亜人マッチングシステム 防衛戦
ラストゲームとして攻守1回ずつ、計2戦、防衛戦をすることになった。
防衛戦は攻め側のチームは復活あり、守る側のチームは復活なしという変則ルール。
攻め側が、フラッグのブザーを鳴らすまでのタイムを計って競うルールだ。
現在時刻は16時、少し暗くなってきたところである。
今回は5対5という人数だから、10分前後で終わると思われる。
基本サバゲーは暗くなると危険なので終了。
大体18時前後くらいだろうか?
もっとも、リアルな戦場を再現した夜間の戦いをする場合もあるが。
その場合はライトや特殊なゴーグルなどが必要になる。
俺はソラへ防衛戦のルールを簡単に説明して、ゲーム開始になった。
俺たち赤チームはまず防衛側。
フラッグの位置は、D地点手前のやぐらの上となった。
やぐらは2カ所の階段から上に上がれるようになっている。
やぐらの高さは2mほど、やぐらの上の周辺は壁になっていて、高身長でない限り、中腰ならば弾に当たる心配は無い。
俺たち防衛側の内4人は、やぐらの下周辺のバリケードや木の裏に身を潜める。
やぐらの上に指令塔兼、スナイパーが1人という配置になっている。
防衛側は、この1人が一番重要で、個人の技量より指示のうまさが重要になる。
(1マガジン数百発入るエアガンだから、敵が来そうな方向に弾を撒いていればそれだけで防衛はできるからな)
こっちのチームの司令塔は、倍率が可変のスコープの着いた、銃も射程も長いM14を持っている今井になった。
「1名、防衛戦に向いてなくない?」
今井は、ショットガンにリボルバー2丁というカウボーイスタイルの堀川に向けて言った。
「次の攻めから本気出すから、今回はこれで」
(そのへんも自由だからな)
自分のしたいことは何より優先、それがサバゲー。
「じゃあカウントダウン行きまーす。3、2、1、スタート」
トランシーバーでの通信を終え、スタートした。
敵は全員A地点からスタートしてくる。
(敵は散開してくるか? 密集してくるか?)
俺とソラはお互いが見える場所に位置どっている。
俺が若干後ろ側、ソラは少し前のバリケードにいる。
敵に対して複数の射線を通した方が有利になるからだ。
少ししても、後ろの今井から指示が来ない。
どうも索敵にてこずっているらしい。
(仕方がない)
俺は前方の敵を確認するためにバリケードを背にして、ベストからBB弾への防弾処理がしてある手鏡を出して、前にかざして左右に振る。
(・・・・・・ん?)
藪が不自然に動いている。
おそらく敵だろう。
前を向いて、ソラに目で合図をしてから、左手の藪から敵が来ているというジェスチャーを見せる。
ソラは頷いてくれた。
ソラには敵が来たのが音で分かったらしい。
音の方向に、バリケードから出てサイトを覗きながらMP7を連射する。
「ヒット」
敵は両手を挙げて戻っていく。
「ソラ、見てるから、こっちに戻ってきて」
コクンと頷くと、走ってこちらへ来るソラ。
横まで来たところで、俺も身を隠す。
2人で1つのバリケードに潜む形だ。
「防衛戦は、1度撃った場所からすぐ離れないと復活した人には警戒されるから」
「わかりました」
直後、
「Bあたりから敵複数確認」
後ろの今井から指示が出る。
俺たちは手薄になりがちな一番遠い場所を守っていた。
たぶん、1-3-1とかの配分で、全員一斉突撃のつもりだったのだろう。
俺たちの遠い場所には、最軽装の1人が走って早めについてしまった、とかそんな感じだ。
「ソラはB側、正面の守りを任せていいか?」
「わかりました、行ってきます」
1人倒してさらに頼もしくなったソラと別れて、俺は自分の位置を守ることに専念する。
俺が移動しないのは、後ろに回りこまれたら負けもいいところだからだ。
(意外と健闘してるか?)
カウボーイスタイルの堀川がいるはずなので、そろそろ1人くらい脱落してもおかしくないのだが。
こちらのチームのヒットコールはなさそうだった。
もっとも、防衛側は1人だけ倒すのは難しくない。
向かってくる奴を隠れた場所から出て撃てばいいから。
そして、撃った場所からすぐ離れれば、敵は索敵しながら来なければならない。
本来、怪しい物陰などにはグレネードを投げ込んだりすれば解決するのだが、今回は無しのルールだ。
「ヒットー」
「援護に回るー」
こちらから脱落者が出たらしい。
後ろの今井がやぐらから降りて援護に向かった。
復活できない分、必ず数的に不利になるので即座の判断が重要だ。
俺は手鏡での索敵を続ける。
(復活地点から遠いから来ないのか?)
(30数えて敵が来なかったら、俺がやぐらに登ろう)
そう決意して30カウント数える。
(2、1、やぐらに登るか)
俺は駆け出す。
思い切りも大事だ。
階段を登り、やぐらから銃に着いたサイトを覗いて索敵する。
(まずい)
ソラがバリケードに釘付けにされている。
周りの遮蔽がない場所へ孤立してしまっていた。
撃ち込んでいる敵は俺から見えない位置にいる。
おそらく釘付け状態にするということは、別方向からの2人行動だろう。
(敵を早く探さないと)
ソラが右を向いてハンドガンを構える。
(そこか!)
パン、パン
カシャシャシャシャ
カシャシャシャ
「ヒットー」
「ヒットですー」
(間に合わなかった・・・・・・)
残念ながらソラは両手を挙げてヒットコール。
右から来た敵は俺も捕捉して撃ったが、ソラが撃たれるのには間に合わなかった。
そこからは数の差で、あっという間に敵に制圧されてしまった。
一応、俺は最後にやぐらの上から2人倒したが、釘付けにされて、階段から上がってくる1人を倒して、ハンドガンを抜いたところを後ろから上がってきた奴に撃たれた。
いったんセーフティーに戻ってから装備を整えて、次の攻めを始める。
「援護してくれたの俊也さんですよね」
「ごめん、もうちょっとだったんだけど」
「いえ、ありがとうございます」
セーフティーでそんな会話をして、フィールドへ戻る。




