表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理数系転生者の異世界考察  作者: とりのめ
プロローグ
2/6

現状確認

 

 目覚めると、知らない天井がそこにはあった。


 彼はこういう時には必ず、現状確認をすることにしていた(初体験)。


 (確か俺は……そう、32歳、唯の科学者。今日は新しい論文の発表に行こうと車にのって……)


 ……あれ?道路走ってた後の記憶がない?


 (あぁ、そうか事故ったのか。んで、ここはどっかの病院で、今絶賛入院中という訳か)


 そこまで考えた彼は、初めて周囲の物に目を移した。


 ……それほど高くないが確かにある柵、自分の寝ている花柄の可愛らしいベット、彼の四肢を拘束している柵に繋がった枷×4


  ガチャガチャ



(……はい?)


 彼はまるで監禁されているようだった。いかにも幼児向けな、柔らかい木でできた柵やベットのシーツは、恐らく他人より早くに大人の世界へ入った彼への侮辱のメッセージを秘めているのだろう。その上で拘束され、しまいには幼児服まで着させられていた。ある種の拷問の様なものである。※あくまで彼の個人的な感想です


 彼はすぐさま推考を始めた。といっても、彼に何らかの恨みを持った者の犯行だろうことは明らかだった。


(まぁだいたい、発表の阻止や嫌がらせが目的だろうな。命を狙われる様な事してないし。しがない一科学者を捕まえて、精々理研とかに脅しをかけたりする位だろう。あんまり金儲からないと思うけどな)


 …少なくとも彼の中ではそうなのだろう。彼の研究の中には色々な意味で危ない物や、国を動かす位の物もあったのだが。


(だが手も動かさないのは辛いな。手が動いて何処かに書くものさえあれば、考えをまとめるついでに新しい研究を思いつけそうなのに…くそっ、やはりこれは拷問の類だな。犯人許すまじ)


 とはいえ、彼はどれだけ犯人を憎んでも、犯人はこない事は知っていた。なので次の手を打つことにした。


(取り敢えず叫ぶか。起きたと思って来るだろ)


 すぅ…

「はきそー!!うえぇぇえ!」


(!?)

 その声は三十代の男性が発するには高く、鋭すぎる声だった。もっとも、彼以外に驚く人もおらず、彼はらしくもなく狼狽ていた。


(誰の声だよ!あれか?事故って声帯に異常をきたしました、とかいうやつなのか!?にしては随分と幼児みたいな……みたい…な??)


 ここで彼はやっと違和感を感じた。それは、彼の体が小さいこと。このベットに描かれた小さな花が一般的な大きさなら、手のひらで握って掴める位のはずである。ところが彼の手は花と同じくらいの大きさだった。それはまるで幼児のようで…


(いやこれまんま幼児じゃ「何バカなこと言ってるの、『魔法酔い』させる程制御甘くないわよ」…………へ?)


 声のした方を見ると、そこにはさっき『落ちた時に見た』女性が立っていた。さっきまではいなかったはずだが…


「ぎ、」 「ぎ?」

「ぎゃあぁぁぁぁああ!!!!」(ガンガン!ガン!)


 彼は意図せず二度目の叫び声をあげた。避けようと体を動かすが、枷と柵の柱が激しくぶつかるだけ。地味に右半身が痛くなってくるが、止められないようだ。


(なに!何なの!?何なんだ!?)


 今の女性の出現で彼は少し前のことを思い出した。『階段から落ちた(車で事故にあった)』こと、全身が痛かったこと、先の『母上(女性)』に『回復魔法(変な光)』をかけてもらったこと…


(母上って何だよ!回復魔法?意味不明だよ!!)


 今までの彼の中でもっとも混乱、興奮した瞬間だった。しかし流石と言うべきか、感情の制御がうまい、もとい起伏が少ない彼はすぐに落ち着いた。


(ま、まずは今わかってることを正確に、簡潔に…

 ・取り敢えず生きている

 ・知らないはずの記憶がある

 ・幼児(の大きさ)になって拘束されている

 ・わかっていないことが多すぎる

なんつー状況だよ…)


 観察(この場合は確認)の後は色々とするべき事があるのだが…実験とかではないのでいきなり考察に移る。決して焦って先走ったわけではない。断じてない。


(可能性として………何も挙げられない!ならまず…記憶についてか?)


 記憶_____それこそまさにうろ覚えだが、記憶は脳の神経細胞同士に電気信号が流れることで生成されるとか何とか…


(くぅ…脳とかの方は全く興味がなかったからな…基本的なのもうろ覚えだ…)


 しかしこの理屈で言えば、知らないはずの記憶があるということは間違った電気信号が流れたということになる。その原因が事故の衝撃となればとても簡単な話だが…


(なら妙に偽記憶に合ったこの状況は何だ…?まるで偽記憶の方が正しいみたいだ………っ!?)


 彼は一つの可能性にたどり着いた。つまるところ、正しいと思っていた記憶が偽物で、本物は『母上』記憶の方である、ということ。この状況的にはまず間違ってはいないだろう。これが夢だとしたらこれほど嬉しいことはない、と彼は思った。意味不明、理解不能な仮説ではあるが、どちらの記憶が正しいにせよ、これが夢か現実かにせよ、直接的に確かめる方法はない。彼は一先ずこの問題を先送りして、今はこの『危機的状況』に対応する事にした。それはつまり…


「何なの?暴れたと思ったら随分と神妙な顔して考え込んで。もしかして言い逃れしようとしてるのかしら?」


 とてもとても怖い笑顔を見せる『母上』への対処である。




今後も科学知識が出てくると思います。一応調べてはいるのですが、どうしても完璧に理解はできていないでしょう。そのようなことも含めて何か間違いを見つけた方は是非とも言って下さい。後学のためでもありますが、より良い作品にするために、どうぞよろしくします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ