイが在席するのは、いわば文化青年環境省といった省庁。
君主制をとる国家は、その権力の全ての省において国王が頂点となり、王位継承権がある王子達が補佐官を務める。
「王子、今回の来日が 現省での最後の交流になろうかと、、」
側近が、デスクに座るケイに進言した。
「わかっている。軍部に就けば国を離れる事が 難しいのもな。」
そういいながら、ケイは側近に執務風景を撮らせている。王族といえども国のアピールに、SNSは欠かせない。民意をとらえる為、世界でも随一の豊かさ、軍や法、医療福祉の清廉さをオープンにしている。
「海が、透明になる季節だ。」
熱帯性気候の乾季。
湿度も高くなく、カラッと過ごしやすい昼下がり。桜のような花の季節が終わったタベブイアの葉が青々しい。
「クルージングには良好でございましょうが、、いえ、確かあちらは熱うございましたか?」
執務室にも菊や蘭が飾られ、薫りを綻ばせている。
「Maikelの港からコンテナで輸送しているらしい。ボトルシップ クルージングは1、2日だろう。向こうの移動は他のシップでする様だぞ。」
ケイの言葉に、側近は御意の礼をとりつつ、侍女が渡した書類に眉を上げた。
「経済技術省補佐官様が、1足早く出国され、あちらの民間企業と折衝に入られると、スケジュールを変更されました。」
(第4王子がどうやら先行行動か。)
「国王は今日はどう動く?」
「抜き打ちでの視察に出られておりますが、夕方に戻られます。」
国王には妃が4人。正妃に第1、2王子、王女2人。第1側妃に第3、4王子、王女。第2側妃に第5、6王子、王女2人第3側妃に第7、8、9王子、王女。全部で15人の子供達。親族を入れて王族で国の機関を司る。
「『ティカ』を、今回は連れて行く。王に承諾を。いけるか?」
『ティカ』は、『運命の鳥』。ケイにとっては花嫁の鳥だ。
これから、ケイが向かう国は国家式典が行われ、海外から賓客が集まり、規制されるはず。
「手続きいたしましょう。不思議なものですね、まるで渦のように かの国に 集まりつつあるようでございます。」
代々ロイヤルクマリを出す一族出身の側近が、含んでケイに啓示するのを聞く。
「お前、意地が悪い。楽しいか?」
ロイヤルクマリは 今なき王朝、国の命運を予言するマスターだ。ケイの国は治安が良い為か、多人種の移住がある。
「 I know it 。かまわん。今度こそ拾ってみせる華だ。」
ケイがそう言い放つと、相手はやれやれとポーズする。
「前回同様失敗の上に 不利益になる事態は、勘弁でございます。」
(本当に嫌味なヤツだ。それでも、こExcellentfriendsには頭が上がらないのだがな。)
黄昏時。
グラデーションに変わる空に照らされ、白亜の宮殿がオレンジ色に染まるの頃、全ての用意は側近に成され、ケイは最後の渡航に出る。
(その時コイツは 静かに笑みを湛えながらオレに 告げる、いつもの様に。)
「スラマット ジャラン。」とな。