表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盲目の歌姫と守護の剣士  作者: 三崎 悠弥
序章
3/4

2.新しい命と暗闇の世界

 次に目が覚めたとき、ボクの視界は真っ暗だった。

 部屋が暗いのかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。

 目を開いている感覚はあるが、視界に何も映らないのだ。

 音は聞こえるし、上手く発音できないが声も出る。

 体は……力は入らないが、問題なく動く。

 しかし、やはり視界だけは何も映さなかった。

 どうしたものかと考えていると、女性の声が聞こえボクの身体を抱き上げた。

 抱き上げられたときの感覚で、ボクが赤ちゃんにまで戻ったのだと改めて認識した。

 記憶や自分の意識を持ったまま、幼い子供として転生するというのは何とも不便なものだなって感じる。

 どうせボクとしての意識が目覚めるなら、ある程度成長してからの方が良かったな、と思った。


「レティ、そろそろオムツ交換の時間よー」

「うー」


 うーん、何というかオムツ交換は流石に勘弁して欲しい。

 生まれ変わって赤ちゃんに戻ってしまったとはいえ、元々は健全な高校男子だ。

 おそらくこの声の持ち主はこの世界での母親だとは思うが、それでも自分の下腹部は余り見てもらいたくはなかった。

 かといって自分で出来るかと言ったら、筋力的な問題で難しいだろう。

 仕方がないので、ボクはオムツを交換されることを受け入れた。

 というか呼ばれて判ったけど、この世界でのボクの名前はレティって言うのか……。今後レティとして生きていかなければならないのだから、呼ばれて反応できるように覚えておかないといけないな。

 そうこう考えているうちにオムツが取られ、股間が涼しくなる。

 そして股間を前から後ろに拭き取られる感覚がしたのだが、ボクはここで初めて股間の違和感に気付いた。

 簡単に言ってしまえば、長年連れ添ったアレが無いのだ。

 そして先程股間を拭かれたとき、母親はボクの股間を前から後へと拭いたのだが、男だったときは感じることのなかった様々な感覚が身体を駆け巡った。

 うん、回りくどい言い方はやめて単刀直入に言おう。

 どうやらボク、女の子に転生しちゃったみたいです。

 そしてその他に気付いたこともあった。

 母親はテキパキとボクのオムツや服を交換しているため、この世界は決して暗闇の世界というわけではなさそうなのだ。

 ボクは母親の腕の動きや、時折聞こえる声を頼りに母親の居るであろう場所を見つめる。

 そして、そこにいるであろう母親に反応して貰おうと、意を決して声を出してみた。


「……あーしゃ?」


 ボクは舌っ足らずの声でお母さんと言ってみるが全然言葉になってない。

 だけど、そんなボクの声を聴いて、母親は作業する手を止めた。


「……レティ? ひょっとして今、お母さんって言ったの?」

「うー」


 母親の質問にボクはうん、と返したつもりだが、やはり舌っ足らずの答えしか返せない。

 目の前が真っ暗なので、母親の表情を見れないというのがこんなに辛いとは思わなかった。

 多分見えてたら、期待と不安に満ちた顔をしているんだろうな-、と勝手に想像してみる。


「ねえレティ? レティシアって言ってみて?」

「? れーてぃーしーあ?」


 うん、ゆっくり口を形作って発音しようとすれば何とか発音できるらしい。

 ……って、ボクは今生後何ヶ月なんだ? つい調子に乗って言葉を返しちゃったけど、普通この位の歳の子って話す事は難しいはずだ。


「~~っ! レティ凄ーいっ!」


 だけど母親はそんなのお構いなしのようで、僕が言葉?を話した事の方が嬉しいのか、ボクに思いっきり抱きついてきた。

 うーん、母親心って判らん。

 頬をすりすりされてるが、感覚からして顔をくっつけられているのかな?

 しかしレティシアでレティか……。この世界では横文字の名前と愛称が付けられることが普通なのかな?


「……レティ?」

「う?」


 何かに気付いた母親が僕を見つめてる……ような気がする。見ることは出来ないが、その分別の感覚が鋭くなっているのかもしれない。


「……ねぇレティ、お母さんの顔、見えてたら返事をして?」


 母親の不安そうな声が聞こえ、ボクは確信した。

この世界が暗闇なのではなく、ボクに視力が一切無い、つまり盲目なのだと。


「……やっぱり、レティは見えていないのね」


 ボクの沈黙をもって、ボクに視力が無い事を確信した母親は僕を両腕で抱きかかえた。

 喜びから一転、母親の悲しむ声が聞こえるが、ボクはかける言葉が見つからず言葉を返せなかった。

 視界の無いボクの頬に、温かい滴が落ちてきた。

 母親の嗚咽が聞こえることから、多分目の見えないボクのことを悲しんでいるのだろう。

 ボクはボクで、何も見えない状態でどうやって生活していけば良いのかと、心のなかで頭を抱えてしまった。

 お互いにいたたまれない空気のまま、時間は過ぎ去っていった……。


うーむ、文字数……orz

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ