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007 初戦闘

 ここからが本番っ!



 マリナとミレイが校庭に出ると、2人の生徒がすでに戦闘を行なっていた。2人とも銃器を武器に選んでいる。四方には長いポールが立ち、流れ弾がポールとポールの間の空間で弾けている。戦闘領域を縛るための電磁シールドだ。

 シールドの周囲で何人かがその様子を見守っている。まだ様子見と言うところだろうか。


「ギャラリーが結構いるわね。手の内を見ておこうってことかな」

「どうする? 公園に行く?」

 学校の裏に広い公園があり、普段は一般にも解放されているが、実は高校の敷地の一部だ。男子争奪戦の間はそこも戦闘エリアになるので、一般人の入場は禁止されている。


「どうせあっちも生徒でいっぱいでしょ。隠れる場所はあるけどさ」

「じゃ、ここでいいか。場所は空いてるし」

 ミレイも頷いたので、マリナは争奪戦本部に対戦の実施を連絡した。1分とかからず、審判ドローンが飛来する。


「対戦の申請はあなたですか?」

 ドローンから教師の声が聞こえた。


「はい」

「クラスと出席番号、それに氏名を」

「はい。1A6、茅吹(かやぶき)マリナです」

「1A9、匙真(さじま)ミレイです」

「対戦方法は、1対1の個人戦でいいかしら」

「はい」

「解りました。戦闘を承認」


「2人ともこちらへ」

 ドローンからの声が教師のものから電子音声に変わった。移動するドローンについて、2人は10メートルほど移動する。4隅にポールがスルスルと伸びた。

 2人がドローンから校庭に投影される円の中に立つと、ドローンから再び音声が流れた。


「両者、戦闘用意」

 ドローンからの音声に、ミレイは担いでいた回転式レーザーガンを下ろして構え、露出していた顔を透明のフェイスプレートが覆う。

 マリナも戦闘態勢を取る。アーマードギアの第2装甲を展開し、腰から外したウェポンパックを構える。


 ウェポンパックの前方がガシャリと開き、左右にギザギザの刃が現れる。その2枚の刃が左右から半回転して前方でジャキンッと合体、槍の刃を形成する。

 ウェポンパックの後方がガシャッと左右に開いて90度回転、その間からスルスルと柄が伸び、槍になる。柄尻となった持ち手を支点に、槍がズシンッと地面に落ちた。


「マリナの武器、槍? 大丈夫? 随分とバランス悪そうだけど」

 ミレイが少し揶揄うように言った。


「平気平気。今日の日のために特訓してきたからね」

 マリナは柄の中程を両手で掴み、槍を持ち上げて頭上に掲げ、グルグルと2回転させてからビシッと身体の前に構えた。自分で『特訓した』と言うだけあって、なかなか様になっている。


「へえ。結構軽々と扱うのね。でも、リーチはこっちが上だよ」

「それはやってみてからのお楽しみ」

 フェイスプレート越しに、2人とも不敵な笑みを浮かべる。


「1A6・茅吹(かやぶき)マリナ対1A9・匙真(さじま)ミレイ、勝負、開始」

 ドローンが対戦の開始を告げると同時に2人は動いた。


 ビシュビシュビシュビシュビシュッ。


 ミレイの構える回転式レーザーガンから発射された光線が校庭を穿ちながらマリナに向かう。

 マリナはドローンの戦闘開始宣言と同時に、槍を構えてミレイに向けて突っ込んでいた。最初の1歩目を地面に付けると同時に右前方に向きを変えて跳躍、ミレイのレーザーを避けつつ距離を詰める。


 ミレイは身体の向きを変えながら射線をマリナに向ける。マリナは上に跳んで回避、宙返りをして着地、今度は左側からミレイに迫る。

 距離が縮まったことで、ミレイも照準を付けやすくなり、レーザーがマリナを掠めるようになる。


(間に合わないっ)

 レーザーを避けきれないと判断したマリナは、槍の先に電磁シールドを展開してレーザーを無効化、背中の超伝導スラスターを噴射して跳び上がり、蜻蛉を切ってミレイの後方に着地、槍を突き出す。


 ミレイは即座に後ろを振り向くが、回転式レーザーガンが横を向いたところを、マリナの槍が砲身を襲う。

 しかし、直撃はせずに槍の穂先と回転式レーザーガンの砲身が擦れて火花を散らす。


 マリナはウェポンパック後方、柄が出ている二股に分かれた箇所を左右に開く。千鳥のように開いたウィングに砲身を引っ掛け、槍を上に向けて思い切り跳ね上げる。


「やっ」

「あっ」

 回転式レーザーガンがミレイの手を離れて宙を舞い、校庭に落ちた。2人との距離は約5メートル。

 すぐさまミレイは取り落とした武器に向けてジャンプしようとするが、目の前にマリナの槍が突き出され、咄嗟に後方に飛び退く。


 マリナはミレイを追わず、彼女の回転式レーザーガンに駆け寄り、槍で戦闘フィールドの端へと弾き飛ばした。すぐにミレイに向き直り、目の前まで来て拳を振り上げていたミレイに向けて、槍を横薙ぎに振るう。


 ミレイはマリナの予想に反して引くことなく、しかし振り上げた拳を納めてマリナの槍のウェポンパック部分を腋に挟むように掴んだ。振り回す槍の勢いに押されてズズズッと足が地面を抉るが、そこで止まる。


「放してくれる?」

「ワタシの銃、取って来てくれたらね」

「冗談」

「ワタシも」

 フェイスプレートの中で、互いにニッと笑う。


(だけどこのままじゃ……しょうがない、アレを使おう)

 マリナはウェポンパック後部のウィングを再び展開、その内側に内蔵されている超伝導スラスターを2枚開く。


「は??」

 ミレイが戸惑っているうちにスラスターを起動、力押しでミレイに対抗し、さらにジャンプしてベクトルを下向きに、ウィングにミレイの身体を引っ掛けて槍で地面に縫い付けた。

 槍から手を離してミレイの上に馬乗りに落ち、その顔を目掛けて拳を振り上げ、振り下ろす。


「びゃっ」

 悲鳴を上げて目を閉じたミレイのフェイスプレートに当たる寸前で、マリナは拳を止めた。


「どうする? まだやる?」

 マリナは笑顔で組み敷いたミレイに言った。


「はぁ、やられた。負け負け。降参します」

 ミレイが負けを認めると、ドローンが電子音を奏でた。


「1A6・茅吹(かやぶき)マリナ対1A9・匙真(さじま)ミレイ、匙真ミレイの降参により、茅吹マリナの勝利。茅吹マリナは1ポイント獲得。現在2ポイント」

「やったっ。勝ったっ」

 ミレイの上からピョンッと立ち上がったマリナは、初勝利に歓喜した。


「マリナぁ、喜ぶのもいいけど、これどかしてくれる?」

「あ、ごめんね」

 マリナは槍を握ってウィングを収納し、地面から槍を抜いた。ギアの第1装甲に戻す。ミレイも立ち上がった。


「はぁ、負けた負けた。ってか槍にもリアクター付いてるの? それともキャパシタ?」

「リアクターだよ」

「まさか槍にオーキス・リアクターを付けるなんてね」

「ミレイだって銃にリアクター付けてるでしょ?」

 ミレイの回転式レーザーガンには、本体からのケーブルなどは繋がっていなかった。それなのにあれだけのレーザーを乱射していたのだから、自前でリアクターを持っているはずだ。


「ワタシの場合、エネルギーを乱射しているようなものだからね。リアクター無しじゃ、すぐに弾切れ起こすもん。だけど、槍にリアクターを付けるなんて普通考えないでしょ」

「だからこそ、不意を付けたんどけどね」

 他にも、マリナの装備には色々と機能がある。それも、争奪戦を続けていけば使うことになるだろう。


 マリナが槍をウェポンパックに戻して腰に装着し、ミレイが回転式レーザーガンを拾っている間に、ドローンや整地ロボットが荒れた地面を均し、戦闘フィールドを作っていたポールが地面に収納された。

 周りを見ると、マリナたちより先に始めていた戦闘は終わっていて、別に2組が戦闘をしている。


「ミレイ、武器大丈夫だった? 壊れてない?」

 マリナはミレイを振り返った。(思い切りぶっ飛ばしちゃったからなぁ)と思いながら。


「一応、動きはするけど、軸線がずれたかも。一度コンテナに戻って調整が必要かな」

 ミレイは銃を構えて、銃身を回転させながら言った。


「壊れてたら、ごめんね」

「何言ってるの。戦闘なんだから壊れるのは当たり前でしょ。それよりマリナの方は大丈夫だった?」

「うん」

 腰に戻していたウェポンパックを取り外し、槍にしたり直方体に戻したり、を数度繰り返す。


「問題ないよ」

「そう? じゃ、ワタシはちょっと調整して来る。ついでに少し休憩も取りたいし」

「疲れた?」

「ってか、ちょっとお腹がね。ワタシも明日からお昼変えよ」

「その方がいいかもね」

「うん。じゃね」

 ミレイは笑いながら、駐車場へと歩いて行った。


(さてと、誰かいるかな。初日だし、先にクラスの子か同じ中学の子とやっちゃいたいな)

 センサーで探すと、戦闘中の生徒を見学している中に、何人か対象者を見つけた。


(よし。校庭が埋まっちゃう前に誘ってみよ)

 マリナは、一番近くにいる同級生の元へ、戦闘の誘いに行った。


(今日はあと何戦できるかな?)

 争奪戦はまだ始まったばかりだ。

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