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ファントムロック・オンライン〜VRMMOの紅い幻影〜  作者: 水定ユウ
第一章:紅い幻影のプロローグ
16/53

■16 ボス戦

 

「よし、行くか。アクセス・リンク。スタート」


 ボクはFRO(ファンロク)の世界へと意識を送り込んだ。


  ◇◇◇


 ボクらはその日いつもの喫茶店に集まっていた。

 もちろん、ミリアにソラト。そしてクロムと全員揃っている。ボクらはそれぞれ何か頼むと、それが運ばれてくるのを待ってから話を進めた。ちなみにボクはブラックコーヒーだ。


「グレン。今日、行くんだよね?」

「うん。そのつもりだけど、みんなは何かある?」

「私はありません。クロムさんに作っていただいた杖もありますので、心強いです」

「私もいいよ。やってやろうって感じ」

「クロムは?」


 ボクはクロムに目を向けてそう問う。

 クロムは意外にも苺のショートケーキを口に運んでいて、その手をやめて一瞬丸くしていた瞳をすっと戻す。


「特にはない。ただ私はあまり戦闘経験はない」

「そうなんだ」

「だからきっと足手纏いになる。それでもいい?」

「うん。いいよ」

「私達、まだギルドじゃないから一人でもかけると、次のエリアに行けないからね」


 ソラトはそう言う。

 ボクは詳しくは知らないが、ギルドというシステムがあるらしくそれによると通常のパーティーの人数を増やすことが出来る他、拠点(ホーム)を持つことができることが大きいらしいが、ギルドのシステムを今の所解放したプレイヤーはいないらしいので詳しくはまだ判明していない。一説には、ギルドを作ると、ボス戦に関してはギルド全体での突破(クリア)他、パーティー、もしくは個人での突破(クリア)があるらしく、それによって報酬が多少異なるらしいがあくまでレアアイテムのくくりだけの違いらしいので、特にゲームに支障は出ないとのことだ。


「そもそもボクたちの連携はシンプルだからね」

「と言うと?」

「ボクとソラトが前衛で、ミリアが後衛からの支援」

「なるほど。それならわかりやすい。私もそれに準じて立ち回らせてもらう」

「うん。助かる」


 そうボクは頷きかけると、ボクは運ばれてきたブラックコーヒーに口をつける。

 皆んなも自分の注文した品が届くと口に運び、完食して店を出た。

 そしてボク達は、ボス戦へと挑むのだった。


 ◇◇◇


 《ユルート森林》はこのエリアの北側にあり、少し遠い。

 ボクらはこのゲーム内の時間帯で言うと、昼前に出発した。そしてその道中は草原や森などの緑が多く、当然魔物にも遭遇した。


「ソラト、そっちに行った!」

「おっけー!はあああ!」


 ソラトは襲いかかって来た黒い狼の魔物、《ウルフ》を大剣で薙ぎ払う。

 さらに群れで行動する狼達をミリアの《ファイア》で牽制し、打ち滅ぼす。若干だが、前よりも魔法の発動速度が上がり威力が上がったのではないかと思った。

 そしてクロムは、両手で握りしめた大きな鉄槌で翻弄されている狼達の横腹を思い切り打ちつけ、ボクは速度重視で双剣を抜き放つと、狼達を斬り伏せていった。


「大体片付いたみたいだね」

「だね」


 ボクは空との言葉にそう返すと、周りを見渡した。

 そこには先ほどまでの狼達が、光となって天へと還りその場所にはドロップしたアイテムが点在してた。ボクらはそれを回収すると、また歩き出し目的地へと赴くのだった。



「そう言えば……クロムの持っていた武器って何?鉄槌なのはわかるけど、あまり詳しくないから」

「あれは私のオリジナル。Xランクの鉄槌」

「へえー。そうなんだ。何か名前はあるの?」

(くろがね)流七式・瑠璃」

「はい?」

「鉄と書いて(くろがね)と読む。そのうちの一つ。瑠璃色の鉄槌。名前は瑠璃」

(くろがね)流って事は……あんまり詮索するのはよくないけど、もしかしてクロムの苗字って『くろがね』とか?」

「あっ、それ聞いちゃうんだ」

「ごめん。変なこと聞いて」

「いやいい。まあ字は違うけど、合っている。それに私は普段(くろがね)流何て言わない。だから他の人に知られる事はない」

「そっかごめん」

「でもさ、大体の人のプレイヤーネームって名字とか名前とかを混じったものが多いからちょっと考えればわかりそうだよね」

「まあ、それは一理あるけどたまに全く関係ないものもあるんじゃないかな?まあボクらは前者だけどさ」

「ですね」


 と笑い合った。

 だが、やはり相手の現実(リアル)を勝手に詮索したりするのは良くはないと思うので、注意が必要だ。

 そんなことを考えていると、不意にミリアは唐突に口元に指を当て、何かを納得したように呟いた。


「それにしても鉄と書いて(くろがね)ですか……初めて知りました」

「あんまり聞かないけどね」

「でもかっこいいよ。ボクは好きだな」

「そう。ありがとう」


 クロムは少し頬を赤らめる。

 ボクたちはそれを見て微笑んだ。そして気がつくと《ユルート森林》に辿り着き、その奥地にある岩肌に隠れた洞窟を前にしたのだった。



 《ユルート森林》の奥地にある洞窟。

 その洞窟には、特にこれといった名前はなかった。と、言うのとそもそもここには次のエリアへと進みたい人しか来ないから、単にボス戦前の洞窟と言った言葉が適切で、それがプレイヤーの間では定番となっていた。

 ボクらとそのうちの人であり、これからこのエリアのボスに挑む。しかし事前情報は必要なはずなのに、今回は勢いで来てしまったためにあまりなくボスの名前しかわからない。だからそれぞれの持てるだけの対策しかしていない。次からはしっかりと情報を集めてからにしようと思った。


「ソラトの聞いた限りでは、確かこの洞窟ってそんなに長くないんだよね?」

「うん、そのはずだよ。それからこの先にあるボスもね」

「あと、この先には確かですけど安全地帯(セーフティエリア)があるはずですよ」


 と、ミリアは言う。

 確かにこの洞窟は見た限りでは、そこまで長くはなく。せいぜい二、三百メートルほどだろうか?しかしそれが洞窟からして長いのか果たして短いのかはボクにはわからなかったので、ここではそう思う他ない。

 それとミリアの言っていたこともまた然りだ。

 ボクらの目線の先には、淡い緑色をした光がほのかに煌めいていた。そしてその場所に近づくと、ボクらはそこで一息ついた。


 この場所は安全地帯(セーフティエリア)と言って、主にボス戦の前にある場所だ。

 この場所にいる限りは、他の魔物は現れずこの場所には決して近づいてこない上に、HPも自然回復するのだ。またこの場所があると言う事は、このあと苦戦を強いられる可能性があることを示している。


「さてと、じゃあもう一度作戦を説明するよ」

「はい!」

「おっけー」

「わかった」


 ボクは一呼吸置いてから、説明を始める。

 ミリアとソラトははきはきと元気が良く、クロムはいつも通りといった具合で特に問題はなさそうに見えた。

 そう確認した上で、作戦を説明した。作戦は実にシンプルな戦術だ。


「ボクとソラトが前衛で暴れながら敵の攻撃を撹乱して斬り込む。ミリアは離れた位置から《ファイア》何かの魔法を飛ばして補助を頼む。クロムは適度に間に入って、ミリアのサポートを頼んだよ」

「「「了解」」」


 ボクらは顔を見合わせた。

 そして互いの顔を見て、目線でのやりとりをすると一度頷き合ってからボク達は安全地帯(セーフティエリア)を出た。

 そしてその先は、明らかに違う雰囲気を感じた。

 その場所にあったのは行き止まりで、その地面には洞窟には似つかわしくないような青白い光を放つ魔法陣がぽつんと敷かれていた。ボクらはそれを確認すると、一度目を合わせて互いの顔を見合ってから首をひねるが、すぐに状況を理解するとその魔法陣の中に足を踏み入れた。すると、魔法陣はこれまでにないほどの光を放つとボクらの体を飲み込んだ。

 そして気がついた時には、ボク達の目線の先には真っ直ぐな一本道が広がる。岩肌のその道を進むと、そこはかなり開けていていかにもボスが出てくるであろうほどで広かった。


「ここがもしかして……」

「グレン、来るよ!」


 そう、ソラトが叫んだ。

 ボクらはその声に反応して、武器を持って身構える。

 そしてその直後、その広い洞窟の空間のすり鉢状の形状であったためか、すり鉢の上の方から大きな怒号が響き渡るのを聞き取った。

 そしてその怒号の主はのっしのっしと、荒い足音を立てながら徐々に近づき、そしてその姿を現した。

 僕らはその巨体を見て一瞬、後方に下がるもその緑色の体表を露わにし、片手で握る棍棒を見せた。そしてそいつは洞窟内中心部へと降り立つと、ボクらに向けて戦いの狼煙をあげたのだ。


「グレンさん……」

「うん。こいつがこのエリアのボス……ボブゴブリン!」

「ぐおおおおおおおおおん」


  ◇◇◇


 『ゴブリン』。それはファンタジーゲームでは聞かないことの方が少ないほど有名な魔物だ。

 その正体は小型の鬼の悪魔であると言われ、ゲームや小説ではその多くが群れで行動し基本的に賢くなく、最弱の魔物と称される。

 ちなみにだがゴブリンはこのゲームにも存在しており、今目の前で対峙している敵こそがそれなのだ。

 ゴブリンは先ほど説明した通り、群れで行動する。緑色をした小型の体表で、小説なのでは女性や、荷を奪うらしい。が、このゲームでの扱いは少し違いそういった狡猾さはない。が、先ほど群れで行動するといったがそれは誤りである。何故なら、ごく稀に今ボクらが対峙するようにより強力な個体は群れを形成せず、単独で行動するほどの力を持つ。それが、この巨体を持つゴブリン。その名を、『ボブゴブリン』と言う。


 「聞いていたのよりもすごい迫力だね」

 「うん。これは骨が折れそうだ」

 「どうする?一旦下がる」

 「いや、まだ奴はモーションに入っていないみたいだから、陣形をとって攻撃しよう。ミリア!」

 「はい」


 ミリアには指示を送り、下がらせる。

 ミリアは主に魔法攻撃による支援を優先してもらっている。いくらクロム特性の杖があったとしてもやはり《妖精族》の基礎値では物理攻撃力にはさほど換算されないとクロムは言うからだ。

 だから出来る限りミリアには下がってもらいつつ、《ファイア》などが安全に届く範囲から、敵対心(ヘイト)を溜めないようにしてもらう。そして反対に、その敵対心を溜め、攻撃を一手に引き受ける役目は大剣使いで攻撃力と防御力の振り幅が高いソラトに引き受けてもらう。

 ボクとソラトは互いに目で合図を送ると、一度こくりと頷き腰のベルトに刺した二本の剣を構える。

 そして走り出した。


 それに気がついたのかボブゴブリンは、ボクの方をギロリと見た。

 しかしそれには決して臆することなく、ボクは「まずはボクが削る!」と叫ぶと、片手ずつで握りしめた二本の剣を交差させて、一気に攻め込むと身をひねるようにして戦技を喰らわす。


 「《ダブル・スラッシュ》!」


 ボクは【剣術】の戦技を使った。

 本来、《ダブル・スラッシュ》はあくまでも二回剣戟を見舞う技なのだが、ボクの場合はそれが片手剣ずつで披露されるので、単純に手数を増やすことができる。

 ちなみにこの技は《スラッシュ》の応用系であり、【短剣術】の技である。


 《ダブル・スラッシュ》をボブゴブリンの右腕にくらわせると、すぐさま体を捻って反転して胴を切り裂く。

 流石に胴の攻撃には対応出来なかったのか、ボブゴブリンは応えたように悲鳴を上げる。


 「ソラト!」

 「おっけー!」


 ボクはソラトに指示を送り、大剣でズバズバとボブゴブリンの攻撃を牽制しつつ両腕や太腿などにその巨大な剣の剣身を叩き込む。

 その攻撃の脇でクロムは飛び出し、両手で握る《鉄流七式・瑠璃》を使って破壊力抜群の一撃を喰らわす。


 「ギャャャャャ!」


 その連携された攻撃で少しずつボブゴブリンのHPを削る。


 「ミリア!」

 「《ファイア》」


 ミリアも的確に魔法攻撃で通常では届かない顔などを攻撃している。

 しかしそれでは敵対心を溜めやすいので、クロムが牽制しつつソラトがカバーに入って大剣を盾のように使いながら守る。


 「はあああ!」


 対するボクは【跳躍】のスキルをセットしているので、ミリアと同じで高い位置を攻める。

 【跳躍】はその名の通り『飛ぶ』のではなく『跳ぶ』力を強化するもので、跳躍力を二倍にまで引き上げることが出来る。が、それでも頭の位置は高いのでクロムとソラトが足元を狙って的確に崩すのを見計らい、ボクは崩れた太腿や二の腕を伝って飛び、顔面に《スラッシュ》を叩き込むと、すぐさま反転して肩口にかけてを再び《スラッシュ》で切り込んでいく。


 いつしか、そんな攻防の末にボブゴブリンのHPは緑色のバーを通り越して、黄色のバーを少し過ぎたあたりにまで減っていた。つまりは体力を半分以下にまでしたと言うことだ。

 しかしそこでボクらの優位は崩れる。

 ボブゴブリンは聞き取れないような発狂を上げると、急に動きを変えて攻撃を繰り出す。


 「グギャャャ!」

 「なっ?!」


 ボクは踵を返すと、攻撃に踏み込んでいた足を戻して態勢を立て直して剣をクロスさせて攻撃を止める。

 ボクのステータスは種族的な関係もあり、個人的にはバランス良くしているが、振り幅的に見ると攻撃力とスピードに降っているので、その分防御力は低い。そのため、今みたいな重たい棍棒の一撃をまともに喰らうとダメージが尋常ではないだろう。

 そう判断して、ボクは大きく後ろに後退する。その脇では、ソラトが大剣を構え直しボブゴブリンに向かっていくが、先ほどまでとは打って変わってボブゴブリンはソラトに対して棍棒で一騎討ちに出た。

 その攻撃をソラトは瞬間的に判断したのか受け止めると、苦い顔をして顔をしかめた。


 「ソラト!」

 「大、丈夫。こいつの力、さっきより増してる」


 と、短いながらもそう伝え攻撃をガードしているがいつまでもつかは判らない。

 そこでボクとクロムは左右両サイドから攻撃を仕掛けるが、その攻撃に反応して棍棒をクロムに振るいボクには左腕で殴りかかる。クロムは《瑠璃》を使って受け止め、ボクもガードするが流石にまともには喰らうとまずいので滑らせるようにして剣身で受け流す。


 「おっと!」


 ボクは地面に着地すると同時に繰り出された拳を脇目で見て後ろに跳ねるようにして跳ぶと距離を取る。

 その隙にミリアは詠唱をいつの間に済ませていたのか、特大の《ファイア》をぶつける。


 ーしかし、それが裏目に出た。


 その《ファイア》の威力は、ミリアのステータスと更にはクロム特製の杖によって破格の威力となっておりボブゴブリンの注意を引くのには十分過ぎる威力を見せた。

 よってボブゴブリンはボク達には目もくれず、ミリアを狙った。


 「あわわ……」


 ミリアの方も酷く怯えて動揺している。

 ミリアの場合、ステータス的に見ても攻撃は受け止め切れない。いくらクロムの武器があったとしてもだ。まだ近接戦闘は浅いと見た。

 

 ーだからボクは迷うことなく、飛び出していた。


 「はああ!」

 「グレンさん!」


 ボクはミリアの前に立ち、剣をクロスさせる。そしてボブゴブリンの小動きを受け止めるが、止め切れないと思い片手を離してミリアを突き飛ばし完全にボクに注意を向けた。

 しかしそれによってボクの体は宙に板の間にか浮かんでおり、気づいた時には背中から堪え難い痛みが全身に巡っていた。

 どうやら洞窟内の壁に叩きつけられたらしい。その攻撃を受けてボクのHPはレッドゾーンとなり、ボクの意識も飛びかける。ほんと、このゲームだとボクの意識ってよく飛ぶよなと思いながらそばに駆けつけてきたおそらくミリアの足元だけを覗き込み、ボクの意識は途切れ暗闇の暗黙へと落ちていく。欠けたボクの穴を塞ぐため、ソラトたちは奔走しそしてボクは暗闇の中で光の少女と出会うのだった。




 

二週間近くサボってしまいすみませんでした!

一応少しずつですが描いていたのですが、戦闘シーンに入ってしまい行き詰まりました。

個人的にもう少し戦闘シーンをうまくかけるよう、努力していきたいと思っておりますが、多分来週の日曜日は用事があるので投稿できません。

出来たら投稿したいと思うので、良かったら読んでください。

(戦闘シーンも得意になりたいな)


※ 1/4 鉄流と明記していますが、それはあくまでも個人的にその方がかっこいいと思ったからです。

クロムの設定上の苗字は鉄ではなく、黒金です。元ネタはクロム鉄鉱石です。

本来の黒金の意味としては、ニエロと言う合金(もし間違っていたら、申し訳ございません)らしいのですがそんなことは全く知らず、ゲーム内でのプレイヤーネームを考えた際に本名をどうしようと思ったので、急遽このような形にしました。なので、あまり考えずに読んでください。

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