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18.イケメンは、炬燵が似合わない

「まあ、いいや。とりあえずメリークリスマス!」

「「メリークリスマス…?」」


土足の男達を怒鳴りつけ、ついでにバスルームに放り込みその間に再び重い足を動かしコンビニへ行き食料その他もろもろを調達して今に至る。


「その言葉はどのような意味でしょうか?」

「まー他の国のお祝いの合言葉みたいなもんよ」


調べる元気もまして大まかにすら説明する気もおきないので適当に流す。


「その格好からするにパーティーかなんかだったんじゃないの? 豪華な食事がたんまり食べられるじゃない」


炬燵に入った二人は、行儀よくかついいスピードでパックのオードブルを食べている。


「夜会は食事の場ではないですから」

「ふーん」


陰謀渦巻く場所って事か。ギュナイルの言葉は嘘でないようで、心なしか二人はゲンナリした顔だ。


ハンガーに掛けたローブと軍服は、記憶していたより豪華な刺繍がされている。ふとローブの襟近くに目がいった。


綺麗な色だな。


「気になりますか? どうぞ」


返事をするまえにギュナイルがローブから外し手にのせてくれた。


「なんだっけ。確かラブラドライトって名前の石かな」

「我々の国ではフールトゥと呼びますね」


円形の小さな石が一つだけのシンプルなピンなんだけど、その石が角度により青みがかったり色の変化が面白い。


「コレも通せば華やかになるか」


ランクル君が立ち上がり上着に付けていた飾りを外し私からバーピンを取り上げると何らや呟いて再び手の中に。


「おー、洒落ている」


小さな輪っかに極小の雫の形のガーネットに似た石がいくつかぶら下がっている飾りを取り付けたらしい。


「というか、元に戻せるの?」


勝手に改良して大丈夫なのか。


「お気に召したようですので差し上げますよ。ランクル、貴方もそのつもりでしょう?」

「ああ」


でもなぁ。


「タダってなんか思惑がありそうで嫌だなぁ。いや流石になんの考えもないのはわかってるわよ」


ひねくれているのは自覚済みである。


「あ、じゃあ誕生日祝って事で」

「今日が?」


そんな驚く事かな。ランクル君だけじゃなく、ギュナイルもおんなじ顔してる。


「明日よ。だから、あと少しかな。あーお腹いっぱい。あ、ごめん、というかやっぱ狭いわねー」


後ろに身体を倒せば、炬燵の中で誰かの足にあたった。


いや、二人がデカイんだな。というか、炬燵が似合わない!


「なんか、可笑しい」


お酒のせいもあるかもしれないけど、ちまっと座るイケメン二人の図がツボにはまる。


「あ、そういえば、なんでいきなりうちに? 転移って事はレイちゃん無事なのね」


まだ頭の動くうちに聞いておかねばならないはずだったがお酒の誘惑と空腹に勝てなかったのだ。


「レイルロードは、聖女様がお願いしたお陰で生きながらえていますよ。それで転移の件ですが、帰る際、貴方はレイルロードからなんと言われたか覚えていますか?」


知らんがな。


「だって昔すぎるわ。なんか言われたっけ。あ、食べる?」


二人にみかんを軽く投げ渡し、自分のミカンの皮を剥きながら一応考える。


「あ、忘れ物ないって言われた」


私の脳凄い。よく覚えていた。


「それで忘れ物、ありましたよね」

「え? ないよ」

「ランクル、貴方もお見せしたほうがよいですよ」


二人は、揃って私に片方づつ手首を見せてきた。そこには革紐に黒い丸玉を通しただけのシンプルなブレスレットが。


「……確か妬みというか生きている人達の思いが体に沢山へばりついてたから気持ち悪くて、寄り付かないように渡したやつだ」


それって。


「物を置いてきちゃったから来れたの?」


コクリ。


二人は同時に頷いた。


「夜会も終盤にさしかかった頃、俺は、レイルロードに呼ばれた」

「貴方もですか?」


二人は、レイルロードの研究室の部屋に踏み入れた瞬間、気づいたら私の部屋にいたらしい。


「じゃあ、帰る方法は?」

「……」

「……」


嘘でしょ?

私、二人も養えないわよ!


「あー、頭が混乱だわ。こんな時は糖分よ!」


私は、冷蔵庫からコンビニで買った小さいながらもホールケーキを取り出した。


「いつもケーキなんて、ましてホールなんて買わないんだけどさ。やっぱりホールのが豪華ね。火はどうしようか」


ロウソクを付けてくれていたので、なんとなくケーキにさしていくも家にはライターはない。


「火ですか?」


ランクル君が指先に小さな光をだし、それをローソクに近づけると、あら不思議火が付きました。


「おー便利」

「そんなの初級ですよ」


いや、ギュナイルよ。張り合わなくてもよいから。


「3人で消そっか。せーの」


なんか恥ずかしいからさらっと終わらせた。


「あれ? 二人共光ってる?」 


珈琲を淹れケーキを切り分け、さあ食べましょうという時、二人の体が淡く光っていく。


「どうやら帰れそうです」


ギュナイルの言葉に私は、キッチンからタッパーを持ってきて急いで詰める。


「なら、ケーキ食べきれないから持っていってよ!」

「「気にするのはそこですか?!」」


ギュナイルとランクルには、まだ奏という聖女を理解するには難しかった。



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