第四妻 リアル鬼ごっこ
その人物は俺の嫁の1人にそっくりである式守千夏だった。そしていきなり
「あんた、中野先輩と付き合ってるの?」と聞いてきた。
クラスが一瞬ざわついた。みんな殺意を向けるだけで実際に聞きはしなかったが式守は聞いたのだ。そして教室がシンとし全員が聞き耳を立てている。
「な、中野先輩はし、知り合いだよ…」
俺は悠二に言ったことと同じ言葉を使った。
「知り合いならご飯食べようなんて誘わないでしょ」
「中野先輩は全然そういう感じだと思うよ」
これまた悠二に返した言葉と同じ。しかし他のクラスメートから事実が告げられた。
「え、でも中野先輩同じ部活だけど仲が良くない人とはあんまり関わらない感じだよ。知り合いのレベルじゃ誘われないよ」
悠二が般若から進化した。このままだと俺を殺す怨霊になりそうだ。
というか中野先輩そんな感じなのか。てっきり色んな人と仲がいいのかと…ワンチャンある?
もはや現実逃避と言えることを考えていると追撃が来た。
「結局どういう関係なのよ」
くそっ、どうする…俺は数秒考えた。
打つ手なしだな!
俺は何もできないと考えると急いで走った。
「あ、お前待てこら!」
クラスの男子が一斉に追いかけてくる。先頭は般若から進化した悠二だ。
お前確か50m8秒台だったよな!?
トイレだ!急いでトイレに駆け込むんだ!
トイレまで残り20m!走れー!!
トイレの中に入りドアを閉めた!!
「っしゃーー!」
逃走成功!
「ドンドンドンドン」
「や、やべぇ!」
トイレはドアを閉めれば安全、だが裏を返せば袋小路なのだ。ここから出た瞬間死が待っているだろう。てかその前にドアが壊れる。く、くそ。誰か召喚するか!
スマホを開きLINEを確認するが家族と中野先輩しか入っていない。
くそ!使えねぇな。このスマホ!!
「ドンドンドンドン」
今にも壊れそうなドアがある。
「しーんーいーちー」
上から声が聞こえ見てみると悠二が登ってきていた。
「あーそーぼー」
「ぎ、ぎゃーーーー!!」
「な、なんだ!何があった!?」
担任の声が聞こえた。
「おい!お前ら何をしている!」
「バキン」
生徒が叩いたり、寄っかかったりしたためドアが外れた。
「「「「「あ」」」」」
放課後
「はぁ〜〜〜〜」
この騒動は学年主任である担任の田中先生によって止められた。この事件はのちに『スリーピー、第一の事件』と呼ばれることになる。
そしてクラスの男子は全員、反省文を書かされることとなった。
なぜ、俺も!?俺は被害者なんだが!?
そんなことを学年主任に言えるわけもなく黙々と反省文を書いた。俺は他のやつらが終わる前に急いで終わらせ先に帰った。
そして昇降口に向かうと
「新一くん、大丈夫?何かあった?」
事件の発端である中野先輩が登場した。
「え、えぇ少し(クラスメートが)やらかしまして」
「そっか。新一くん問題を起こすタイプには見えないのに」
「そうですね。反省文はこれが人生初です。」
「やっぱりね。私の目は誤魔化せないよ♪」
その大きな瞳を指差しながらそう言った。
「ぐはっ!!」
俺は膝から崩れ落ちた。
「え、え、どうしたの!?大丈夫!?ほ、保健室に連れてかなきゃ!」
「い、いえ大丈夫です」
「ほ、ほんとに?」
「は、はい」
「大丈夫ならいいんだけど、無理しないでね」
その優しさが心に沁みます…。具合が悪いわけではなく、実際は完全にエマがリアルに出てきたように見えたからだ。
妻がリアルに出てくることがあっていいのだろうか!
そんな的外れなことを思いながら立った。
「はっ!」
「今度はどうしたの?」
俺に視線(殺意)が集まり始めている。どうやらクラスメートも反省文が終わったらしい。下駄箱に隠れていた。今回は中野先輩がいるため大人しくしている。
「じゃ、じゃあまた会いましょう」
「あ、ちょっと待って、明日のお出かけなんだけどさ」
終わった…。