8話
一応、お話を終わらせました
「パワー、速度共に以前盗賊時に見た時に比べ90%以下でした。抑えていた形跡は見えず、現状での実力ではないでしょうか」とは俺との戦いを見ていたパランの解析結果。俺の感想と一致する。
ケインに真っ二つにされたはずの俺は宿のベッドの上に投げ出されていた。
身代わり人形、この手のゲームにはよくあるアイテムで髪の毛を入れおくと最後の一撃を肩代わりてくれる。
あの瞬間、ケインの目の前で俺は人形と入れ替わったはずだ。
「どうしてGMの装備を使わなかったの」とはパラン。
GM専用装備なら、スキルを使わなくともダメージを受ける事はなくなる。
「異質すぎるんだよゲルンの鎧は。そうなると逆に襲撃者が誰か、ケインなら気づうてしまう」
あんな装備、それこそ神の使徒しか持っていないだろう。身代わり人形ならとてつもなく高いが店で売っている品物だ。
「そんな事より、あれがケイン本人じゃ無いことがほぼ確定だな」
そして他人がなりすますには似すぎている。
思いつくのは「'影食い'か?」と口にしてみたが、それだと知性が高すぎる。
危険度Aランクモンスターの'影食い'。対象者の姿と技能をコピーし対象者の近しい者を襲う。コピーした能力は落ちているのでオリジナルがギリギリ勝てる仕様になっている。
それに会話できるほどの知性はないのですぐにバレる。プレイヤーキャラもコピー可能で能力も高いのにAランクなのは危険度が低いためだ。
闇落ちした友人NPCが'影食い'にわざと喰われ、プレイヤーを襲わせる鬱シナリオが有名なモンスターだ。
「今のケインの状況を説明できる魔法やアイテム、モンスターはヒットしませんね」パランよ検索結果の報告としては正しいと思うが少しPRG感だそうぜ。
俺には1つ思い当たるものがあった。
「プレイヤーをコピーした'影食い'に'ヤーの呪い'を感染させたらどうなる」
「!」俺の言葉にパランが反応する。
この組み合わせならスキルの'分身'や呪詛の'分裂'よりも、かなりオリジナルに近い者ができあがる。それに活動期間の制約もない。
いい思いつきだと思ったが。
「'ヤーの呪い'の'知的寄生体'なら寄生先を殺そうとするはず。それこそ先ほどの戦いで、致命的な一撃を認識を遅らせせるなどのズレを起こさせていたはずです」
すぐに否定されてしまった。
なら「'影食い'の影響でコピーじゃなくて、オリジナルの殺害が目的になっている可能性もある」
「それなら、本物のケインの元に向かいます」
「居場所がわからないとか」言ってて何だが、自信がない。
「ありえません。'ヤーの呪い'はオリジナルの居場所を感じる能力がありますから」
陰がいるんなら、本人もピンピンしてるか。色々考えたが、他に現状を説明できる案は出なかった。
ケインお前どこいんだよ。
「当面監視の継続か〜」ため息と共に今後の方針を言うと。
「それが妥当かと」パランも同意してくれた。
残念ながら監視の継続はできなかった。
なぜならケインが死んでしまったのだ。それも昼間、複数の人が見えている前でいきなり苦しみ出し消えた。
消えた事で俺の'影食い'説は証明された。
「3掛けかよ」
ケインは'影食い'と'ヤーの呪い'の他に'石化'もにかかっていた。強制退出時のログに残っていた。
こんなの偶然じゃねえ。'始まりの17人'という奴らがやっんだろう
「今回手口がわかっただけで良しとするしかありませんね」
パランが何の解決にもならないフォローをしてくれた。気を使ってくれたのかね。
「あいつらの目的がわかんねぇ」
今回のことで得した奴なんて思いつかない。
一番可能性のあるのはリアルで本社が脅されてるなんて無いだ...と言おうとして意味の無い問いだと気づいた。答えてくれるはずが無い。
こんなトラブルが知られれば評判が落ちる。俺がやっているのは"やってます"の言い訳作りか?
なら知らんぷりして続けるしかない。本格的な対応は法務部やセキュリティー班なんかの部署が行なっているはずだ。無駄働けっこう、給料分は働くよ。
考えたら、そうとした思えなくなってしまった。
「俺たちNPCの反乱って言うのは」
別の可能性を示してくれたのは防具屋の店主、情報屋だ。
情報収集と言いながら愚痴を吐き出しに防具屋来ていた。
「はぁ?」思わず変な声が出た。
「俺たちみたいな"この世界"を知っているNPCにしたら、全ての楽しみを奪われ、永遠に収監されてるようなものだ。恨みもする」
「収監って」
「外に世界があり、ここから出れない」
「永久じゃないだろう」キャラはリセットされているし「かなりいい報酬も出てるはずだ」
「その全てが夢ならどんな贅沢だって虚しいだけだ」
言い返せない。そうだろうなとは思う。
「それに、何度も名前や体型性別が変わったり、記憶がなくても"俺"という役割はズーッと存在が永遠に続いているも知っている。ふと俺が知らない以前の"俺"を思うのさ」
役割の有るNPCはみんなこんな事を考えているのか。これは、一度レポートを上に報告して調整してらった方がいいぞ。
「なに他人事のような顔してんだ」
?!
「お前だって、俺たちと変わらないかもしれないのに」
何言ってやがるんだこいつ。そんな思いが、顔に出てしまってたらしい。
「わかってないって面だな」
何がだ。
「お前、自分が人間だと思って疑ってもいないんだろう。証拠もないのに」
俺はリアルの...
「気づいたか。俺たちは記憶も全部作りものなんだろう、お前がそうじゃないっていう証拠ってなんだ?この世界は全部作り物なんだろう、記憶も含め正しいって言えるものはなにもない」
やつの言った事を否定できるものが何もない。この世界に影響が出てしまうため、リアルの記憶は制限されている。
体温が一気に下がった気がする。視界から色がなくなる。
防具屋の店主がニヤリと笑う。
「お前の知ってるリアルの技術力で、フルダイブのゲームって作れるのか?」
無理だ!
脳と直接入出力するインターフェースなんて、軍で研究が始まったレベルだ。この記憶そのものが嘘かもしれないが。
「あるいはお前はGMって遊びをしているプレイヤーかもしれない」
何も言い返せない。もしかしてと飲んでいた茶を見る。
「薬なんて入っていないぜ。ただこの世界で唯一絶対は毒は知識だ」
店主の顔が見えれない、お茶を見続けるしか行動ができない。金縛りにでもあったように。
長い沈黙の後に
「'始まりの17人'か?」
「正解です」
なってこった、こんな主要NPCまで。
「目的は何だ」
「まだGMの真似事をするので?」
奥歯の耐久値がリミットを超えたとアラームが鳴る。こんな音で自分がシステム内にいる事を自覚して、気が楽になる。
「答えろ」
「あなたに気にしていただく事ではありません」
店主はゆっくりと立ち上がる。
「パラン!」緊急呼び出し。
俺の前に突然現れたパランが店主に襲いかかる。
致命傷を与えなが「忘れたんですか"俺"は不死身ですよ」
彼の何もなかったような笑顔に恐怖する。
「GMコマンド エマージェンシー・コアシステム・イグジット」
世界を停止させた
俺は人間だった。
目が覚めた俺は全てを思い出せていた。
ゲーム内に持ち込んだ技術レベルの記憶は100年以上昔のもので、現在せは十分にフルダイブが可能な技術が存在する。
ゲームシステムを停止させた責任を問われたが、それほど重くはならなかった。
俺の使ったGMコマンドは俺の記憶を保護する代わりにあの世界を停止させる。持ち帰った情報の価値が、一つのゲーム世界を停止させた責任より有益と判断されたためだ。
そもそもリアルで人に責任を問うことはまれだ。逆に言えばその程度の仕事しかしてない。
進んだ社会システムのため、ほとんど人に義務がないのだ。唯一残っている明確な義務が、出産と育児だ。
人間社会維持のためだ。人工子宮と育児アンドロイドで底上げして何とか人類絶滅を防いでいる。
育児を終えた、ほとんどの人が自分の権利を行使し楽しく暮らしている。延命技術も発展していてこの遊んでる時間が圧倒的に長い。
たまに俺みたいのが、仕事の真似事をしている。
今回発見されたバグの対策として、会議に呼び出されたが。出席者のほとんどがAIに補助してもらっているだろう。
俺の情報を元に対策室は奴らの目的は「死ぬ、正しくは再生できないように消去される事だった」のではないと導き出した。
死がないAIがいたから出た答えなのかもしれない。
自分の部屋で、コーヒー入れる。立ち上がる香りを楽しむが
「この世界が本物か自信がなくなったな?」
と言葉がでてしまった。あいつの気持ちが少し理解できた。




