■7 ユニークスキル
今日は朝早くに投稿しました。
次の日、ボクは学校が終わると早々に家に帰る。理由には特に明確なものは存在しないが、簡単なことで学校に長居する用がない事と早くレベル上げをしたいからだった。ようしなければ、エミリアに追いつけないのは確かなので、明確といえば明確な理由となること間違いなしだろう。
「ただいま。って、ポストに何か入ってる?」
ボクは広く一般的なポストの中に入っていたものを取り出す。どうやら箱のようだ。
「差出人は……お母さんから?」
ボクは心底(これ、中身なんだろうか?)と思った。母からの贈り物となると、凄く微妙なものしか思いつかない。どうせこれもそうなのだろうが、意外にいつもよりも小さめである事が驚きであった。まあ、他人からしたら「母親を何だと思っているんだ」と思われるだろうが、ボクの母は、どちらかというと変人というべき人物であることはボクの母を知るものからはそう知られている
「まあ、いいか……」
ボクは家の中に入った。
その小包をとりあえず見回して、ボクは一旦それをテーブルの上に置くと、とりあえず中身を確認するために包みを開けた。
「何だ、これ?」
ボクはその中身を見てふと首を傾げた。
中に入っていたのは高価な基調を思わせる様な、箱だった。大きさとしては手荷物のには普通の大きさで、パッケージにはヘッドホンの様な見た目だった。
ボクはそれを認識した上で、中身を確認するために丁寧に箱を開ける。こう言う時はしっかりと集中した。
「何だろうか、うん?これって……」
ボクは中身を見て少し首を傾げる。 そう、中に入っていたのはパッケージにもあった通りヘッドホンだった。頑丈に包装され、中身を取り出すと白を基調としたヘッドホンで赤いラインとそれから黒い内側の部分がうかがえる。
シャープな今時のものと違い少しだけ、形としては大きいが異常な程軽いことから見てもなかなかにいい代物だろう。値段を確認しようとしたが、値札やそう言った類は一切なかったが、なかなかにいい値段はしそうな長持ちしそうなものだと思えた。
ボクはそれを確認した上で、電話での行動ではなく母にメールで感謝を伝えた。
「えっと、『ありがとう』っと……」
ただ少し気になったことは、サイドに少し大きめの丸いボタンがあったことだったが、これはこれで何かしらの装飾やアクセントなのだと思い流すことにした。そしてボクは今一度、ゲームにログインするのだった。
◇◇◇
「はあー!」
ボクは目の前の敵、《ホーンラビット》を片手剣で切り裂いた。
その瞬間、一瞬ではあるが確かに血のエフェクトが飛び交う。このゲームは、一応年齢によってかかるエフェクトに違いがあり、ボクみたいな高校生ぐらいにもなると小学生と違って一応血のエフェクトが現れる様に設定する事が可能だ。他に間違いはあるのだが、切断面などの断面は空間が存在しないことになっているし、さらには骨などのエフェクトにも多少なりとも違いはあると聞いた事がある。まあ、それは全てエミリアに聞いた事なのでボク自身では体感はない。
がしかし、確かな事が一つある。それはこの世界にも法律がありNPCをむやみに傷つけることはできないし、それから相手プレイヤーを何の道理もなく殺す様なプレイヤーは、殺人鬼と呼ばれ、街に入る事が出来ない。が、一応特殊なエリアには立ち入りができるがそこでも街と同じく、誰かを殺すとお尋ね者になる他、色々とデメリットもあるだろう。
最悪の場合には、そもそもログインすらできなくなるので、好んでやる人はいないだろう。そんなに戦いたいのならば、決闘を申し込めばいいのだ。まあ、逆にそのお尋ね者を倒せば、きっと報酬も多い事だろうが、むやみな争いは絶対に嫌だ。
そんな風にこの世界にも色々とルールはあって、それが現実にも生きている部分もある。これで、現実に反映する様な事がない様に尽力しているのだろう。運営はしっかりと社会のことを考えているし、この世界には特にといって差別もないので比較的安心安全で健全なVRMMOであろう。
「よし、この辺りの魔物はあらかた倒したかな?」
「そうですね。リスポーンするまではまだ時間がかかると思いますし、ほかの方々がレベル上げできませんし、もう少ししたら少し奥に行ってみますか?」
「うん。そうしようか」
ボクとミリアは今こうして共に行動して戦っている。
ここまでたったの二日ではあるが、その間にボクもレベルが5にはなった。でもここからは上がりにくいかもしれない。この森にいる敵のレベルは低いからだそうだ。まあ、そうだろう。ここは初心者が来るべき場所だ。だからまた別の場所に移動しようとは思うが、それにしてもミリアの腕は確かなものだった。
「そういえばミリアは、ずっとその杖を振り回して戦っているけど、それでよく戦えるね?」
「はい。私はとりあえず【杖の心得】は最大熟練度にしましたから、そのおかげだと思います」
「えっ?!もう、でもまだミリアも始めたばっかりだって聞いたけど」
「そうですけど、最初は簡単に上がります。その代わり、戦技も一つしかもらえませんしパラメータも低いです。でも、今の私は【杖の心得】から進化して【杖術】にグレードアップしましたから、それなりには戦えるんですよ。魔法も使えますので、頼ってくださいね!」
「うん。ありがとう」
そう明るく投げかける。
それにしてもミリアは魔法が使えるのか。凄いな。確か魔法は特定のアイテムを使わないと得られない貴重なもののはずだ。どんなものかは知らないけど、何であれせっかく覚えてくれたのだから頼りにしている。それに【心得】も既に熟練度をあげたのか……まあ確かに最初のものは『お試し』的なものなので、簡単に上がると聞いたからなんの不思議でもない。と、いうことはボクも上がっているのか?
そう思って自分のステータスを確認すると、【剣の心得】は既に八割型、練度が上がっていた。本当に早い。でもここからは練度のレベル上げになる。
と、確認を終え自分のステータスを閉じようとした時だ。ボクはふとユニークスキルの欄にずっとあるこのスキル、【二重武装】について気になった。
このスキルの特性上、同系統の武器……つまりは剣なら剣を、槍なら槍を、同時に二つ装備することで効果を発揮する。でも、本当にそれが可能なのかは定かではない。そもそも、同系統の武器を二つ装備してもなんの特にもならない。同系統の武器を装備しても、同時には戦技を発動するとは不可能で、それが可能かなはもとより二つ装備が基本である短剣だけだ。
「そういえばさ、ミリアはログインボーナスでなんのスキルを貰った?」
「私ですか?えっと私は、スキルは【裁縫】です。一応少しずつですけど、熟練度も上げていますよ。アイテムの方は、これでした」
そう言い、インベントリから取り出したのは一本の直剣だった。長剣に付随されるそれは、どう見てもミリアには必要のないものだった。
それはともかくとして、アイテムプレゼントもあったなんて知らなかった。そういえば、ここ二日はずっとメールなんて見ていなかったか。ボクはメールを開き、そこにはアイテムプレゼントの項目もある。ボクはそれを躊躇なく開く。
「アイテムか……って、これ何?」
「如何なさいました、グレンさん?」
「いや、コレなんだけど」
ボクが手にしたそれは確かにアイテムであった。
詳しくは見ていないからなんともいえないが、どう見てもただの黒い石だ。少し細長い形状はしているのだが、それが石であることに変わりはなく、妙に硬いのがポイントだ。
ボクはその石を【鑑定】で調べる。
一度手に入れたもの、戦った魔物に関する情報は【鑑定】で見ることができる。
だがしかし、インベントリに収納すれば誰でも見れるのでこれはあくまでも手にしている時にのみ効力を発揮すると言えるだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■【黒天樹】レア度S 品質S
□ 別名、黒天石とも呼ばれる。
夜空へと伸びる大樹の枝から採られたとされるとても上質で硬く、武具に最適。加工が難しい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と、なっていた。
それを見て、またビギナーズラックってやつかと心の中では思っていたが、これを見ても特にどうとは思わなかった。『加工が難しい』のに、扱える人がこのエリアにいるとはとても思えないのが現実的だからだ。
「って、ごめんこれじゃなくてさ……これなんだけど」
ボクはそういうと、ステータス画面から装備されていながらずっとオフにしていたユニークスキルをオンにする。すると、ボクの腰の部分に皮の丈夫なベルトが巻かれる。
その両端には、すっぽりと鞘が入るような形状になっていて包み込むようにガードが付いていた。完全に剣用だった。
「どうかな?このスキル」
「好きって、これがですか?私にはただのベルトにしか見えませんが」
「ボクにもだよ。でもこれ一応スキルみたいなんだ。なんでもEXレアのスキルで、エクストラスキルってやつ」
「えっ!エクストラスキルですか!嘘、本当……ですか?」
「えっ、何!どうしたのさミリア!」
やあ、いえ!それはそのまさか本当にエクストラスキルを持っている人がおられるなんてとても思えなくて……それがまさかこんなにも近くにいるとは。その、驚いてしまって」
「そ、そんなに?!」
「はい!」
そう鼓舞するように言及される。
目を爛々と輝かせ、羨望の眼差しが熱い。ボクはそれを感じ取って、少し気が引けてしまったが、一度くるっと回ってみるとパチパチと拍手が送られる。それにしても本当にリアルだな、このベルト……それに剣しかこれじゃあ使えなさそうだな。
「それにしても、どうしてミリアはそんなに驚いていたの?確かに珍しいとは思うけれど」
「そんなって!まさかグレンさんは知らないんですか?確率を!」
「か、確率?」
「はい!基本的にはDからCですよ。スキルプレゼントでもらえるのは!私の【裁縫】は二つでしたが、Bは一万分の一、Aは十万、Sなんて百万分の一ですよ!EXレアでは、一千万分の一ですから!それだけ貴重なのです」
「そ、そうなんだ。ありがとう、ミリア」
「はい!」
わかりやすい説明でとてもありがたかった。
そしてボクは装備していた剣をそのスキルで手に入れたベルトの鞘へと納める。
それでボクはそれを見て、なんとなくかっこいいと思った。
「なんか、いいや」
「かっこいいですね!グレンさん」
「そう?」
「そうですよ!あっ、そういえばグレンさん!これを!」
そう言って、ボクのインベントリへ向けて何かを贈られる。
それをとりあえず出してみると、それは剣だった。「えっ?!なんで」と声をあげると、ミリアは「それが、私の手に入れたアイテムプレゼントです」と落胆した。ボクはそれを見て、頭を撫でると喜んでくれた。
「グレンさん、使ってください!」
「えっ、いいの?」
「はい。私が持っていてもなんの意味もありませんから。使ってください!むしろ使って欲しいです」
「うん、わかった。じゃあありがたく使わせてもらうね」
「はい!」
ボクはそれを手にして、鞘に収めるととてもいい具合だった。振るうと体に馴染む。これがこのスキルの力なのだろうと納得して、それからボク達は今日もレベル上げを勤しむのだった。