ことばのありか
「暦に書いておいて」
父が口にしたとき、私は思わず「暦って現代じゃ言わないよね」と笑ってしまった。
父は「別に意識してないからなぁ」と笑い、母は「お母さんは言わないね」と笑った。
「九時っから」
母が口にしたとき、私は「九時っからね」と繰り返して笑った。
それは母方の祖母の言い方だったから。「『ちっと』も言ってたよね」と、懐かしく思い出すのだった。
「小豆色の」
私が口にしたとき、父が「小豆色? 意外だなぁ」と笑った。
たしかに、いつもならワイン色とかえんじとでも言うところ、あまり使わない表現だった。
ことばは、私たちの深いところにたまっていて、ふとしたときに出てくる・出あえる、そんなものなのかもしれない。