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ステップアップ

作者: 但馬ほずみ

お話がおりてきました~。

 このたびめでたく幼なじみからカレカノに昇格したあたしたちは、学校帰りにコンビニへ。ヤツが今日発売の週刊誌マンガを買うためにだ。

 カレカノに昇格したといっても、今までと何らかわりない関係に、あたしはちょっともやもやしてる。

 そんな思いでいるときに、ヤツがレジに並んでる横にいたあたしは、それを発見した。


「あ、初恋ショコラだ!」


 初恋ショコラとは、全国チェーン展開をしているこのコンビニのチョコレートケーキで、CMキャラクターはあたしだって知ってる国民的アイドルグループが努めている。いや、初めてCM見たときは、ちょっとポッとなっちゃったよ。だってさ~、アップで「ケーキとぼくのキス、どっちがすき?」だよ?隣で見てたヤツは、ケッとか言ってたけど。いいじゃん、乙女の夢なんだから。


 ケーキのほうは、透明なプラスチックの容器と黒色のフタに金のリボンのちょっとリッチなパッケージに、フォークでもスプーンでも食べられるほどよい硬さのケーキ。しかも従来のチョコレートケーキに比べてカロリーオフなんて、人気が出ないわけがない。いつ行っても売り切れなので、あたしはまだ食べたことがないのだ。友人に「絶対あんたの好きな味」と太鼓判を押されていて、あたしも食べるのをひじょ~に楽しみにしていた。

 その、初恋ショコラが今ここに!なんで、お財布が寂しいときにあるかなぁ?!お小遣い支給日直前のあたしには、リーズナブルなコンビニスイーツとはいえ、きつかった。


 あたしが、ジ~っと初恋ショコラを見つめているのに気がついたヤツが、ひょいと手に取った。


「あ」

「食いたいんだろ、買ってやる」

「…ありがと」


 食い気に負けたあたし。ここは素直におごられよう。


 幼なじみなあたしたちの家は、もちろんご近所だ。何の疑問もなく、一緒にヤツの家に行き、おばさんに挨拶してリビングのソファーに陣取る。2人賭けのソファーの左側。ここがあたしの指定席。ちなみに右側はヤツの指定席ね。


「おばさん、買い物行くから飲み物とか好きに飲んでね~」というおばさんのお言葉に従い、ケーキに合わせるべく紅茶をいれる。ここんちは、もはや第二の自宅だからね。もしかしたらヤツより詳しいかも。ふふふ、おばさんのとっておきのお紅茶をいただこうではないか。

 温めたポットにたっぷり茶葉を入れ、沸きたてのお湯を注ぐ。うん、ジャンピングOK!しっかり蒸らしたら、美味しい紅茶の出来上がり。あ~、いい香り。


「ほい、紅茶」

「ん、何も入れないのか?」

「ケーキにはストレートだよ!」


 力説する私に、そうかとヤツは読んでたマンガを横に置いた。わたしは、いそいそとケーキのケースを開ける。う~ん、チョコのいい香り。これはおいしそう。


「うふふ、あたしの好きな味だって言うけど、どうかしら~」

「おい、悪役みたいな笑い方だぞ」

「失礼な!では、いただきま~す」


 パクンと一切れ、口に入れた。


「~~~!おいしい~、これ好き~~!」


 と、そのおいしさに悶えていたら、隣のヤツが動いた気配が。


「へえ、じゃあさ――」


 頬に手を添えられて顔の向きがかえられた。ヤツの顔が目の前に、と思ったら、唇が重なった。


「ケーキとぼくのキス、どっちがすき?」


 目の前の奴が、にやっと笑いやがった。


 突然の出来事に、頭がついていかなかったあたしだったが、理解した途端、ボンって真っ赤になる。


「~~~ば、ばか~!ケーキ分けてあげないんだから!」


 やっと口から出たのがこんな言葉。いや、もうなにこれ。混乱のきわみ。

 その後、しばらくすねてたあたしを、ヤツは子どものように頭をなでた。


「これで、もう幼なじみじゃないだろ?」

「…うん」


 かくして、あたしとヤツは今度こそ本当に幼なじみからカレカノへとステップアップしたわけだ。初恋ショコラ様様である。あ、どっちが好き?の答えは言わされましたよ、しっかりと。どっちかって?それはご想像に任せます。まあ、わかるでしょ?



おしまい 


 

ちなみに、彼はず~~~っとキスのチャンスを狙っていました。

毎日帰宅しては、今日もダメだったと肩を落とす日々が続いていたことでしょう。合掌。

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