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ひび割れた時を君と  作者: 朱空てぃ
夏休み終盤
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第69話 約束のボウリング

 夏休みの終盤頃。今日は、茉莉が誘ったボウリングに遊びに行く日だ。幸い、全員の予定が合う日が見つかって、男女8人で遊びに来ることが出来た。


「お待たせ」


 待ち合わせ場所は、学園の最寄り駅だった。由美や茉莉は家からも近いので一番に到着し、談笑しながら待っていた。そこに、真人達がやってくる。いつもの男子4人組に里美を含んだ5人が、一気に到着した。


「全然待ってないよ」

「和実がまだだもんね」

「山根さんは、ここから家遠いの?」


 和実は学校まではバス通いだ。恐らく、今日も駅までのバスに乗ってくるだろう。物凄く遠い距離でもないが、道路の混み具合によっては到着が遅くなることもあると思われる。


「すごく遠いわけじゃないけど、バスで来ると思うから」


 由美がそう言うと、真人達は一斉に道路を走る車を見た。まだバスは見えない。


「そっか」

「ところで、里美は幸雄くん達と来たのね。家、そっちの方なんだっけ?」

(うち)の目の前だもんね。水木さん」


 真人はそう言うと、里美に笑いかける。由美と出会った当初にも見せていた、猫かぶりの優しい表情だった。


「う、うん……。私が家を出たら、北川くんもちょうど出てきて、一緒に連れてきてもらったの」


 里美は真人を前にすると、よくもじもじと身体を揺らしている。由美はその様子を見て、少しだけモヤッとしてしまった。胸がザワついたのだ。


「あ、もしかしてあのバスかな?」


 遠くに見えたバスを指さして、拓真は言う。


「かも!」

 

 由美はモヤモヤした気分を切り替えるために、拓真の指さすバスを見てわざと弾んだ声を出した。


 バスは最寄り駅で終着し、人がたくさん降りてくる。その中には、案の定和実がいた。


「あ、ごめん。私が最後か」

「全然平気。おはよう。和実」

「久しぶりだね!」


 全員が揃ったので、軽く挨拶を交わしてから、茉莉が言っていたボウリング場へ向かった。


。。。


 ボウリング場についたら、茉莉がまとめて受け付けを済ませてくれた。幸雄が茉莉の隣について、手伝いをしている。


「これがドリンクバーのグラス?」

「うん」

「シューズはまとめてレンタルしてくるよ。男子どもの分は俺が取ってくるから、飲み物よろしく」

「何にする? カフェオレ?」

「うん! アイスでね!」


 グラスは幸雄から真人に渡り、幸雄がみんなの分の靴を取りに行っている間に、飲み物と席の確保をした。女子の分の靴は、やはり茉莉が担当してくれるようだ。幸雄の隣を歩いている。


「やっぱり、最近の茉莉と白鳥くん。仲縮まってるよね」


 由美は嬉しそうな顔をして、真人達に言う。


「そうみたいね。早く付き合っちゃえばいいのに」

「茉莉にも考えがあるんだよ。きっと」


 和実と里美の二人は、普段は噂に聞くだけで、茉莉と幸雄の仲が着実に進展している場面を見たのは、初めてだった。微笑ましげに見つめている。


「幸雄のやつも、最初に声を掛けた時よりずっと山里さんに本気だしな。改めて告白すんのはいつなんだろ」

「仲良くなったからこそ、臆病になる気持ちもわからなく無いけどね」

「フラれた時のショックもでかいし」

「あの感じじゃ、フラれることはなさそうなんだけどなー」


 男子達も口々にそう言って、茉莉と幸雄の後ろ姿を見つめていた。


。。。


 飲み物や靴。ボウリング用のボールも用意して、遊戯の準備は万端だ。


「せっかくだし、男女で勝負する? もちろん、女子にはハンデありで!」


 人数が人数なので、レーンは二つ借りている。その二つのレーンは、男子と女子で分かれた。だからこその、チーム戦のお誘いだ。


「いいんじゃない?」

「ハンデは、三十点でいいかな?」

「そんなにくれるの?」

「まあ、男子チームには真人も拓真もいるしね。この二人、こういう遊びはなんでも上手いから」

「その代わり、俺も抱えてるけどねー」


 純也は、あまり運動が得意ではない。娯楽施設にも、兄の視察について行くことはあれど、遊びに来ることは少なかった。だから、ボウリングにも自信が無いのだ。


「どう?」

「うん。男子達がいいなら、私達もいいよ」

「そうだね。私もボウリングはちょっと自信ないし」


 女子にはハンデ三十点で、ゲームがスタートする。


「茉莉ー! 頑張れー!」

「おーい。幸雄。茉莉ちゃんの隣だからって手加減すんなよー?」

「そもそも、俺もボウリングは上手くないんだから、手加減する余裕ないっつーの」


 幸雄の言葉通り、幸雄のスコアは平均的で、下手では無いが、上手いということもなかった。


「拓真は流石だよなー」


 ボウリングが一番上手かったのは、拓真だ。点数は一ゲーム目の終了時点で、百七十四点。次に真人で、百三十五点だった。


「ハンデありとはいえ、茉莉ちゃんに負けてんじゃん。幸雄」

「うっ……」

「でも、幸雄くんだってストライク出てたじゃない」

「茉莉ちゃん、優しい……」


 幸雄のスコアは百六。あまり奮わなかったようだ。茉莉のスコアは本来九十だが、ハンデがあるので百二十点である。


「私も上手くいかなかったなあ」


 由美がそう言って、嘆く。ハンデのおかげで辛うじて百点を超えることが出来たのだが、彼女もあまり奮わなかったようだ。


 女子の中で一番上手かったのは和実で、幸雄と同じ百六点。それにプラスして三十点なので、百三十六点になる。


「でも、やっぱり真人と拓真がいると男子有利だよな」

「チーム変えて、もう一回対戦する?」

「いいね」


 チームを組み直した結果。拓真と真人を離して、チームが出来あがあった。拓真のチームは拓真、幸雄、里美、茉莉で、真人のチームは真人、純也、由美、和実である。


「頑張ろうね!」

「うん!」


。。。


 ゲームは順調に進んでいき、最終フレーム目まで来た。現在の総合スコアは拮抗している。


「北川くん。頑張って!」

「ありがとう。頑張る」


 真人は応援が嬉しくて、張り切ってボールを投げる。その結果、ストライク二本を取ってかなり有利にことを運んだ。


「真人。お前ってやつは……!」

「いいとこ見せなよ。ユキ。お前、本番には割と強い方だろ?」


 敵ではあるが、真人は幸雄にそう言って励ます。幸雄はキュッと唇を結ぶと、茉莉を振り返った。


「茉莉ちゃん。俺、頑張るから!」

「ええ。応援してるわ!」

「だから、この最終フレームでストライク取ったら、俺とデートしてください!」

「へ?」


 幸雄は勢いよくそう言うと、今度は頬を赤く染めて、小さな声で言う。


「考えてくれたら嬉しいです……」


 レーンを振り返って、緊張気味に歩き出した幸雄の後ろ姿に、茉莉が答える。


「するわ。デート。だから、ストライク…取ってね」


 幸雄は恥ずかしくて振り替えれなかったが、気合いは充分入った。そして、その気合いが入った今の状態のまま、ボールを投げる。

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