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9.命が惜しいなら従いなさい

「いやはや。中身はともかく、この世界の容姿基準が恐ろしいわ」


豪華なお屋敷の中を案内され、とある一室にいた横たわる成人男性、ランクル君のお兄さんを見下ろしなが奏は違う意味で感心していた。


ランクル君の兄、ラインさんは、病んでるとはいえ目も閉じたままなのにスケッチしたくなるような整い具合である。


「悠長な事を仰っている場合ではなさそうですが」


ギュナイルが背後から控えめにベッド上の病人を観察しながらチロリと私を見下ろした。


『あなた、実はお馬鹿なんですか?』


そんな声なき声が聞こえてきた。


兄貴の家にいるツンのロシアンブルーの猫がギュナイルと一瞬ダブりイラッとする。


「ちょっと」

「? 何をっ」


パッカン


チョップをギュナイルにくらわす。あー、イケメンは頭の形も綺麗だわと再びモヤっとするも、誰かの咳払いでぐっとニ発目は抑えた。


今はこれで勘弁してやろうじゃないか。とりあえず諦めて端にいるランクル君に目を向けた。


「ランクル君、一つだけ質問」

「はい」

「お兄さんは、ライバル多い?」

「ライバルとは」

「んー、敵って事」


たまに通じない言葉は、カタカナが多いなと最近気づいた私。いや、会話も引きこもり中はあまりしていないしな。


「心当たりがありそうね」


ランクル君の渋面の様子で納得。


「わかった。じゃあ、この屋敷にいる人を全員一部屋に集めて。必ず一人残らずね」

「危険が広範囲に渡るという事ですか?」


ランクル君の言葉は背後にいる執事さんや困惑のメイドさんの代弁だろう。


「わからない」

「ならば」

「でも、死にたくないでしょう?」


ランクル君の言葉を遮った。そしてギュナイルを含め室内にいる人の目を一人ひとり見た。


「信じる信じないは、貴方がた次第。どうする?」


私は、まだ人生を終わらす気はさらさらないけどね。




*〜*〜*



「はい、これでよし」

「そんな簡単でよいのですね」

「そう?」


簡素がいいのよ何事もと返事をしながら皆が入った扉に札をはる。


働いている屋敷の皆さんは、特に反発もなく従ってくれたのでホールに閉じ込め。いや、自宅にホールってないわよね。まあ、お陰で一箇所で済んだけどさ。


「さて、貴方がたは──閉じこもる気はなさそうね」


ランクル君とギュナイルは、見学を希望らしい。


「しょうがないなぁ。よっと」


キュポンとコルク栓を抜き指に付け床に指を走らせ二人の周囲を囲む。


「この香りは……酒ですか?」

「正解。部屋にいてもいいから、そこから絶対に出ないでね」


話しながら自分の周囲も囲み、二人に約束させる。


「これから、何かあっても言葉を発しない。またラインさんに何か起こっても同じ」


私にさせると許可したのだから、邪魔はしないで欲しい。なによりも。


「私、死にたいのかと言ったわよね?」


二度はない。返事がないけれど進める事にし、彼の身体全体に持参した塩を振りまいた。背後で反応する気配があるが目で威圧し、つづけていくと。


「や…やめろ」


ベッド上のイケメンは顔を左右に振り始め、身体も動きに連動したかのようにブルブルと震えてきた。


「いや良い感じじゃないの。さー!出てきなさいよ!」


舌なめずりしながら笑みを浮かべた奏に彼女の背後にいるランクルとギュナイルには彼女の顔は見えないはずなのに彼らは寒気を感じた。


──この禍々しい気配の方は、聖女なのか?


二人の心の声が見事に一致していたのを声高々に笑う奏は知らない。







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