大事なこと
あの夜、結局淳は彩夏に助言らしい助言を与えることは出来なかった。ただ、真夜中まで一緒に飲んで話をしてお開きとなった。
土曜日、日曜日と時が過ぎ、月曜日がやってきた。
淳は、さり気無くレオを観察してみることにした。
レオはいつもと変わらず、女の子とはよく話をしていたが、肝心の彩夏の姿が見えなかった。火曜日、水曜日になっても彩夏は姿を見せなかった。
それでも淳は特に気にすることはなかった。風邪でも引いたか、友だちと何処かへ旅行にでも行ったのだろうと、彼は勝手に考えていた。そして、いつの間にかレオのことも気にしなくなっていった。
その日の仕事が終わると、彼はいつも通りすぐにシャワーを浴びてベッドの上に横になる。慣れて来たとはいっても、仕事のあとの彼の身体は鉛のように重くて怠かった。
ベッドに寝転がって天井を見ていると、淳はふとクロエにトレーニング期間中の賃金のことについて聞かなかったことを思い出した。
「やべっ……また、聞くの忘れてた……」
大事なことをまた忘れてしまったことに、彼は少し苛立った。一度目を閉じると、すぐに眠ってしまいそうだったため、彼はスマートフォンに手を伸ばす。操作しているうちに、彼の脳裏から苛立ちは自然と消えていった。しかし、彼の意識も同じ様に消えていった。
淳が意識を取り戻したとき、握っていたスマートフォンには保存してあった旅の写真が目に入った。無意識にスライドしていると、一枚の写真がふと彼の目に留まる。
青い目をした女の子と、淳が肩を組んで楽しそうに笑っている写真。背景には青い空と海が広がっている。何処で撮った写真だったか思い出そうとすると、彼の瞼は再び重くなっていった。




