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散策

 アヤカシ界に居る時間が限られているのなら帰るまでに

できるだけ多くのアヤカシに会っておきたい。

 先程の事を考えると望みは薄いが村の中を歩き回ってみるが、案の定誰の姿も見かけない。


 (どうやったら会えるんだろう……。アヤカシ界だから

そこらじゅうに居るのかと思ってた。

 でも諦める訳にはっ!)


 「ね~ね~、おねえちゃん、なにしてるの?」


 「うわあっ⁉」


 背後から声をかけられて飛び上がる。たった今まで気配

なんて感じなかったからだ。

 おそるおそる振り向くとおかっぱ頭の男女の童子が

不安そうに私を見つめていた。


 「おどろかせちゃった。ごめんなさい」


 「いや、大丈夫……。もしかして君達は座敷童子?」


 途端に二人の顔が一気に明るくなった。

嬉しかったようだ。


 「そうだよ。ぼくたち、ざしきわらし」


 「おねえちゃん、すごい!」


 「あ、ありがとう……。二人は仲良しなんだね」


 そう言うと彼等は顔を見合わせて、いたずらっぽい笑顔を作る。


 「ぼくたち、きょうだいなんだよ」


 「兄妹⁉」


 驚いて声を上げると二人はしっかりと首を縦に振った。

 座敷童子はたいてい一人だからだ。


 「うん。わたしがスエ。でこっちがショウ」


 「スエちゃんとショウ君だね。私は優和」


 私が名前を言うと二人はニ、三回呟いてから目を輝かせた

 

 「ユウカおねえちゃん、おにいちゃんたちにも

あって~」


 「お兄さんが居るの⁉」


 「うん!」 


 二人は大きく頷いてそれぞれ私の手を握ると引っ張って

いく。振り払えない力ではないが、他にアヤカシはいない

ようだし彼等の提案にのることにした。

 しばらく引っ張られて行くと一軒家に辿り着いた。

家の造りは今まで見てきた民家と同じだがこちらの方が

一回り大きい。


 「おにいちゃん、おきゃくさん~~」


 ショウ君が叫ぶと家の奥から慌ただしい足音が聞こえてきて。ギザギザ頭の童子が姿を現した。


 「ふたりとも、おかえり!

それでおきゃくさん……にんげん⁉」


 「あ、初めまして。優和と言います」


 「しつれいしました。にんげんをみるのはひさしぶりだったので……。

 おれはダイといいます。いもうとたちがおせわに

なりました」


 座敷童子とは思えない丁寧な口調に開いた口が塞がらない。兄妹とはいえこんなにも違うものなのか。


 「ダイおにいちゃん、わたしたちがつれてきたんだよ。

なにもめいわくかけてないよ!」

 

 「いや、つれてきたって……。ユウカさんのいけんは

きいたのか?」


 「きいてない。でもユウカおねえちゃんたいくつそう

だったから……」


 ショウ君が今にも泣きそうな表情で答える。

 私は他のアヤカシ達にも会えないか考えていただけだったのだが、この子達には退屈そうに見えたようだ。


 「私もどうしようか困っていた所だったので二人に会えて良かったです。全然迷惑じゃないですよ」


 「ですが……」


 「まあー、めずらしいおきゃくさんー」


 私達の声を聞きつけたのかさらに前髪をセンター分けにした一人の女童子がやって来た。この童子も兄妹なのだろう。


 「あ、チュウ!」


 「こんにちはー、にんげんさん。はじめましてー

わたしはチュウといいますー」


 ダイ君の呼びかけを流して彼女は私を見ながら

のんびりと自己紹介をした。またもや座敷童子のイメージと違うため戸惑ってしまう。


 「わ、私は優和です。よろしくお願いします」


 「はいー、よろしくおねがいしますねー」


 「えっとチュウ……ちゃんも兄妹ですか?」


 「はいー。うえからにばんめですよー。

ちなみにショウくんがさんばんめ、スエちゃんがよんばんめですー」


 言い終わると彼女がニッコリと微笑む。

同時に私はあることに気づいた。


 (この子達の名前、おみくじだ。という事はあと一人いる

はず……)


 「あの、もしかしてあと一人兄妹がいませんか?」


 私の言葉に座敷童子達は大きく目を開いた。そして最初にダイ君が口を開く。


 「すばらしい、どうさつりょくですね。そのとおりです」


 「はいー。かんどうしましたー」


 「キョウってなまえなんだよ!」


 「キョウ君……」


 不意にチュウちゃんは不思議そうに首を傾げるとダイ君の方を向いた。


 「ダイおにいちゃんー、むりして、ていねいに

はなさなくて、よいとおもいますよー」

 

 「え、無理してたの⁉」


 思わずダイ君を見るときまりが悪そうに顔をそらす。


 「……つい……」


 「私は話し方とか気にしないから大丈夫だよ」


 「そ、そうですか?……なら」


 そう言って彼は深呼吸をするとキリッとした表情で

口を開いた。


 「あらためて、オレはダイ。

よろしく、ユウカおねえさん!」


 「よ、よろしく……?」


 (あ、熱血系かな?)


 長男らしいと言えばそうなのかもしれないが

最初の印象と全く違うためリアクションに困った。

 

 (でも、みんな個性があっていいな)


 「たっているのも、なんですから、おちゃでも

いかがですかー?」


 「ぜひ、いただきます!」


 さっそく縁側に座って、出されたお茶を飲む。

急須で入れている様子から茶葉から出しているようだが、

甘味と苦味が混ざっていて不思議な味だ。


 (飲めない味じゃないからいいか……)


 座敷童子達とはすぐに仲良くなった。中でもショウ君と

スエちゃんが私から離れようとしない。

 話を聞けば最初はみんな同じ髪型だったが「誰が誰なのか分からない」という意見が多かったため変えたそうだ。

 

 (弟や妹が出来たみたい)


 一人っ子なので新鮮な気分だ。たぶんアヤカシ界に

来てなければ味わえなかっただろう。

 いつまでに帰ってくるよう言われた訳ではなかったが、

けっこうな時間ここに居ると思うのでヒョウカさん達を心配させてしまっているのではないかと不安になってきた。


 「そろそろ戻ろうかな」


 「じゃあわたしおくってくるー!」


 「ぼくもいくー!」


 スエちゃんとショウ君が元気よく手を挙げる。それを見たダイ君が困ったように眉を下げた。


 「ふたりもいかなくて、だいじょうぶだろ。

いちばんはスエだったから、ショウはまたこんどな」


 「えぇー!」


 「また近い内に遊びに来るから!その時送ってね」


 「わかった……。またあそびにきてね!ぜったいだよ!」


 ショウ君は少し頬を膨らませたまま納得してくれた。

ダイ君もその様子を見て安心したように微笑む。

 それに対して私は複雑な気分だった。スエちゃん達に

すぐに帰ることは話していないからだ。


 (これが最初で最後かもしれないけど)


 「じゃあスエ、たのんだぞ」


 「うん!いってきま~す!」


 「お、お邪魔しましたっ!」


 最初と同じようにスエちゃんが私の手を握って引っ張っていく。

私はなんとかお礼を言うと彼女に足取りを合わせた。

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