5.花婿(仮)は、①でも②でも③でもない
「お忙しいなかありがとうございます」
心にもない事をすらすら言える自分は随分汚れてきたなと、しみじみ感じる。
「呼ばれたのは構わないが手短に願いたい」
花婿候補③の自称騎士団の団長殿の発言に私は、そう思ってる!私が一番ね!迷惑してんのは、私だわよ。と睨みつつ口角を上げる。しかし男三人、メイドさん一名と誰のか不明だが扉に警備二名。
予想よりもかなりの窮屈さを感じる室内になってしまった。だが、ここで移動とか面倒くさいしな。
「えー、メンバー的にもうわかってらっしゃると思いますが、私の花婿候補の方々に集まってもらったわけですが」
ここ大事だから三人がちゃんと聞いているのを再度確認し口をひらいた。
「申し訳ないのですが、皆さんと将来を共にする事はありません」
あら、三人共無表情…じゃなくて微かに笑みを浮かべている。まだ文句を言ってくれたほうが楽なんだけど。こんな地味な女はいらないねとかさ。
「そう言われると呼ばれた時点で分かってはいましたが」
異世界とやらで一対三は不利か。
魔術師の笑いが不気味だ。
「でも、陛下は手強いよ。あの人は一度決めたら覆さないからねぇ」
父親をあの人呼ばわりもどうかと思うがな。
「でしょうね。偉い方が簡単に意見を変えていたら国は安定しないだろうし」
なんか本格的に面倒くさい。どうするかなと開け放たれている窓からみえる嫌味なくらいな青空を眺めながらお茶をすする。
ふと、強くはないが、視線を感じ顔は向けず目だけ動かせば。
──とりあえず、コレでいいんじゃない。
「聖女殿?」
「他の方々にも散々伝えたけど、高宮と呼んで下さいね」
騎士団長に次はないからと圧をかけつつ、私はカップをソーサに置くと歩き出し、遠くない目的地で止まり見上げた。
「私の、花婿(仮)になって貰える?」
「お断り致します」
「じゃ、命令にするわ。貴方を指名します」
流石に無表情とはいかなかったのか、生意気にも騎士は睨みつけてきた。
うん。ご機嫌とりのメンバーよりずっといいわ。
私は、今日初めて、無愛想な騎士により無理せず自然な笑みがでた。