01プロローグ
とある夜のこと。
薄暗い部屋の中、窓際に怪しく光るパソコンに向かう一人の青年がいる。時折ぼそぼそと何かを呟き右手を忙しなく動かす。その部屋は鳥肌が立つほど寒い。いわく、パソコンが火傷するくらい熱くなるからだとか。それはともかく。
「マジかよ...?」
画面を凝視したままその青年の顔に表情の色がつく。
画面にはデカデカと蛍光色のテロップが表示されていた。
『異世界転生キャンペーン実施中!!』
青年は目をこすり、きっちり三回まばたきしてから、
「マジかよ...?」
と再度呟く。それは無理もない反応である。現在日本に溢れかえっている社会脱落者、社会カースト最底辺、自主的自宅謹慎つまりこの青年の、ニートたちの憧れ中の憧れに手が届くチャンスなのだから。
「いやでもおかしいぞこれはさすがに。詐欺か?詐欺だよな?洒落にならんからマジで。」
マウスを動かして怪しげなサイトの下にスライドする。
下には名前、生年月日、異世界のワールド設定等を入力する欄があった。
「...あっ。」
これ分かった。新手のゲームの紹介サイトじゃないか?異世界転生といって興味を惹き設定した雰囲気と似たようなゲームサイトに飛ばす。なるほど。良くできてるじゃないか。
ここはいっちょこの誘いに乗るべきなのではないか?今活動中のネトゲも気に入ってるが新しい刺激も欲しいし。
早速行動に移す。カチャカチャとキーボードが鳴る。
名前欄に『桐生 結人』と入力。
...さて名前と生年月日は簡単に済んだのだが後はワールド設定だな...。
俺はアバターの顔や設定に小一時間かかるルーティーンを取得しているが大丈夫だろうか。
俺の心配を裏切る様に設定は選択制だった。
『1...海と神殿の神秘的ワールド!あなたはマーメイドかマーマン、海賊になります。
2...空と大地の広大なワールド!あなたはドラゴンかハーピー、妖精になります。
3...森と街と地下の自然豊かなワールド!あなたは魔物か街の住人、妖精になります。』
ほぅ...。悩むなぁ...。
一応全ワールドには剣や魔法があるらしいからいいのだが。
マーマンになって海を泳ぐ?いやいや、
ドラゴンになって空を翔る?いやいや、
街の住人になって魔物から街を救う!だろう!
そうと決まれば『3』と入力。
「よしよし。これで決定かな。」
...ん?下に小さく入力欄が...。
『自分の部屋から』
???なんの事やら。
たぶんゲームの出発点だろう。他にもカタログからとかランダムやらがある。でもま、いいかな。
カチリと決定ボタンをクリック。
ブンと短い起動音がしてロード画面らしきところにとんだ。
画面中央に細長いゲージのようなものに亀の歩く速度で溜まっていく。
溜まっていくのを見届けたかったのだが、睡魔という邪魔者が俺を夢の世界に導いていく。起きたら終わっているはずだし、暇潰しに寝よう。
*
ぱちり
ゆっくり目を開ける。目の前に広がる景色は、光るパソコンの画面。
まだロードは終わっていないが後、数ミリ単位だな。
このまま見届けてやろうかと思った瞬間、
細長いゲージがやっとこさ全溜めされた。
ゲージは消え失せ変わりに『ワールド形成管理者にリンク許可を取っています。』と表示された。
ワールド形成管理者とはゲーム製作者様だろう。というか早くしてくれないかな。
そんな願いが聞き入れられたのか、今度は『リンク完了』と表示。
「────えっ?」
突然の浮遊感。上に上っているのか下がっているのか分からないタイプ。
気が付くとパソコンが遥か上にある。ということは下に落ちているのかなるほど。
「いやいやちげぇしなにのんきにかんがえてんの!?いやっちょまっ...。ああああああああああああ!?我がパソコンんんんんんんんん!?」
叫びながら先のみえない穴に落ちていった。
*
「ま、マジもんの異世界転生かなあああああああ!?」
目を開けると見慣れない街並みの中突っ立っていたのだ。
ごめんサイト。一度でも疑ったこと許せ。
「ほんっと...キマシタワーてかんじだぁ。異世界だー異世界。」
感動過ぎて、パニクり過ぎてなにがなんだかもうわかりません。誰か教えて。
ところで自分が今手に持っている、具体的に言えば今右手で握っている黒光りしていて、ずっしり重いこれなんだろう。
はじめまして。真夏目えなです。
こんなくそ落書き小説を読んでくださりありがとうございます。
続きを精神に鞭打ってでも書かせますので待っててください。
結人君はニートです。私もニートです。(衝撃の暴露)
お仲間ですね。(くそどうでもいい)