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  作者: 栗栖紗那
6/7

「それじゃあね」

 他愛もない世間話なんぞをすることもなく、オレはネットカフェを出た。

「…………」

 6時過ぎ、すでに陽は登っており、通勤の人々がまばらにだが見え始める。

 帰るか。

 家に帰ったオレは再び母親の出迎えを受けることとなった。

「ただいま」

「ええ、お帰りなさい。今日もランニング仲間?」

「そうだけど」

 しかし、母親もそのランニング仲間が女子だとは思いもよらないだろう。

「?」

 むしろ、オレの表情が変だったのか、首を傾げられた。

「シャワー浴びるなら浴びちゃいなさい。朝ごはん、用意するから」

「わかった」


 シャワー、朝食を済ませて自室に引っ込む。やはり、1人は落ち着く。

 さて、どうしようか。オレは早朝のランニング以外は特に日課にしていることはない。それこそ、日がな一日ごろごろしているだけのこともあるし、マンガ、小説問わずに読書していることもある。

 だが、今日は考えがない訳でもなかった。

 机に向かい、ノートPCを起動する。目指すはマシロがWEBラジオを公開すると言っているサイトCOAだ。

 サイトのトップページを開くと、取り扱っているコンテンツの種類一覧。そして、それぞれのカテゴリのオススメと新着が表示されていた。

 サイトの構造としてはわかりやすい。が、この構造の欠点というべきか、人気があるか、もしくは常に最新コンテンツを届けない限りは人の目に触れにくいということだ。いや、きっとこれはこのCOAに限った話ではないのだろうけど。

 マシロがどこまでやる気なのかはわからないが、他のツールを使用しての告知もうつべきなのではないだろうか。試しに、もっとも手軽なツールだと考えられる呟きサービスを覗き、COAのタグを検索する。すると、そのほとんどが告知であり、そこに時折混じって他者からの紹介がある。

「ふーん……」

 だが、紹介をされているコンテンツとCOAがオススメしているコンテンツが必ずしもイコールではないことに気付く。COAのオススメが何を基準に選定しているかはわからないが、それ以外にも固定の客などがついている場合もあるようだ。

 なら、あえてリスナーの数を増加させず、質のいい、密度の濃いコンテンツを提供することも考えられる。むしろ、変人を望んだマシロの意向としては、単純にリスナーが増えればいいというものでもないように思う。まあ、オレが勝手に決めていい方針でもないけど。

 まあ、今からどうこう言った所で仕方ないか。でも、なんだか心は決まりつつあるような気もする。

「実際問題どんなもんをやればいいのか、参考に幾つか聴いとくか」

 オレはオススメのものと新着に表示されていたものを適当に開く。生放送形式のもあるみたいだが、そちらはパスさせてもらった。

「…………」

 いくつか聴いてみて思う。真面目な感じでとある趣味嗜好を扱き下ろす番組もあれば、ただただ馬鹿やって大騒ぎしているものもあるし、公共電波かと思ってしまうような出来のいいニュースもある。

 結局はそれこそ嗜好になるのだろうが、癖があるぐらいがもしかしたら丁度いいのかも知れない、なんて思う。人気のあると言われるものの傾向を見ると、耳に残らない垂れ流しは要らないらしい。オレも多分、聴くなら少しぐらいアクの強い方がいい。

 どうせ、これは趣味であり、ただのニュースならそれこそ国営放送でも見てればいい。ここに求めるのは、顔も見知らぬ誰かの価値観そのもの。アマチュアらしい、メッキの塗られていないむき出しの何か、だ。

 面白い。素直にそう思う。だが反面、オレはそこまでのものを提供できるのか、と。

「どうだろうな」

 呟き、オレは天井を仰ぎ見た。

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