~高校生刑事と高校生怪盗のリアルドロケイ~
Tokyo、春沼区
夜11:25分
『ついに来たか…』
ウォォオオオーン
一人の女の影が夜街の屋根を素早く飛び回っていた。
『逃すな!!!!!』
後ろからは数台のパトカー、そのサイレント音は夜街にうるさく反響している。
その影は、銃の様な物を出したかと思えば、そこからは長い吸盤の付いた丈夫な紐で、パトカーでも追いつけないくらいのスピードで夜街のビルを利用しながら移動していたった。
『すみません!!!!成田さん!!!!見逃しました!!!』
トランシーバーがガサガサとノイズ音をたてた。
その成田と呼ばれる若い刑事は、その都市の象徴となる大きな美術館にいた。
『周りを囲め!!!!気を許すな!!!!』
銃を持った全身真っ黒の警察官たちに、ショーケースの周りを囲ませた。成田の声は真とした美術館に響き渡った。このショーケースの中の為だけに、畑一個分くらいの広さの部屋が用意されているほど、この宝石は重要なのだ。どこぞの怪盗に盗まれてたまるものか。
広い広いガラスの天井と、赤色のリッチな扉を警察官たちは凝視した。
現場では緊張感と警戒心の空気が流れていた。
『パトカー班とヘリ班は見逃したらしい!!雄一外と面しているガラスの天井からくる可能性が高い!!!天井を警戒しろ!!!』
警察官たちが一斉に上を向いたその時だった。
『残念!!下でした~』
女の声が突如そこにいた者の耳に一斉に入った。その瞬間煙幕と催涙弾が投下された。
『クソっ!!!むやみに撃つな!!全員で覆いかぶさり捉えろ!!!』
警察官たちは次々とショーケースに覆いかぶさったが、煙幕の煙が薄れた時にはすでにショーケースの中身はどこかへ消えていた。
『車を出せ!!俺が追いかける!!』
<><><>
ヘリコプターとパトカーの音が先ほどの二倍程度うるさくなった。
女の影はやはり早く、ヘリコプターでもその姿を捉えられず、女を逃した。
一方女は、美術館から離れた暗い人目の付かない路地裏で一時休憩をとっていた。
『ふぅ』
その時、女の手が誰かに持ち上げられ、体を壁に押し付けられた。
『見つけましたよ』
『!?』
それはあのやっかいな刑事、成田だった。成田は手を掴んだまま顎を持ち上げた。若い刑事にして、色気だけは凄まじかった。
『ちょっ!!!何してっ///!!!』
成田は今だ!!と、勢い良く手錠を掛けた。
『逮捕!』
女は顔をしかめて
『この色男!!!!ばぁーか//!!』
と言い、手錠を手慣れた手つきで外して逃げた。
<><警察署><>
『クソッ……また逃げられた…!!あと少しだったのに!!!!!』
小さな灰色のオフィス机に顔を伏せながらうずくまっている刑事が一人。
その刑事は強く悔しそうな声で呻いた。
『あんな作戦…やりたくなかったんだけどな…』
『あのお色気作戦ですか?』
『うるさい!!!』
<><外><>
公園の公共トイレの裏に女が着地したかと思えば、すぐに一般人の服を着た女が出て来た。女はエレベーターを使わず、近くのマンションの3階に登った。
女は305の扉の前で立ち止まり、覗き穴を見つめた。するとそこから緑色のライトが出てきて、女の目をスキャンした。
「ガチャ」
女は中へ入っていくと懐から大きなダイアモンドを出して、二階へと繋がる床の扉を開けた。
女は階段を降りていったが、一つの壁にたどり着いた。
するとそこの壁が開き、食品を運ぶような小さなエレベーターの様なものが出てきた。
そこに先ほど取り出したダイアモンドを入れると、壁は元通りになった。
『18個目♪』
女は微笑んだ。
四年前。日本では少子高齢化が進み、経済の発達が危機的状況だった。
そのため、政府は義務教育を小学生までとし、高校という学校は行っても行かなくても就活にたいして支障がないことが当たり前となった。つまり、高校生は社会人ということになったのだ。
あまりない事例だが、高校と正職員を両立だってできるようになったのだ。
近年。この出来事のせいか、公立や市立などの高校はほとんど無くなってしまった。
だがまだ一学校、東京に生き残っていた学校があった。
私立花園高等学校
「キキィィ」
高等学校の門の前に一台の外車が止まった。
⦅ザワザワザワ⦆
『ありがとう。じゃあ行ってくるよ』
出てきた男の名は、
成田 春
俺は警察官と高校生を両立している超がつくほどエリートであり、その正義感の強い性格から先生や、生徒から慕われている。昨日は、奴を逃してしまったからか気持ちが重たい。
先生『あら、しゅんくんおはよう』
『おはようございます!』
このように先生と挨拶を交わすのが俺の日課だ。そしてこの後…事件が起こるのも俺の日っk…
『成田様!!!大変なんです!!!』
数人の女子生徒が俺の目の前に現れた。
『どうしたんだい!』
『アリスちゃんの指輪が…盗まれたんです!!!』
あぁ…あのボンボン社長娘のアリスか…あんな感じの性格だからどうせ無くしたことを盗まれたせいにしてるとかありそうだなぁ…
アリス『あぁ!!成田様ぁ♡アリスの指輪誰かに盗まれちゃってぇ…♡まぁ、将来成田様から貰えるからいいんですけどぉ…♡きやぁぁアリスったらぁ♡』
『はい…えっといつ盗まれたのかな?』
アリス『アリスがね、今日友達に自慢しようと思って30万の指輪を学校に持ってきたのぉ♡そしたらぁ今見たらどこにも無くてぇ♡』
『どこかに落としたとかない?』
アリス『その指輪オーダーメイドだからアリスの指ピッタリに作ってあるはずだよぉ♡だから簡単に抜け落ちないんだけどなぁ?♡』
嗚呼…本当にこの女は面倒くさい。さっきから腕にしがみついてくるし…。取りあえず周りにいた人とかに情報を…
その時だった。
俺の視界に指輪が映った。
誰かの手だった。俺はすかさずその手を持ち上げた。
「バッ」
『!?』
辺りが一気に騒がしくなる。
俺はその手を再び確認した。
だが
もう指輪はそこにはなかった。
『えっ…今確かに手の中に…』
『あの…なんです?』
顔をよく見ると、同学年の女だった。妙だが、こいつの匂いはか嗅いだことがあるような気がする…
『すみません…人違いでした。』
女はそっと微笑んだ。
『いえ』
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