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ファントムロック・オンライン〜VRMMOの紅い幻影〜  作者: 水定ユウ
第一章:紅い幻影のプロローグ
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■1 プロローグ

夏休みに入ったので書いてみました。是非読んでください!

本作に登場する、団体や地域は実際に存在するものではなく、私個人による架空のものです。モデルなどはなく、なんとなくですのでもしかしたら気分を害されたりされるかもしれませんが、気にすることなく楽しく読んでくださると幸いでございます。

 

  ボクの視線の先、そこには何もないフローリングのだだっ広いだけのリビングが広がっていた。

  その光景を見て、ボクは唖然としながらもどこかしか高揚感を隠しきれないかのように、小さく笑みを浮かべると右手に持っていたボストンバックをそこに落とした。


  「はあー、無駄に広いな」


  そう返答するが、返してくれる人はいない。当然だ。ボクは今日から一人暮らしを始めるのだ。

  ここは改築してあるが、ボクの母方の祖父が昔使っていた家だ。当然の一軒家で、何もないのはそもそもボクが住むまでは誰も住んでいないからだ。

 

  ボク自身、この家に来るのは初めてでそもそもこの辺りに来たことすらない。今までは祖父母とともに何もない離島に住んでいたからだ。

  そんな普段の生活を飛び出して、ここに住むことになった理由。それはとても簡単だ。


  「それにしても、明日から僕も高校生か」


  と言うことだ。

  ボク、紅神蓮(こうがみれん)は明日から花の女子高生だ。と言っても、ボク自身その実感があまりわかないが女子高生には見えないと思う。可愛くないし、むしろ体格は男の子に近い。身長は170ぐらいはある。けれど対比で胸はないし、女子高生という言葉は似合わないだろう。

  おまけに購入した学生用ブレザーは男子用だし、下はスラックスと飛んだミスをした。まあ、取り替えは可能なのだがこんなことってあるだろうか?僕自身は、ちゃんと女子用のを購入した覚えがあったのだが、届いて見たら案の定でそれもこの家に届いていたので、クーリングオフの期間も過ぎてしまっていた。それに、どうせ明日から始まるのでもう遅いの他に言いようがなかった。


  「はあー、まあいっか。。この方がどっちみち楽だし」


  と吐き捨てる。

  そもそもがこの方が動きやすいので特段問題はない。しかしどこかしら明らかに諦めたようだ。まあ、普段からあまり諦めは良くない方ではあるのだがこの件に関してだけは前々から諦めがついて決しているのでため息ひとつで解決する。


  そう思った矢先のことだ。

  ボクほスマホが鳴った。誰からかと思って出てみると、そこには母からだとすぐにわかるようディスプレイされていた。


  (どうしたんだろう、こんな時間に?)


  スマホで時間を確認すると、午後四時半だとわかった。

  ボクは少しだけ疑問に思って電話に出た。


  「もしも…」

  「やっほー、蓮。元気してる?」

  「うん。お母さん」


  ボクの母は昔からこんな風にテンションが高い。

  だからボクはこの手の返答には慣れている。


  「それで、どうしたの?」

  「もう釣れないなー。せっかく電話かけたのに」

  「ありがと、それで何?」


  こんな感じで全く合わせない。逆のテンションで挑むこと。それが鉄則だ。

  それにより常に冷静でいられる。冷静さを普段から維持できるようにすれば、それだけ他の感情も普通でいられる。それだけだ。


  「はあ。いつも通りだねー、蓮は」

  「用がないなら切るけど?」

  「いやいや、あるからあるから」


  そう焦るように言ってきた。

  焦るのには訳がある。ボクの母は自由人であるけれど、同時に真面目な人だ。仕事に戻らなくてはならないのだろう。そんな合間を縫ってかけてきたのだからきっと大事な要件のはずだ。


  「で、何?」

  「うんとね。蓮、高校入学おめでとう!」

  「あ、ありがとう」


  素直に喜べた。

  けど、やはり溜めが長かった。何故かいつも通りの母の言動が込み上がってきて嬉しく思えた。その言葉がボクを笑顔にする。


  「それとね、蓮。蓮のためにあるものを買っといたんだ。明日届くように発注しといたから、届いたら連絡ちょうだい!」

  「あるもの?」

  「うん。でもそれは、ひ・み・つ。だよ」

  「はいはい、わかりましたよ」


  と、納得。

  でも、また変なものだろうとは思った。昔は確か小さなトーテムポールだとかクマの木彫り人形だとかそう言った置物が主流だったかな?あとはフランス人形だとか、パズルだとかそんなのもあったかも?と思い出した。

  でも、まあありがとう。


  「それじゃあごめんね。もう仕事に戻らないと」

  「はいはい。あっ!お父さんにもよろしく言っといて」

  「ええ」

  「うん。じゃあ、切るね」

  「あっ、それとね」

  「うん?」

  「私達はいつでも蓮のことを愛しているわよ。どんなに離れていても、絶対にね」


  と言って、電話は切れた。

  それを聞いて恥ずかしくなり、それと同時にお腹がなった。少し早いが夕飯にしようと思う。

  でも、作るのが面倒だし道具が何もない。


  「はあー。コンビニでも行こう」


  と言って家を出た。



  ◇◇◇



  勢いに身を任せて家を飛び出してしまったがいいが、困ったことになった。

  ボクはあまりこの辺りの地域について詳しくはない。地域だけでなく、地形にもだ。理由は単純で来たことがないに限る。場所としては、東京の方ではあった思うので、海が見えないことだけは確かだなので、山側と言っていい。

  だからつまりコンビニ一件探すのにもスマホの地図アプリが必要な状況だ。


  「今度この辺りを一回見て回らないといけないなー」


  そんな風に固く決心した。

  今やこの世界はネットが主流となっているのだが、そのほとんどは電脳世界つまりは仮想空間についての研究で没頭だったようだ。だからこんな風に歩いてコンビニに行くのは当たり前で、こんな夕暮れ時でなければもっと大勢の人が街を行き交う。


  そんなこの町、《夕暮町》はのどかでとても夕日の綺麗な都会に面したところだ。

  そんな風に考えながらボクは街並みを歩くが、見えるのは殺風景にも近い住宅地や公園となんの面白みがな。だがしかし、ボクの住んでいた離島に比べれば全然マシだ。あそこはほとんど人がいなかったから、何もないに等しかった。あるのは小さな商店が一つだけだだからな。


  そんな風にかつての思い出にことを浸っていると、目の前に公園が見えた。


  と、そんな時だった。突然声が上がる。悲鳴のようだ。


  「きゃあ!何するんですか!離してください!」


  その声を聞いて慌てて僕は駆けつける。

  するとそこには黒服を着た男達に取り押さえられるいたいけな少女が一人いた。その少女は遠くから見てもわかるような綺麗な金髪で、ツインテールにしている。

  そんな少女は必死に抵抗してもがくが、それでも力の差が歴然だ。後ろには黒いワゴン車が見える。これは間違いない。誘拐だ。


  そこでボクは考える。なんとかしないといけないと頭を巡らす。脳に酸素を送り必死になる。


  (どうすればいい。何をすれば助けられる…そうだ!)


  ボクは一つ考えがあった。

  とてもじゃないが子供騙し程度でしかないが、仕方がない。ボクは大きく息を吸い込んで、こう叫ぶ。


  「おまわりさーん!こっちです、こっち!」


  こんな子供騙しの脅しだ。効くわけがない……そう思った矢先、向かい合って見るとそこにははどこか動揺した男達の姿があった。小言を何だかつぶやいているが、よく聞こえない。聞こえたのはたった数言で、


  「おいまずいぞ」

  「ああ、察がいるなんて聞いてねえ」

  「ここは諦めるしかないか」


  と、口々にそんな言い回しが飛び交う。

  それを聞いてさらに追い打ちをと、手を振ってより強調させる。すると、それを見た黒服の男達は「やばい」とつぶやくとそそくさと猛ダッシュで逃げて行った。

  そして急ぎ車へと乗り込むと、すぐに発進した。


  「ふう。なんとかなったかな」

  「あの、警察の方々は?」

  「えっ?!」


  ボクは安心して短めの息をハッと吐く。

  するための前には、先ほどの金髪ツインテの少女がおどおどした様子で立っていた。青く澄んだ瞳が特徴的な、見るからに中学二・三年生といった具合だろう。小さくて可愛らしい。

  そんな少女はとてもおどおどとしていてぎこちない。周りを確認して、警察が来るのを待っているようだ。まさか本当に信じていたなんて……


  「えっと、ああごめん。あれは嘘なんだ」

  「嘘ですか!」

  「うん。君を助けるために其の場凌ぎで思いついた嘘。あのままほっておいたら、君今頃誘拐されていたと思うんだけど」

  「そうだったんですか」


  ほっとしたように胸をなでおろす少女。そんな少女は顔をあげて、僕に尋ねた。


  「あの、どうして見ず知らずの私を助けてくれたのですか?」


  片言の日本語の羅列が僕の耳の中へと吸い込まれていく。そんな潤んだ瞳を向けないでほしい。

  ボクはそんな少女に真意を語る。それは紛うことなき嘘偽りのない本心だ。


  「ボクは、自分で言うのもなんなんだけど性根は腐っていないと思ってるんだ。これはどうしようもない正義感かもしれないけど、助けないとって思ったんだ」


  そう言って、頭を撫でた。


  「だから安心してほしいな」


  そして微笑みかける。すると少女はおとなしくなって潤んだ瞳をあげた。そして安心したように顔をほのかに赤らめる。

  ボクはにこりと微笑みかける。

  そうすると少女は嬉しそうにした。ボクはそれを見てほっとする。



  ◇◇◇



  ボクは女の子を助けた。

  少女はとても可愛らしかった。そして尋ねる、何故ここにいるのかと?すると少女は答えた。


  「パパがお仕事があるからって言って、公園で遊んでなさいって」

  「それって一人で?」

  「うん。私一人で居たかったんだ。そしたら……」

  「さっきの人達に」

  「うん」


  とても悲しそうにする。

  ボクは少女の頭を撫で回した。そしてこう言った。


  「確かに一人で居たいときは誰にだってある。でもね、女の子が一人であるのは危ないよ。僕も女だけど、それでも少しは警戒しておかないとこんな時間だし」

  「はい」


  帰ってきた返事はとても良い。でも少し落ち込んでいるようだ。ボクは何も言わずに頭を撫で続けた。そして段々と少女は気恥ずかしくなったのか、先ほどよりも断然顔が赤い。

 

  「あっ、ごめん」


  そう言って、手を離す。

  すると残念そうな顔をされて困った。


  「あの、もう少し撫でてもらえませんか?」

  「えっ?!」


  そう困惑が一言漏れた。

  そんな時だ。隣の少女は、「あっ!パパ!」と言ってベンチをたった。ボクは慌てて視線を向けると、そこには一人の背の高い男性がいた。見るからに日本人だ。


  「エミリア、こんなところにいたのか。探したぞ」

  「ごめんなさい」

  「ところでそちらの方は?」

  「えっと……」


  ボクは睨みつけられた。それを見て、ひるむことなく即座に即答した。


  「紅神と言います。そちらの貴方の娘さんが、誘拐されそうになっていたので助けました」

  「誘拐?!」


  困惑した顔でボクの顔を覗き込む。

  疑っているようだ。しかし、彼の娘。先ほど、確かエミリアと呼ばれていた少女が懸命に事情を説明している。ボクもこの流れに乗じて、ことの全てを話す。

  そして論争があって数分。納得した少女の父親は僕に向かって直立不動で立ち、そしてきっちりと腰を折って礼をした。


  「すまない。君を一瞬ではあるが疑ってしまった私がいた。反省する」

  「いや、良いですよ。疑われても仕方ないですから」


  ボクは手を横に振っておどけてみせた。

  しかしそんなこと関係なしに謝罪は続く。そして、お礼を言われた。


  「君のおかげだ。私の娘が助かったのは心からお礼を言おう。紅神君と言ったね、私はエミリアの父、グリシェ・アルフォリアと言うんだ。今回のことで君にお礼がしたい」

  「お礼ですか?」


  ボクはそんなことどうでも良いと思った。

  お礼目当てで人を助けたわけじゃないからだ。丁重にお断りしよう。


  「あのお礼の件ですが、丁重にお断りしたいのですが……」

  「とんでもない。私としては、ぜひなとも君にお礼をしたいのだ。私の一人娘を助けてくれた恩人に、むげなことはできないからね」

  「えっと、ですが」

  「このとおりだ」


  と頭を下げられた。

  そんなに頼まれたのでは断れないし、義理もない

  ボクは風と一息いれると、


  「わかりました。では、ありがたく受け取らせていただきます」


  とにこやかに言った。

  すると頭をあげたエミリアの父親は、健やかな顔をしていた。それを見たボクはほっとすると、エミリアという少女は僕にこう尋ねてきた。


  「あの、紅神さん。よろしければ、下の名前をお教えいただけないでしょうか?」

  「下の名前?良いよ」

  「ありがとうございます」

  「いやそんな言い方しなくても教えるよ。ボクは蓮。紅神蓮。今年で高校一年生になるんだ。よろしくね」

  「私はエミリアです。エミリア・アルフォリアです。是非、エミリアと気安く呼んでください!」

  「うん。エミリア」

  「はい!」


  そう言ってとても楽しそうに笑顔を作って、ボクのそばを離れていく。

  そしてに父親のもとに行くと、父親はこう聞いてきた。


  「すまないが、この辺りに他に紅神という名字はないだろうな?」

  「えっ?!は、はい。知ってる限りでは」

  「なら安心したよ。明日にでも、届けよう。それと、紅神君。一つ頼みがあるんだがいいかな?」

  「頼みですか?」

  「ああ。もしよかったら、またエミリアと遊んではくれないだろうか?こんなにエミリアが生き生きとしているところを見るのは久しぶりだ。どうや。君に懐いているみたいだからね」

  「そうですか。いいですよ。こちらこそ」

  「そうか、よかったなエミリア」

  「はい!」


  と言って去っていく。

  ボクはそんな怒涛の展開に流されながらも平然を装って、それを呆然と眺めていた。

  そして姿が見えなくなるのを待ってから本題を思い出す。


  「あっ!コンビニ!」


  そしてボクは本来の用事を思い出すと、夕日の中を歩いた。

  そして家に帰ると、軽く夕飯を済ませた。

  そして明日に備えて早めに寝るのだった。


 

 

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