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東方皇国記  作者: するめ
星下の誓い
3/3

2 嫉妬(上)

どうもするめです。

今回の話を間違えて別の小説の方に投稿してしまいました。

まだなれないので、これからも投稿ミスはあると思いますか、どうかご寛容に。

次話は明日あたり投稿します。

翌日から、エリスとアレクは新しい家族を迎えるための準備を始めた。当初エリスは大森林を出ていくことを考えていたが、奥さんの歎願によって村から歩いて数刻の場所にすむことが許された。奥さんはエリスのことを年の少し離れた姉のようにしたい育ってきた。そのためエリスやアレクのことを家族のように思っていた。そんな二人が遠くへ行ってしまうことを悲しみ、必死に長老に嘆願したのだ。長老は仕方なくその願いを受け入れたのだ。長老であるコルトは奥さんに甘いところがある。自身の息子であるジルよりも、奥さんを大切にしているようにさえみえる。義理とはいえ、娘に対して甘い老人のことを村の誰もとがめることなどできないだろう。大切な義娘のいうことを断れるほどに、コルトは息子夫婦を愛していたのである。

 エリスたちの新しい家は、ジルが中心となって村の男たちが二日で用意してくれた。簡易で小さな家とはいえ、4人が暮らしていくには十分なものであった。家が来て6日の間、アレクは引っ越しといつもの狩を、エリスは新しい家族のための服を再訪しながら過ごした。そうしてついに二人が目をさました。

 コルトの家に急いでやってきたエリスとアレクに、二人は警戒の眼差しを見つめている。コルト一家は目を覚ました二人に現状を説明した後、エリスたちに気を使い家を出て行ってしまった。この場には4人の家族しかいない。そすがに暖かい団欒とはいかなかった。

 「おはよう、でいいのかな?いや、初めましてかな。俺はアレクサンダーこれから君たちの家族になる。よろしくな。」

 まず動いたのはアレクである。アレクは個の張りつめた空気のまま時が過ぎてしまうことを面倒に感じ、とにかく行動を起こすことにした。

 アレクは自己紹介とともに手を差し出した。それと同時に、黒髪の少女は怯えたように黒髪の少年の背後に隠れた。少年は少女を守るようにアレクをにらみつけている。

 「う~ん。そんなに緊張しないでほしいんだけど。別にとって食ったりしないからさ。」

拒否されたアレクの手は虚空にさびしく浮かんでいた。その手を所在な下げに頭へ持っていき少女のあために乗せてなでようとした。すると少女は体をフルませて知事困ってしまう。少女にアレクの手が触れる前に少年によってあれ久野手はじかれた。

「痛っ!・・・はあ、面倒くさいなあ。」

 弾かれた手で自身の頭をかきながら、アレクはどうしたら最小の行動で二人から信用を勝ち取れるのかを試行する。思考の世界に入ったアレクの眉間には皺が寄せられており、二人から見ればアレクが怒っているように見えた。黒髪の少年は次に来るだろうアレクのこぶしを予測して体中の筋肉に力を入れた。

 その時、三人は完全にエリスの存在を忘れていた。それがよかったのかも知れない。エリスが動いたことに三人とも気がつかなかった。三人が気づいた時にはエリスは黒髪の二人を抱きかかえていた。そうして左手は優しい手つきで少女頭をなでていた。

「うふふ。辛かったのね。もう心配いらないわ、これからはわたしが「お母さん」が守ってあげますからね。二人ともよく頑張りました。いい子いい子。」

必死に離れようとする少年とおびえる少女。しかし、しばらくすると二人とも抵抗と怯えをやめた。そうして徐々に安心した表情を浮かべ始めた。

「これだから母さんにはかなわないよ・・・。」

自身ができなかったことを一瞬で成し遂げた母への尊敬、自分だけの「母さん」が二人に取られたような寂しさ、そして新しい家族ができたのだからしっかりしなければという決意がアレクの中で渦巻いていたことをだれも知らない。


半年の時が過ぎた。

4人は少しずつうちとけていった。

黒髪の少女はアンという名であった。年は6つである。アンは言葉がしゃべれなかった。どうやらこのたびの戦で受けた恐怖によって言葉を失ったらしかった。初めのうちはいつも少年の後に隠れて怯えっぱなしであったが、今では3人のまえでおびえることはなくなり、何時もエリスの後をついて回っている。エリスも実の娘のように可愛がり、ことあるごとにアンを抱いて頭をなでる。アレクはアンに追い出されるようにエリスの胸を離れた。エリスは今でも変わらずアレクを抱きたがるのだが、アレクはそれを嫌がるようになった。アレクもアンを妹として可愛がり、エリスの胸の中はもう妹のものであると考えていたのだ。アレクの少し遅い母離れは妹ができたことでなされた。そのことをエリスは寂しがった。

黒髪の少年はシュウという名前だった。シュウはどうやらアレクと同い年らしい。シュウはアンとは違いかなり大人びているようで、エリスに甘えることはしなかった。彼女のことをエリスさんと呼んでいたが、そのたびにエリスによって強制されるため、今でははずかしながらも「母さん」と呼んでいる。「母さん」と呼んだあとには必ず顔を赤くして恥ずかしそうにしている。そんな様子をみてエリスは愛おしそうに笑っていたが、アレクはいい気がしなかった。

シュウはアンのことを「アン様」と呼んでいた。二人の詳しい事情についてはシュウが話たがらないことと、エリスたちが聞こうとしなかったためわからなかったが、そうやらアンは東方の御姫様でシュウとは昔からの知己であるらしい。エリスたちの家族になってからはアンが「様」をいやがったため、今では「アン・・・」と呼び捨てにしている。アンの後に少し空白があることにアンは不服そうな顔をしていたが、シュウにとってはそれが精いっぱいであった。


 アレクとシュウはあまりうちとけられていなかった。シュウは口数が少ないためアレクは彼とあまり会話をすることがなかった。またシュウはあまりエリスの手伝いをしない。日が昇ると森へ出かけていき、暗くなると帰ってくる。そうしていつも多くの傷を作って帰ってくる。その痛々しい姿をみてエリスが心配するのを、アレクは許せなかった。


 ある日アレクはシュウの後をつけることにした。日の出とともにシュウは家を出て行った。シュウの姿が消えたことを確認すると、アレクも起き上がり、シュウの後を追った。家を出るとシュウは北の森の中へときえていった。シュウの姿を見失わないように、アレクはその後をおった。かなりの時間が過ぎた。アレクの足が疲労を感じ始めたころ、木々が開け、屹立する岩の壁が見えてきた。その壁には大きな横穴があいている。その穴の前に立ったシュウの右手にはどこで拾ったのか、木の棒が握られている。シュウはその棒を両手にぎると自身の体の中心に構えた。しばらくの時間が過ぎる。

 すると突如洞窟の中から獣の咆哮が聞こえてきた。地面を揺らす重たい足音が徐々にこちらへと近づいてくる。その足音に向かって棒を構えたままシュウは身じろぎ一つしない。

「なにやっているんだよ、アイツ!」

 木蔭からシュウの様子をうかがっていたアレクはとっさに飛び出そうとした。しかし、恐怖に震える足は云う事を聞こうとはしない。自身がここまでの恐怖を覚えていることにアレクは驚愕した。普段の狩で気を抜いたことはないが、ここまでの緊張間を感じ取ったことはなかった。それは相手が熊で会った時でさえここまでではなかった。ということは今シュウが対峙している存在はそれ以上のもの。

「魔物」

不意にそんな言葉が口を出る。その存在をアレクは昔ジルから聞いたことがあった。この世界には普段アレクたちが狩っているような動物以外に、強大な力を持つ魔物という存在がいる。それがどのように生まれてくるのかは分かっていないが、時々とてつもない力を持った魔物が現れ人々を殺戮するという。ジルも昔交易の途中で遭遇したことがあるという。その時は街の近くであったため、50人の兵士たちがなんとか魔物を仕留めたという。そんな存在にシュウ一人で勝てるはずがない。

 洞窟から魔物が姿を現した。その姿は巨大なイノシシのような体をしておりジルよりも大きい。その魔物は二足歩行をしており、見ようによっては巨大な猿のように腰は丸まっているイノシシは右手に錆びた剣を握っている。

 シュウはその姿を確認すると一気に駆け出し、魔物の懐へと入り込んだ。それに合わせて魔物は剣を振り下ろし、シュウにたたきつけた。シュウはその剣を右に交わして木の棒で魔物の横腹をたたきつけた。しかし、筋肉で膨れ上がった腹には傷一つつくことなく木の棒は折れてしまった。攻撃を終え体制を崩したシュウは一瞬動くことができず、その一瞬の隙に魔物の左手にとって殴りつけられた。シュウの体は弾き飛ばされ、地面に転がる。撃たれた左肩を抑え、痛みのために立ち上がることのできないシュウの下に魔物がと通って行き、右手に持った剣を振り上げた。

 「危ない!」

シュウが危険だと感じた時、アレクの足はさっきまでがうそのように力にあふれていた。そしてアレクは木陰からシュウの下に駈け出していた。


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