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10.ただ祓うだけじゃあ…ね

「どうするかな」


正直、こんなにも上手くいくとは思っていなかったので高揚感もすぐに平常運転になった奏は腕を組み考える。


『おぉぉ』


イケメンの口からは例えるならゼリー状の太く長い物体がミミズのように体をくねらせ声まで上げ始めてる姿に流石に嫌悪を感じる。


「きもい」


早く目の前から消したい。


「ぶった切るか。でも、失敗したらイケメンに傷がつくしなぁ」


『いや傷だけでは済まないだろう!』


背後では、ランクルとギュナイルが奏の呟きに翻弄ほんろうされていた。


「んー。やっぱ剣とか扱った事ないから却下。あ、そうだ」


奏は、壁に飾られていた剣を使うのを諦めこの世界に来た時から活躍している弓を掴むとその先端に人型の紙を突き刺した次の瞬間。


『ギャアアー!!』


右から左に口元めがけ払うように振った。その動きに迷いはなかったが、口元と弓の距離のなさにランクルは固まった。


「よし、成功かな」


切られた得体の知れない物体は、窓を派手に割ると何処かへと飛び去った。


後に残ったのは、大量の汗をかきながらも穏やかに呼吸をするラインと未だ奏から許可がないせいで酒バリアから出られない男二人。


「あ、もう円から出ていいよー」


決して横たわるイケメンを眺めて背後の男共を忘れていたわけではないと奏は説明する。


「あれは、消滅していませんよね?」


ギュナイルは、風通しが良くなった窓を眺めながら聞いてきた。


「さぁどうでしょう」

「はぐらかさないで下さい。弓の先につけた物も飛ばしましたね」


ねちっこいな。何を気にしているのかが分からない。


「あー、術をかけた本人に返却しただけ」


綺麗な目を細めギュナイルは、まだ先を待っている。


「ただオマケを付けたのよ。生きてるとは思うわよ」


呪い返しのオマケ付きだけど精神が図太ければ回復するだろう。


「運が悪ければ、ただ生きてるだけになってるかもしれないけど」


イケメンにかけた敵さんは、相当黒い事をしてきたと黒い物体が物語っていた。


「何か言いたそうね」

「いえ」


戸惑う見目麗しい魔術師に認識を改めてもらいましょう。ギュナイルに近づき胸元を掴み屈ませる。


「だから言ったでしょう?」


唇が触れそうなくらい引き寄せてみればきめ細やかな肌に苛立ち声も低くなった。


「私は、聖女って柄じゃないのよ」


突き放すように押せば、よろめくギュナイルに若者よ、鍛えなさいよと心の中で指導する。


「病は、完治したのか?」


終始丁寧な話し方のランクル君が男っぽい口調になっている。本来の彼はこんな話し方なのか。うん、いいじゃないの。


「見た感じ、完治とは言えないかな。悪いのは払ったけど身体は衰弱してみえる。消化の良い物から食べて、体を動かしていけば、変わるんじゃないかな」


独り言のようにランクル君は言葉を紡ぐ。


「寝たきりになって随分経つ。最初連絡が来た時は軽く考えていた。俺より優秀な兄がまさかと」


優秀ねぇ。


「完璧な生き物はいないわよ。それに脳の元の出来の差はあるだろうけど、努力なしに成長しないでしょ」


横たわる彼の部屋の壁には一面本だらけである。それだけではなく何か実験の器具のような物も散らばっている。


「一週間寝たきりになるだけで身体は弱る。だからまず目覚めたら、急かさず横になったままでもいいから体を軽く動かす。若いから回復も早いんじゃないかな」

「…そうですね」


また言葉使いは戻ったけれど少し笑みを浮かべたランクル君の顔は、今までで一番いい顔をしていた。




*〜*〜*



「…あなたは何者なんですか?」

「突然だね」

「異なる力。特にこちらに喚ばれた時から落ち着いた態度は、普通ではない」


帰りの車内でギュナイルは、真面目モード突入のようだ。普通ねぇ。まぁ、ばぁちゃんが副業でお偉い様方相手に祓い屋をしていたり。嬉しくない事に親族の中でダントツにソレを濃く継いでいる私だが安定しない仕事は嫌いなので勿論跡は継がなかった。


「んー、ただの介護職の女だよ」


夜勤専任が体調崩し、それが降りかかり連日勤務の働き過ぎな私。独り身だし、土日関係ないし。いや私としてはおおいにあるわよ。だけどねぇなんか断れなくてさ。


「うん。普通に可哀想よね私って」


今日は働いたし、お湯たっぷりのお風呂に入って肉を多めのお料理に、お酒も多めでいいわよねと宣言したのに、二人の男に無視された。


なんでよ?


文句を言おうとしたら、盛大にお腹が鳴った。



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