葡萄と桃と
自分の書いた話の中で、主人公がジャムを煮るシーンが有ります。ありがたくもたくさんの感想を寄せていただけた話だったのですが、その中にご親族の方がジャム専門店を家業にされているという方がいらっしゃいました。
その方曰く『巨峰のジャムもおすすめ!』とのこと……葡萄。大好きで、ついつい生食ばかりでジャムまでまわりませんでした。
と、いうわけで買ってきました “種なし巨峰”
近所にですね、贈答用をメインに扱うちょっと高級系の果物屋さんがあるのです。冷蔵コーナーに箱入りのメロンとか、一房何千円もする宝石みたいにキラキラ輝くシャインマスカットとかももちろんあるのですが、旬のものは割とお手頃価格なのです。そして専門店だけあって総じて実が大きくお味もよろしい。ちょっとした手土産やお見舞いに重宝するお店なのですが、立ち寄った時にちょうど巨峰が安かった……何故かスーパーの特売よりも安かった。そして、少し痛んだ桃が大特価。
これは、もう、買うしかない。買ってジャムを煮るしかないと、すでにスーパーで味噌や醤油を買って腕がつりそうに重いのに、重量級の果物を手にしました。
(それにしても、どうして重いもの・かさばるものはいつも同時に買うはめになるのでしょうか。私の計画性のなさの現れでしょうか……)
私の持っているレシピは古い物なので砂糖は果実の半量と、基本的に糖度が高めです。保存食としての役割を全うさせていて好きなのですが、今回買った葡萄も桃もそれ自体が十分に甘い。流石に砂糖の量を少し控えて4割にして、いつもは入れないレモン汁も加えました。
くつくつ、ぐつぐつと鍋の中で煮立つ果物の甘ぁい匂いが家中に漂います。
桃のジャムは何度か作ったことがあるので特に考えることもなく、美味しそうに出来上がりました。ちなみに桃や杏のジャムはバターと合わせるのが好きです。ジャムの甘みとバターの塩気が合わさって、最高ですね。
さて問題の巨峰です。葡萄ジャムは初めてなので作り方を調べると、皮を先に剥いたり、ミキサーにかけたりといろいろな手法があるようです。私は一番作りやすそうな「皮付きのままそのまま煮る」をチョイス。
火が通るとトマトの皮のように剥けてくるので、煮ながら箸でひょいひょいと取り出します。皮に実が残っていたらスプーンでこそげたらいいかと思いましたが、そんな必要もないくらい綺麗にペロンと剥がれました。
皮も一緒に煮たので、色もしっかりと濃い葡萄色になっています。果肉は混ぜながら穴杓子で適度に潰しました。おお、いい感じです。
そして出来上がり、消毒したガラス瓶に移そうとしたら、レードルからの落ち加減がどうも重たい気がする……しまった。
少しだけ、あとちょっとだけ煮詰めよう、の最後の数分が余計だったようで、残念なことに少々固めに仕上がってしまった様な予感。痛恨のミス。煮詰め加減はジャムの汁部分を冷水にぽたりと落として固まるかどうかで判断するのですが、どうも今回これを見誤った気がします。
結果、やっぱり少し固めでした。とろり、というより、もったり。すくったスプーンを逆さまにしても頑張ってくっついています。ブルーベリーと同じで煮詰まりやすいのですね、勉強になりました。
まあ、そうは言っても出来上がった巨峰ジャムは香りも良く、味はまさに巨峰! という感じで食べ応え満点。せっかくなので甘くないスコーンを焼いて一緒に楽しみました。贅沢気分がすごかった……教えてくださった方に大感謝です。
自分の書いた話から膨らんで、実生活にも何かをもたらす。こんな素敵な連鎖を感じながら、次は煮詰め過ぎないぞとリベンジを誓ったのでした……たしか、巨峰の隣にピオーネ(種なし)があったはず。今度こそ。
その後巨峰でリベンジ成功。え、ピオーネ? ……そのまま美味しくいただきました!




