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1.とにかく寝たい

「あっつー」


夜勤明けで炎天下のなか帰宅し、即シャワーを済ますが。


「シャワーを浴びても、また汗かくのがホント嫌だわ」


身体を拭きながら棚からついでに新しいタオルを一枚とり近くに置いてあるボストンバッグに放り込んだ。


ロング丈のシャツワンピに袖を通しボタンを留めながら一人愚痴る。


「三回忌は分かるけど荷物に弓ってないし。だけど行くしか選択肢がないのがなぁ」


いなくなっても絶対的な存在だった人間に抵抗する気になれないのは何故だろうか。


そんなくだらない事を考えながらも洗面台からお気に入りの香水と歯ブラシセットをバッグに入れた。


「この寝不足で車を運転というのがキツイ。車、借りられてないといいけど。あ、今何時?」


下を履いてなかったと服を手にした時。


「は?」


足元が抜けた。



ドスン


「いったー!!」


お尻に強い痛みがきて後ろにひっくり返ったが、何かが支えになり頭は守られた。どうやらボストンバッグだ。


「いや、マンションで床が抜けるなんて聞いたことないし……あら?」


何メートルか離れた先には数十名の人達がいて、此方を凝視していた。


その方々の服装もさることながら、視線が異常に突き刺さり後退った時、ついた手にも違和感が。


顔が映りそうなほどピカピカな石の床。



更に恐ろしい事にさっきから、頭の中に響く声。


「陛下! 瘴気が!」


有に身長の三倍はありそうな扉が音を立て開き一人の軍服のような服装をした男が鬼気迫る口調で、初老の男に駆け寄る。


ぞわりと鳥肌が立った。

頭に響く声も頭痛を起こしそうなほど強くなる。


「頭の中で騒ぐのやめて。よくわかんないけど、やればいいんでしょ」


私は、痛むお尻をさすりながら立ち上がり、近くにあるボストンバッグの隣の藍色の布に包まれている弓を掴んだ。屈んだせいで頭に巻いていたタオルがとれ、まだドライヤーをしていない髪から雫が床に落ちた。


「聖女様?!」

「せいじょ? ああ聖女ね。それ、私に言ってるの?」


だいぶ高齢の女の人が口にした言葉に笑いがでた。聖女って、何それ。


「弦も矢もないが」


今度は、若い男の声。


「そうですね。きっと、ないけどあるのよ」


かつてこの奇妙な弓の持ち主の言葉を思い出す。


『この弓の弦や矢は作るんだよ』


ついにボケたかばーちゃんや。普通ならそう思うが、この祖母に限っては違う。


弓をほぼ真上の天窓に向け目を閉じた。


息を吸い、構えれば明らかに手応えを感じる。目を開けば、弓には太い弦がはられ光る矢が添えられていた。


引き絞ればギリギリと音を鳴らすそれを耳にしながら、私は、回らない頭で思い出そうとしてた。


「確か、なんか言うんだったような」


ぷるぷると腕が限界を訴え始めたのでアッサリ諦める。


「ま、いっか。とりあえず」


限界まで引絞り。


ね」


一気に解放された矢は、天井を突き抜け…あ、窓ガラスが不味い。硝子の雨が降るかと一瞬焦るも割れずに突き抜けた瞬間、金色の光があらゆる窓から入ってきた。


すぐに眩しさが消え、同時に鳥肌も解消された。


「あー、なんか一気に疲れた」


既に限界を超えていたのに無駄に疲れたせいでとにかく怠いし眠い。


私は弓をポイッと放り、バッグ近くに落ちていたズボンを履き、やたら静まり返る人達に宣言した。


「今から寝るので起こしたら呪うから。じゃ、お休み」


別に呪う力などないけど睡眠を邪魔されたくないので脅し、硬い床にバッグから出した薄っぺらなタオルを敷きバッグを枕にし横向きになり目をつぶった。


騒ぐ雑音もすぐに消えちょっと休憩どころか半日寝てしまうかなでだった。






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