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憎しみはなくならない

______僕は愛が嫌いだ


僕には与えられなかったもの

僕が必死に求め縋りつこうとしたもの

周りにあふれかえっているもの

それが僕は嫌いだ


生まれたころから順調なんて文字はなかった、親や兄に殴られ同級生からはいじめられ先生からも無視された

僕を愛してくれているものは誰もいなかった

部屋の隅で一日が終わるのを待っている僕を

「兄を見習え」そんな言葉聞き飽きた

僕には一切向けられない愛を兄は一身に受けた

僕は家族が嫌いだ

僕は人間が嫌いだ


そんな僕にも好きな人ができた

あの煩わしい太陽が調子に乗り始める夏

ごみ溜め場のような高校に一人の転校生が来た

ここには似つかわしくないほどに美しく聡明だった

しかしゴミ箱の中では宝石の光など何の役にも立たない

彼女の学力や作法の良さはここでは評価されなかった

周りの生徒からいじめられ先生も生徒との軋轢を恐れそれを止めなかった

彼女の味方をするものはここにはいなかった

僕を除いて


嬉しかったのだ

初めて見る自分と同等かそれ以下の奴

彼女を眺めるほどに僕は人生で初めての優越感を得た

そして彼女に話しかけたのだ

彼女と話せば自分は上に立てる


そうではなかった

彼女は僕と同じだった

家族との仲は良好ではなく

それは兄弟との扱いの差によるものだったのだ

それを知った後の僕に彼女を蔑むほどの度胸はなかった

自分と同じ境遇にいる

それだけで彼女を好きになった

僕は彼女を連れて色々な所へ行ったりした

彼女は僕だけを見てくれた

僕は彼女に僕だけを見てもらえるように必死に努力した


夜が太陽を足蹴にして置いていく冬になった

クリスマスも彼女と過ごした

お正月も家族は僕を置いて初詣に行き僕は彼女と初詣に行った

こうして月日を重ねるごとに僕は彼女を愛していった

僕は愛が愛しく感じた

こんなにも素晴らしいものだったのかと

こんな日が続くと思ってた


そんなことはなかった

また新たな犠牲者と加害者が生まれる春だった

彼女はいなくなった

転校だ

学校側に話してそのことは誰にも伝えられなかった

彼女の口からも

僕に届くことはなかった


彼女を失った虚無 もう彼女と会えない悲しみ そして黙っていなくなった彼女への憎しみ

これらの感情は僕を取り巻きはなれなかった

別に知らない誰かがここからいなくなるのであれば僕は何も思わない

だが彼女は違う

僕は彼女を 愛 していたのだ

まただ

愛はまた僕を苦しめるのだ


______僕は愛が嫌いだ

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