遊園地 探索
「こ、怖かったです・・・・・・」
「俺も怖かった。でも前にソラがいたから、ちょっとはマシかな」
この先はアレが出てくるということらしいので、注意しなければ。
「あの挙動を見る感じ、たぶん通気口に注意しろ、ってことなのかな?」
「そうだと思います」
俺たちは慎重に次の部屋への通路を歩く。
・・・・・・ビビリながら。
特に何事もなく、次の部屋へたどり着く。
(こういうのは静と動が大事、なんだっけ?)
俺は恐怖からか、純粋に楽しむよりも、若干変な思考になっていた。
ボタンを押して、部屋のドアを開ける。
次の部屋には、クルーと思われる人が複数人血まみれで倒れていた。
さっきの通路と違って、しばらく経った設定なのか、色だけの臭いのしない乾いた血糊のようだ。
これならば、少し不快なだけで探索には支障ないだろう。
「俊也さん」
「なに?」
「ちょっとトイレに行っていいですか?」
「いいよ、行こう。そこの非常口かな?」
俺たちは連れ立って非常口のドアへ向かう。
出た先には、フロアー2と書かれた場所だった。
トイレと給水所は入口側にあって、そこの近くのドアはフロアー1となっている。
(ああ、元いた場所が分かるようになってるのね)
小綺麗なトイレで用を足して、俺は給水所にあったベンチに座ってソラを待つ。
喫煙所も併設してあるあたり、ここがアトラクションなんだと思いださせる。
没入感も大事だが、キチンと気配りがなされている場所だ。
「お待たせしました」
「じゃあ戻ろうか」
俺たちはフロアー2のドアを開けて、続きを始める。
残り時間は1時間20分ほど。
次へ進むための条件を確認するため、ドアの前まで行こうとして、
『・・・・・・ガサガサガサ』
通気口から音が聞こえる。
俺は、ソラの手を引っ張って伏せるように指示する。
(目が見えないようなら、死んだふりが有効だと思うんだが・・・・・・)
2人で伏せて、死んだふりをする。
死体の人形と目が合う。
今まさに断末魔をあげているような、とてもリアルな造形だ。
ソラも目があったらしく、口に手を当てて声を殺している。
『ガサガサ・・・・・・ガゴン』
そんな音と共に、通気口から化け物が姿を現す。
俺は降りてきた化け物を目だけで追う。
シュルシュルといった鳴き声? がしばらくした後、
『バサッ・・・・・・ガサガサ・・・・・・』
また音を立てて通気口へ戻っていった。
どうやらセーフらしい。
「・・・・・・大丈夫?」
「大丈夫です」
「・・・・・・こんな怖いのを全員やらされる訳ないよね?」
「最初のアンケート、アレに怖いものは苦手かどうか聞かれて、おおむね平気って答えたからかもしれません」
(そういえば・・・・・・そんなアンケートがあったな)
50組、最低100人くらいがいるはずだが、現在このアトラクションは俺たちの貸し切り状態だ。
(ここ、どれだけ広いんだ?)
俺たちは起き上がって、次のフロアへのドアの前に立った。
『次のフロアには脱出艇があります、操縦のためのカードキーを認証してください』
今度はカードキーらしい。
(ということは、この死体を漁れということか)
死体は7人か8人分ある。
手分けして漁るとしよう。
(なるべく少ない時間ですませたいところだが)
ゲームや映画では死体の持ち物を調べる、なんて普通に行うことだが、実際にやろうとするとハードルが高い。
見た目的にも心理的にもキツイ。
たとえ、ただの動かない人形の持ち物を調べるとしても。




