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4.花婿候補②王子の髭は受けつけない

「はぁー」


閉めた扉に思わず寄りかかってしまった。


「随分お疲れのご様子ですね」


ここ迄案内してもらったギュナイルとは違う声にのろのろと顔を上げれば、渋いイケメンが立っていた。


「今日の案内兼護衛はギュナイルさんと言われたのですが」


どうでもいいけど。


「ギュナイルは、呼び出しを受けたので私ではご不満に思われるかもしれませんが、引き続き城内などをご案内を致しますよ」

「お城の見学は充分です。それより部屋に戻りたいのですが。えーと殿下?」


勝手に選抜された候補②だが、名前を覚えていない。ただ、この国の王子様というのは記憶しているし記憶がなくても、この存在感は只者ではないと分かるだろう。


「ジルとお呼び下さい」


それ、愛称というやつでしょ。絶対呼んじゃいけないやつだ。だが、ヒントをくれたので思い出した。


「ジルヴェール殿下」

「てっきり記憶に残っていないと思ってたんだけどな」


首を傾げながらの仕草もなんだか分からないが優雅に見えるから恐ろしい。


「じゃあ、初日からご機嫌を損ねたくないので戻りましょうか。聖女殿」

「タカミヤです」


どいつもこいつも気持ち悪い呼び方は止めて欲しい。


「では、私の事もジルと」

「ジルヴェール殿下としか呼びたくないです」


嫌味のない笑顔に三十代ぐらいの落ち着いた大人の色気というのか。濃い金髪の髪を後ろに流し、短く整えられた髭も汚らしさはないが、私は、髭は好きじゃない。


まあ、好みの問題だ。


「私の容姿は合格ですか?」


彼は、面白そうに私を見た。私が彼を眺めていたように彼も私を観察していたのだろう。なんとなく視線が合わないようにしていたので、今、彼の瞳が綺麗な青空だと気がついた。


「聖女殿?」

「合格もなにも私は、その気はないんです。ただ、私の好みでいえば髭は好きじゃない。でも殿下の瞳は冬の空みたいで好きですよ。えっ?」


普通に自分の好みや感想を述べただけなのに、つい先程経験した事をされた。


「そんな事を言われると、おじさん、本気になっちゃうかも」


視線を固定したまま手の甲にさらっとキスをされた。


「……そんなに聖女という力は魅力的なんですかね」


私だったら、よく知りもしない相手に跪いてキスとか不可能だ。


「うーん。確かに国に留まってくれたら嬉しいけど。私は、個人的に気になったからかな」


価値観というか環境の違いだろうか。


「あ、もしかして既に気になる者が他にもいる? 聞いているかもしれないけれど、この国では二人まで夫をもつ事が可能だよ」


今知ったわよ。というか知りたくなかった。彼のいい笑顔は目眩がしてくる。


「だから」


止めてくれと言おうとした時、悪寒がし、風呂敷に包み斜めに掛けていた弓を取り出し構えた。


「凄いね。距離は遠いはず」

「分かるの?」


このゾワゾワした感覚を共感できる人がいるのかと、つい話しかけてしまった。


「微かな気配のみだけどね。城付近だったらもう少し察知出来るかな」


私は、既に見えない的へと狙いを定め解き放った。


「飛翔距離といい、異常だな」


激しくその意見に同感だ。


暫くして頭の中に響く声と全身の悪寒は嘘のように消え失せた。


「私は、此処に来る前は一般市民だったんだけどなぁ」


弦や矢を作り出す能力なんてなかった。ばぁちゃんが変わり者だったせいか、その血をひいているのは自覚していた。


だけど、他の点で言えばちょっとガサツな何処にでもいる人間だったはず。どんよりした私とは対象的な王子様の明るい顔ったらない。


「いいねぇ。君の力は魅力的だ。勿論君自身も」


私より能力重視ね。まあ王族なら当然か。


言いたい事は多々あるが、この場での発言はしない。だが花婿候補②王子もパスだと奏は思った。


なにより髭は嫌なのよ。


「王子様権限で、私のあと一人の花婿候補を呼んでもらえます? ついでに用事を済ませた後のギュナイルさんも捕まえて欲しいんですけど」


この際、はっきりさせようじゃないか。




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