第三話「Dead or Alive」
流石にいやになってきたので、コスタヤに頼んで植物を動かすのをやめてもらった。
コスタヤ「生きて還るとは言ってもね、簡単にはいかないんだ」
マーシャ「…」
コスタヤ「それには、さっき説明した『死んだまま還る事を選んだ死者』の協力がいるんだよ」
マーシャ「!」
少しずつ話がわかってきた。
コスタヤ「まず、生還を選んだ死者には、七日の期限が与えられるんだ。それまでに与えられたノルマをクリアすれば見事生還できる」
マーシャ「ノルマって?」
コスタヤ「残念ながらそれも人によるんだよ~。簡単に行くケースもあるけど稀だね。大体ノルマの難易度は高いよ」
マーシャ「死んだまま還る事を選んだ死者の協力って何?」
コスタヤ「そう。全てのミッションにおいて、死んだまま還る事を選んだ死者の協力は必要不可欠なんだ」
コスタヤはどうも質問に対して答えになっていない答えを返すのが得意らしい。
コスタヤ「あ、ごめんね。悪いクセなんだ」
しかもしょっちゅう人の心を勝手に覗くときている。
この男、生前はさぞ嫌われていたに違いない。
コスタヤ「ノルマをクリアしたあと現世に向かうんだけどね…本来、死者が蘇るなんてあり得ない事じゃん?」
マーシャ「そうね」
コスタヤ「それを無理にやらせるんだから、当然何の力も持っていない君らにそんな芸当は無理難題であってだね」
マーシャ「死んだまま還る、霊体となった人間があーだこーだしてそのゴタゴタを何とかするってわけね」
コスタヤ「そ。無茶苦茶な理屈だけどまあ世の中そんなもんだ。って、ここは世の外だったね」
ははは、と一人で勝手に笑ってるコスタヤを尻目にマーシャは考えた。
つまり、こうだ。
死ぬ。
ここに送られる。この時体は生前のように元通りになっていて、それと何ら変わりはない。
まず死んだまま現世に還るか、生きて現世に還るか、このままここに残って死後の世界を堪能するか、の3つから選択を迫られる。
前者について。
死んだまま現世に還る事を選ぶと、まず霊体になる。
そして生きて現世に還る事を選んだ死者を探し、彼らに協力することで現世を目指す。
現世に戻っても霊体のままで、生き還れるわけではない。
生きて還る事を選ぶと、まず七日の期限が与えられる。
そしてそれの刻限が過ぎるまでに、前述の霊体人間の協力のもと、与えられたミッションをクリアしなければならない。
ここから察するに、恐らく再挑戦などといった甘い事は出来ないのだろう。
そして、成功すれば生きて現世に還る事ができる。
コスタヤ「多くの人は、このままここに残って死後の世界を謳歌する選択肢を選ぶよ」
マーシャ「え、なんで?」
コスタヤ「たまたまここは神秘的な森のなかだけど、町みたいなところもあるんだよ。いやー、現世の都会にも負けないいいところさ。だから現世よりこっちのがいいってこっちに居座る人の方が多い」
しばしの無言。
コスタヤ「あそうだ。君、いつから来たの?」
マーシャ「へ?」
質問の意味がわからず、マーシャは困惑した。
咳払い。
コスタヤ「失礼。今日は西暦何年何月何日?」
マーシャ「え?えーと…」
コスタヤ「参考までに言うけど、君が亡くなったのはついさっきの事だからね」
マーシャ「ああ、そうなのね」
沈黙。
マーシャ「1943年7月7日よ」