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盲目の歌姫と守護の剣士  作者: 三崎 悠弥
序章
2/4

1.最悪の目覚めと白の世界

まだ導入部分なのでタイトル詐欺が続きます

 ゆっくりと、まどろみから目覚めたボクは、真っ白な場所に居た。

 周りを見回し、ここが何処なのかを考えるが答えは出ない。

 それもそのはず。

 周りの景色は上下左右前後、何処を見ても一面真っ白であり、色が付いているのは自分だけという異常な場所だった。

 何故自分がここに居るのか。

 それを思い出すために、直前までのことを思い返す。

 そして、自分の意識が途切れる直前のことを思い出したボクは妹の姿を探すが、白一色の世界で妹の事を見つけることは出来なかった。

 というか、ボクもあれだけ暴行を受けたのに何処も痛くないし、身体の何処も怪我をしていない。


「夢……って訳じゃないよね……」


 意識を失う前に自分や妹が受けた行為を思い返し、ボクは拳を強く握った。

 もしあれが夢なのだとしたら、ロクでもない悪夢だ。


「今のこの状態の方が、どちらかと言えば夢かもしれませんね」


 不意に、何処からか声が聞こえ、ボクは声の主が何処にいるのか探した。

 しかし白い世界を360度見回しても見当たらない。

 気のせいかとも思ったが、その声はまたすぐに聞こえてきた。


「私はこの世界、この場所、この時間そのもの。姿は見えず、声だけが届く、そのような存在です」

「何だか神様みたいだね。ということは、ここは死後の世界って解釈で良いのかな?」

「はい。貴方は後頭部を強打され致命傷を負ったところで、ダメ押しに心臓を一突きされてお亡くなりになりました」


 なるほど、やっぱりボクは死んだのか。

 暴行を受けていた時点で既に痛覚は麻痺していたし、最後に感じた痛みが後頭部の殴打によるもの、そして最後にボクの胸に突き立てられたのは、恐らくナイフだろう。

 そういった自分が死ぬ要素が多数あったため自分が死んだという事実は受け入れられたものの、どうしても確認しておきたいことがあった。


「その、妹は……雫はどうなったんですか?」

「貴方の妹、雫さんはあの後保護されました」


 無事という単語が無かったのは気になったものの、保護されたという言葉に、ボクはひとまず胸をなで下ろした。

 だが声は続き、その後起こった残酷な事実をボクに告げた。


「しかし過去の出来事に加え、その過去から立ち直らせ、心のよりどころとなっていた貴方が、自分のせいで亡くなったという事実に精神が耐えきれず、程なくして精神的衰弱による免疫力低下が引き金となり、急性肺炎を患い亡くなっています」


 妹もボクと同じように死んでしまった。

 その事実にボクは膝をついた。

 守ると誓った妹を、ボクは守ることが出来なかった。

 死んでも死にきれないとは、まさにこのことだろう。

 何故彼女はここまで残酷な運命を辿らなければならなかったのだろうか。

 両親を失い、長い時間をかけてようやく見つけた心のよりどころを自分のせいで失うなんて、あまりにも残酷だ。

 神様が居るとしたら、ボクは妹にそんな残酷な運命を与えたその神様を恨むだろう。

 しかし今ボクに語りかけているのは神様ではない。

 何故かそれが直感で理解できた。

 だから、ボクが恨む出来るものはこの何も無い世界ではない。


「そういえば、ここは何処なんです?」


 気持ちを切り替えるため、三度辺りを見回すが、やはり辺り一面真っ白で何も見当たらない。

 温度は恐らく適温なのだろうが、日差しも無く風も吹かないため、変に焦りがうまれる。


「ここはあなたの世界で亡くなった方々の魂が集い、次の世界へ渡るための経由地。亡くなった方々の命は、ここを通ることで魂の記憶と意志を浄化され、新たな世界へと旅立っていくのです」


 その言葉を聞いて、ボクはこの風景が真っ白である理由を理解した。

 ここは本来、ボクのように意志を持って目覚めることがないはずの場所なのだ。

 知らず知らずのうちにここを通り、新しい世界へと旅立っていくのが普通なのだろう。


「ひょっとして、ここでボクの姿があるのは珍しいことなの?」

「はい。あなたとは直接話をする必要があったため、仮の身体を用意させていただきました」


 仮の身体と言われ、ボクは自分の身体を触って……みようとしたが出来なかった。

 何度自分の身体に触れようとしても素通りしてしまうのだ。

 ……ナニコレ、気持ち悪い。


「仮の身体ってこれ、ただ自分の生前の姿の形をホログラムにしたような感じで実体無いよね?」

「この世界は質量というものが存在しません。あるのは魂だけですので、無から有を作り出すことは出来ないのです」


 要約すると、この世界には身体を造る為の物質が無いから触れるような身体を作れないということらしい。


「さて、話を本題に戻しましょう。本来であれば、死んだ魂は円環の理に導かれ新たな世界で新たな生を得ます。ですが、転生する世界は決して自分で選ぶことは出来ませんし、記憶を持って転生することもかないません」

「本来は、ということは、ボクは違うってこと?」


 そう言いつつも、ボクは仮の身体を与えられてこの場所に留まっていることからおおよその見当は付いていた。


「はい。貴方には転生しても消すことが出来ないほどの強い思いと意志があります。なので、貴方には雫さんの魂が転生した世界へ転生して頂きます」


 雫と同じ世界に転生できる。

 その事実が判っただけでボクは二つ返事で頷いた。


「今度こそ雫を守る。二度と同じ失敗なんてするものかっ!」


 迷いなどない。

 ボクは妹を守るためならどんな困難だって乗り越えると、新たな命にかけて改めて誓いを立てた。


「では貴方を雫さんと同じ世界に転生させます。注意事項として、特例として貴方の記憶や意識は残ったままになりますが、性別は選べません。そして雫さんが同じ性別とも限りません。その事は忘れることのないようお願いします」


 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、ボクの意識は再び途切れた。

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