亜人マッチングシステム ゲーム開始
合図とともに、低い姿勢でショットガンを持った奴が真っ先に突撃していく。
「よし、俺たちもゆっくり行こう」
「はい。行きましょう」
ゆっくり歩いてソラと2人で、雑木林の中を対角にあるD地点へ進む。
「ヒットー」
進む先のどこからかヒットコールが聴こえる。
さっき突撃したショットガンの奴は手を挙げて道を戻ってくる。
「アレって撃ち負けて帰ってきてるんですよね?」
「まあ、そうだね。そろそろ撃ち合いになるかも」
ソラに少し離れた木の陰に、D地点方向から隠れるように中腰でいて欲しいと指示をだす。
細身のソラは完全に木に隠れていて見えないはず。
俺も別の木陰に身を潜める。
(・・・・・・来た)
D地点の方向から1人、小走りで10mくらい前の木陰に来る。
そいつの周りには他に身を隠せる場所は無い。
先手必勝だ。
俺は単発で、けん制の弾を木に向かって撃ち込む。
パシュ、パシュ、パシュ、パシュ
これで釘付けにする。
1マガジンには300発入っているので足止めは容易だ。
撃ちながら、ソラに左手でゴーサインを出す。
「っ」
俺の合図を見てソラが相手の隠れている木の横に位置どるため走る。
めちゃくちゃ速い。
パシュ、
カシャシャシャシャ
「ヒットー」
相手は両手を挙げてヒットコール。
手を挙げて、とぼとぼと歩いてD地点へ戻っていく。
当てた相手はグッとサムズアップしてくれる。
1発、ハンドガンで撃ったみたいだがソラには当たらなかったようだ。
正直、相打ちかなーと思っていたけど。
「やりました!」
「初ヒットおめでとう」
「すっごいドキドキしてます。普段のハードルとは比べ物にならないくらい!」
「楽しんでもらえてよかったよ」
ソラは満面の笑みを浮かべているようだ。
もっとも、表情はゴーグルとスカーフでいまいちわからないのだった。
直後、木陰から出ていた俺の体の横をBB弾が掠めていく。
音もほぼしていないし、狙撃されたっぽい。
俺は慌てて身を隠す。
「ソラー、適当に隠れてー」
「はい!?」
ソラも慌てた様子で手近なバリケードへ身を隠す。
俺は木を盾にして、少し下がってサイトを覗く。
倍率は2倍固定、裸眼より遠くを見ることができる。
撃たれる危険もあるが、索敵しないことには的にしかならないのだ。
(射線が通っているのは・・・・・・)
見る限りでは木の裏、バリケード裏、藪の中、やぐらの上のどれかだろう。
もし、長物のスナイパーだと木やバリケードの裏だと窮屈になる。
おそらく弾の軌道的に上から撃たれたはずではない。
じゃあ残るは藪に擬態か?
ギリースーツと呼ばれる擬態用の迷彩服があるのだが、あれを着られていたらほぼ見分けがつかない。
仕方がない、あまり褒められたものではないが藪に決め撃ちすることにする。
本当は捕捉していない相手を適当撃ちするのはよくないのだが、ギリースーツは正直無理なのでこれだけは見逃して欲しいと思う。
俺は全身出して撃つからさ。
俺は木から身を出して藪に連射で撃ち込む。
カシャシャシャシャシャ
身をさらして撃った直後、バリケードの裏から敵が出て、ハンドガンで撃たれる。
「ヒットー」
俺は両手を挙げて、ヒットコールをする。
(やられた)
相手は飛距離の出るガスガン、それも音が出にくい、固定スライドのガスガンだった。
実銃にはほとんどない仕様で、反動もない、ゲームに特化した銃だ。
スナイパーライフルに撃たれたと思った俺の負けだ。
ソラは俺が倒されたことに驚きを隠せなかったようだ。
バリケードから出て、敵を確認しようとしていた。
俺が、あ、と思った直後に
ソラも撃たれてしまう。
「痛ぃ、ヒットー」
ソラも両手を挙げてこちらに歩いてくる。
少し遅く歩いて、並んで会話する。
「仲間がやられても身を潜めてないと、熱くなった順にやられるんだ」
「うう、わかりました」
A地点まで両手を挙げたままで戻って、旗にタッチしてゲームへと復帰する。
またD地点へ攻めあがる途中でブザーが鳴る。
「あ、こっちが勝ったみたい」
「もう終わりですか?」
「うん、いったん戻って休憩」
セーフティへ戻って休憩する。
「あっついですね」
「夏場でも、森林だと長袖じゃないと危ないからね。適度に休憩して、着替えと水分補給するんだ」
日陰でも気温は30度近い。
セーフティも日陰とはいえ、そのままではすぐに熱中症だ。
一応、扇風機がそこかしこに設置されているから汗はすぐに乾く。
「次は5分後に始めるぞー」
水分補給をして次のゲームへ向かう。
今度は赤チームがD地点から開始だ。
そうして、復活なし戦、近距離戦、ハンドガン戦などを昼食をはさみ、十数ゲームこなしていく。




