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理数系転生者の異世界考察  作者: とりのめ
プロローグ
3/6

恐怖と救世主

今日二個目です。いつもはこんなに早くならないのでご注意下さい。

 


「それで?もちろん貴方は今日の分の勉学が終わったから二階から落ちて(・・・)来たのよね?」


 NOとは言わせないわよ?という顔を見せながら『母上』(アリスというらしい)はどこから出したのか椅子に座って聞いてくる。しかし彼には『今日の分が終わった』という記憶がなかった。どういう形式の勉強かは知らないが、提出系のものではありませんように、と願いながら彼は答えた。


「もちろんです!母上(sir)!」

「あらそう?じゃあ確認させてもらうわ」


 緊張の瞬間である。彼は『母上』の次の行動をじっと見つめた。心臓の音と息を吸う音が少し荒かった。


「では……底辺8、高さ6の三角形の面積は?」

「(おっし!)24です!」


 心の中でガッツポーズをした。さすが5歳児(の設定)用の問題、簡単じゃないか、と彼は余裕を持ち始めた。


「次、6×8+43を13で割ったら?」

 今度は四則演算系だった。簡単なので即答した。

「7です!」


「…次、直径6の円の面積は?」

『母上』は少し怪訝な顔をして質問した。もちろん彼は即答した。

「9πです!」


「………最後、球の体積の求め方は?」

 今度は顔を引きつらせながら言った。問答無用のいい笑顔で彼は即答した。

「rを半径として4/3×πr^3です!」

「何で知ってるのよ!?」


 完全に5歳児の計算速度と数学知識を逸脱しているそれに彼女は戦慄した。


(何なのよ?円の面積は皮本の最後の方ににあるとして、球の方は貴重な紙本にしかないはずなのに…)


 一方彼は『母上』の驚愕に疑問を抱いていた。そして気付く、彼が今どのような姿なのかを…


(なんでこんなので驚いてるんだ?そんなに難しいやつじゃないと思うんだが……あ、、)


 瞬間、椅子に座っていた『恐怖』が彼に肉薄し、その肩を掴んだ。


「何で知っているのか教えてくれるわよね?もちろん、そうよね?」


(ひぃぃぃ!痛いです怖いですちびりそうですぅぅ!)


「さぁ、早く答えて楽にな「何してるんだい?母上にラシルト?」…あら、ランス」


 見ると恐怖に満ちた部屋の入り口に少年が立っていた。遠目でも明らかな美形に、小さいながらに醸し出す威厳。体の大きさに合ってはいないがしっかりと背負えている剣。『ランス』と呼ばれた彼はまさに強者らしかった。


(あれは……『兄上』?『味方』?いやまぁ味方だろうけど…兄いたの?しかもめっちゃ強そう…あ、本当に『強い』のか)


 弟(本人に自覚無し)を意図せず救った彼は『母上』から事の次第を聞いた。すると彼は笑いながら…


「ははっ、また脱走したのかいラシ!それでドジしてまんまと捕まったと、残念だったね、ふふふっ」

「ちょっとランス!もうすぐラシルトはねぇ…」

「いいじゃないか母上、今日の分はしっかりできてたんでしょ?しかもプラスで円と球まで!すごい事じゃないか。この分なら少なくとも算学は大丈夫でしょう?」

「だけどこれは…」「悪い事じゃない、でしょ?」

「…はぁ、全く誰に似たんだか。いいわ、今日は許してあげる。じゃあラシルト、明日は頑張りなさい」



 そう言い合うと母上は部屋の外へ出て行った。兄の方はというと…


「さてラシ、どんな魔法を使ったんだい?球なんて僕もおととい習ったばっかりだよ?教えてくれない?」


 割と疑っていた。怖くないだけマシだが、笑い方は母親そっくりだった。


(くそぅ、ミスったな。これはここの常識(もしくは設定)を知っておかないと…なら…なるべく『いつも通り』に…)


「何かこう、ピピッってきたの!でもこれ、そんなにすごい事なの?」


 あざとい。だがこうしないと色々面倒そうだ。特に理解もできていないことを説明することとか。そう思いながら彼は兄の返事を待つ。


「すごいもすごい!学園の中クラスでも知ってる人はいないんじゃ無いかな?」


 兄は鍵を使わずに(・・・・・・)枷を外しながら言った。


 …学園?何それ?


「あれ?学園は学園だよ。あぁ、そうか母上はなんで勉強させてるか言ってなかったんだね。来年からラシが行くとこだよ。あと、今僕が通ってるとこ。皆んなで勉学とか訓練とかをするんだ。楽しいところだよ」


(…つまり学校か。あまりいい思い出が……っいや、今俺は孤児じゃないし自慢できるものもある。大丈夫だ、大丈夫)


 目の前で起きた怪奇現象に目もくれず彼は平静を保っていた。




 その後、ランスは学園での出来事などを話した。どうやら今日、明日は帰宅日らしい。月に一度くらいのペースで家に帰る時間があるそうだ。かなりの違和感を感じたが質問する間をなくしてしまった。加えて、俺は学園に受験しなくてはいけないそうだ。他にもわかったことがある。


 まず、ここは彼の知るどの国でも無いという事。何が何だかわからないが、月、いや衛星が二つあるということから地球でも無いのだろう。これは事実として受け止めなければならない。


 次に、自分が貴族の次男であること。辺境の地の一部を治めているらしい。こんなところだから自覚は無くてもいい、というのはランスの談である。それに本家は長男であるランスが継ぐことになるので、特に考えなくてよさそうだ。


 また、自分の性格が『ラシルト』に引っ張られていることも感じた。実際、兄と話していると嬉しい、というような感情が出てくるのだ。本当に何が起こっているのか分からない。元の体に戻る方法なんてわかるはずもなく、この現象についてはもう諦めた方が良さそうだ。


 最後に、ランスが優秀すぎること。なんでも、すでに二回飛び級しており、本来学園の小、中、高のクラスの中クラス初等にあたる年齢で、高クラスの初等に入っているらしい。それなのに彼はいじめられていないらしい。むしろ信頼されているようだ。それはひとえに彼の人望か、貴族家という圧なのか。正直言って前者にしか思えない。




 色々と話して最後にランスは、


「でもこの分だと後は『魔法』だけかな?まぁ明日には検査もあることだし、落ち着いていれば大丈夫だよ」


 そう言って部屋を出た。この部屋はもともと俺の部屋らしい。


 最後に気になることを言われたがもう今日は色々と疲れていた。いつの間にかすっかり茜色に染まった窓を見ながら、彼の瞳は閉じられた。




わかりづらかったらすいません。


学園は基本、3歳ごとにクラスが、1歳ごとに等科が上がる仕組みです。もちろん留年や飛び級にあたる制度もあります。割とあり得ることのようです。

また、この国に学園は2つです。王都に第1、辺境の中心に第2という感じです。ちなみに、ラシルトの家は辺境のまた辺境で、どこの国にも属さない森に隣しています。

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