表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

さん

 わたしはイベントを側ではなく遠目で見たいので、フォックス殿下とのお茶の席にアルデェリアが現れたら「あ、わたし、用事を思い出しましたわ」と去ることにした。


 そうすれば、フォックス殿下とアルディリアにわたしという邪魔者がいない。まぁ近くに護衛はいますが、基本は2人きりなので、運ばれた苺のケーキを仲良く食べ合いっこするに違いない。


 我ながら、いいアイデアを思いつきました。

 さて、テラスへお茶に行きましょうか。


 

 

 ❀




 数分後。フフ、やりましたわ。

 わたし、計画を実行しましたわ。

 

 アルディリアさんが見てたすぐ「用事を思い出しましたわ」と、そそくさその場を離れて。テラスが見渡せる木の枝に座り、2人を見守っている。


「ラビットお嬢様、そんなところに乗って落ちないでくださいよ」

 

「そうにゃ、気をつけるにゃ」

「はいはい、わかっていますわ」

 

 わたしが座る木の下で、わたしの行動に呆れながらも、枝から落ちないか、お茶をしながら見守ってくれている。

 

「その、クマさんクッキー可愛い! 美味しそう。アル、わたしにもそのクッキーください」


「はい、はい」

 

 アルが焼いたクマさんのクッキーを渡され、テラスを見ながらサクサク食べ始める。ほのかに甘く、サクサクしたいてわたし好み。


「この、クマさんクッキー美味しいわ! アルったら、またクッキー作りの腕を上げたわね!」

 

「そうですか? お嬢様からの、お褒めの言葉なによりです。紅茶がはいりましたよ」


「ありがとう、いただきます」

 

 木の上でお茶をしながら、わたしはテラスの2人を眺める。


「テラスにケーキが運ばれたわ。もうすぐ、ケーキの食べさせあいが始まるはず……」


 って、あれ?


 そのテラスから、フォックス殿下の姿が消えましたけど。アルデェリアもいきなりの事で、フォックス殿下の側近に話しかけた。


「あれ? フォックス殿下はどこにいったの?」

「ここだよ、ラビット」


 背後から、嗅ぎ慣れた柑橘系の香りと。

 長い腕が、わたしを厚い胸板に抱き寄せた。


「ふぉ? フォックス殿下⁉︎」


「はぁ……ラビットは酷いなぁ。用事があると言って、お茶の席に僕を1人置いて行ったくせに。こんなところで側近のアルと、ルフ様とで仲良くお茶をしているなんて、妬ける」


 拗ねた声と、フォックス殿下の温かい体温を背中に感じた。とても嬉しい事けど、フォックス殿下は悪役令嬢のわたしといては……


「ダメです! フォックス殿下、離れてください」

「嫌だね。あ、ラビットの頬にクッキーのカケラがついてる」


 後ろからフォックス殿下に、チュッと頬にキスされた。

 

「ひゃっ、フォックス殿下⁉︎」

 

「やっぱり、いまのキスでラビットの甘い香りが濃くなった――いいな、ラビットの甘い香りは僕好みだ」


「フォックス殿下の好みの香り!」

 

 嬉しいけど恥ずかしくて「離して!」と、彼の腕の中で暴れても離してもらえない……暴れたぶんだけ、彼の腕の力が強くなった。

   

「ラビット、さっきは逃したけど。今度は逃さないよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ