第56話: 二度目の波
はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。
日本で全面戦争が勃発するよりも、はるか以前。
インドネシアはすでに、パンデモニウムによる最初の侵攻を経験していた。
数年前に起きたその攻撃は、実のところ単なる力試しに過ぎなかった。
パンデモニウムは、東南アジアの大国の一つがどれほどの防衛力を持っているのかを測ろうとしていたのだ。
そして、その結果をもとに、アジア全土へさらに侵攻するかどうかを判断するつもりだった。
だが、その結果は侵略側の予想を大きく裏切るものとなった。
突然の攻撃に驚きながらも、インドネシア軍は予想をはるかに上回る粘り強さを見せた。
防衛体制は堅固であり、戦況に応じた対応も迅速だった。
正面からの侵攻を試みるたびに、パンデモニウム側は大きな損害を被った。
軍事力による直接的な攻略では、望むほど早く成果を上げられない。
そう悟ったパンデモニウムは、やがて戦略を変更した。
武装勢力へ正面から挑む代わりに、彼らはより脆弱な対象――民間社会――へと矛先を向け始めた。
重要インフラ、物流網、経済の中心地などに対し、小規模ながらも絶え間ない攻撃を繰り返した。
強固な軍と直接対峙することなく、人々の日常生活を少しずつ麻痺させていくことが目的だった。
それから何年もの間、インドネシアは重い圧力の中で耐え続けた。
それでも、一度たりとも完全に崩れることはなかった。
やがてパンデモニウムの主な関心は、日本へと完全に移った。
当時の彼らにとって、日本の方がより戦略的価値の高い標的だと判断されたからだ。
そして今――。
日本の陸と海、その両方でパンデモニウムが手痛い敗北を喫した後。
彼らの視線は、再び東南アジアへと向けられた。
――インドネシアへ。
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ジャワ島北部沿岸にある、とある監視哨。
一人の若い将校が、険しい表情でレーダー画面を見つめていた。
「国際海域に、不審な動きがあります」
そう呟いた将校は、すぐに上官を呼び寄せた。
司令官は急いで画面を確認する。
その目は、レーダーの端に現れ始めた無数の光点を鋭く分析していた。
「数は?」
司令官が短く、しかし鋭い声で尋ねる。
「まだ増え続けています。すでに五十を超え、なおも増加中です」
司令官の表情が硬くなる。
もしかすると彼は、この瞬間をずっと前から待っていたのかもしれない。
長年にわたる情報報告のたびに、頭の片隅にこびりついていた予感。
いつかパンデモニウムが、これまで見せたことのない全力をもって戻ってくる。
そんな予感だった。
「すぐに司令部へ連絡しろ」
彼の声には、抑えきれない緊張が滲んでいた。
「大規模な攻撃が目前に迫っていると伝えろ」
まだ穏やかに見える水平線の向こう。
パンデモニウムの大艦隊が、静かに、しかし確実に接近していた。
その戦力は、数年前の力試しとは比べ物にならない。
今回、彼らはもう試すために来たのではない。
――征服するために来たのだ。
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その艦隊の旗艦。
その司令室では、一人のパンデモニウム将軍が艦橋に立っていた。
目の前のホログラムスクリーンには、インドネシア全土の巨大な地図が映し出されている。
その瞳には、隠しきれない野心が輝いていた。
「ついに……」
将軍は満足げに呟き、大きく笑みを浮かべた。
「あの希少鉱石の鉱山を、我々が手にする時が来た」
一人の副官が歩み寄り、恭しく頭を下げる。
「我が軍の鉱石備蓄は、すでに底を尽きかけております、閣下」
「我々の支配領域内では、新たな鉱脈の発見すらますます困難になっております」
「その通りだ」
将軍は満足そうに頷いた。
そして指先で地図をなぞりながら、ある一点――特別な印が付けられた場所――で指を止める。
「そして聞くところによれば、ここ――」
「あの忌々しい天才科学者、アラリック・シロガネの旧本部には……」
「まだ我々が完全には奪い尽くしていない備蓄が眠っているという」
将軍は声高らかに笑った。
その笑い声が、司令室全体に響き渡る。
「ハハハハハ! 今度こそ、すべてを奪い尽くしてやる!」
「奴らが守り抜けるものなど、何一つ残しはしない!」
周囲に控える士官たちも、確信に満ちた笑みを浮かべていた。
自分たちの指揮官が見せる、絶対的な自信を目の当たりにしていたからだ。
――だが、彼らはまだ知らない。
今度こそ立ちはだかる抵抗が、これまで想像していたよりも、はるかに厳しいものになることを。
そして、この日を境に――。
PANDEMONIUMの侵攻は、インドネシアだけに留まらない。
ベトナム。
タイ。
そして、フィリピン。
アジア各地で、第二の波が静かに始まろうとしていた。
――次回へ続く。
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